魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
第33話「どれみの試験は野球の応援より難しい?」

 美空高校第3学年C組に長門かよこと春風どれみはいた。2人は先日、修学旅行から帰って来たばかり。クラスメートたちは旅行ボケから開放されていない。だから当然のこと話題は修学旅行のことばかりだ。
担任の先生である桜田かおりは朝のホームルームで…
「お前たち、いい加減に旅行ボケが治らないと卒業試験で赤点取って卒業できないよ!特に就職内定者の春風と長門は頑張らないと卒業できないぞ」

***

どれみ「うひゃ!どうしよう。日本史全然勉強してないよ」
どれみは自室でかなりパニック状態に陥っていた。
はるか「どれみー!電話よ。ミーナさんから」
受話器を手渡されるどれみ。
どれみ「はい、電話変わりました」
ミーナ「あっ、どれみちゃん?今試験でしょう」
どれみ「えっ、なんでわかるんですか」
ミーナ「やっぱ、そうか。また匠の野生の勘(自称)は当たったようね。匠は手術も終わって退院して家にいるし、あたしも英語は教えてあげられるかな。だってあたしはほら、ハワイ出身だから英語はわかるわよ」
どれみ「じゃあお願いします。卒業と就職がかかっているんだですから」
ミーナ「わかったわよ。あたしの家に来てよ。みっちりと教えてあげるから。友達なんかも大歓迎よ。但し、かなり狭いけどね」
どれみ「ありがとうございます。助かります本当に」
どれみは居間に降りて、親に適度に伝えた。週末を使った勉強合宿である。

***

ミーナ「だから、そこは人物だから関係代名詞のWhoが入るのよ。わかる?これはアメリカでは小学生の国語(こっちでは英語)で習う範囲なのよ」
かよこは日本史が苦手だ。
匠「じゃけん、わしの授業(?)は気合いと根性が無いとできんよ。なぜなら、教科書に訳ありで載っていないことも知っとるけぇ…」
かよこ「標準語で教えて下さいよ。広島弁はわかりづらいです」
匠「標準語?話さんよ。たいぎぃのう。テンポやね、言葉ちゅうもんは。言葉のキャッチボールせないかんよ。わしがフリー記者になる前までは中国新聞いう広島の新聞会社に勤めとった。そこは皆が広島弁じゃったよ」
かよこ「それで抜けてかないんだ。広島弁。仕方の無いことかもね。ミーナさんと匠さんってどの様に知り合ったんですか?ついでに教えて下さいよ」
どれみ「私も聞きたいです。匠さんとミーナさんの出逢い話を」
ミーナ「もったいぶらずに話ちゃったら良いわ。あたしは何も言わないから」
匠「あれはわしがまだ中学生の時じゃったな…」
匠は語り始めたのだった。

***

2003年冬。匠は高校受験を終えて、合格が内定していた。広島の本通りに遊びに出かけた帰り道。家に帰る近道として自転車で平和記念公園をつっ走っていた。 そして匠の前方不注意によって外国人の女の子とぶつかってしまった。しかも彼女のスカートを自転車で跳ねた泥で汚して…。
匠「ソーリー。本当にごめんなさい。おまけに服まで汚しちまうし、ケガはさせるし…親にばれたらなにを言われるか…一応手当てしますから、家に来て下さいよ」
???「良いわよ別に。それにあたしは日系人だしね。ところで、この街に刑務所があるって聞いたんだけど、君はわかる?」
匠「僕のことは匠って呼んで下さい。君の名前は?」
???「あたしはミーナ。ハワイ出身でパパや親戚は日本人よ。パパは今、東京でテロ事件を起こして、刑務所に服役中なの。近くまで来たんだけど、道に迷ってしまってお手上げ状態だったのよ」
匠「面会時間はとっくに過ぎているよ。家が近所だから刑務所のことはわかるんだ。ミーナさん今日は家に泊まって、明日刑務所に行こう。泊めるのはケガさせた上に泥汚れをつけてしまったお詫びとして受け取って下さい」
ミーナ「ありがとうございます。泊まるあてが無くて困っていた所もあったの。じゃあ今日はお世話になります」
匠「こちらこそ。困った時はお互い様やんか」
次の日は土曜日だった。広島刑務所の正門前。
匠「なんか、すげえ緊張感が背中を走ってるんやけど…。とりあえず、手続き済ませてと」

***

広島刑務所内の面会室。よくサスペンスドラマでお目にかかる刑務所内の施設である。
ミーナ「これ、差し入れよ。元気で何よりだわ。優しい地元の人からの差し入れよ」
それは使い捨てカイロだった。匠は刑務所内の密着テレビ番組を見て刑務所にエアコンやストーブが無く、寒い思いをしていることを知っていた。カイロを差し入れしたのは寒い冬場に毛布を被って寒さを凌いでいる受刑者の気持ちがわかったのであった。
竜平「ものすごくありがたい。男9人の相部屋だけど、流石に底冷えするんだよね、これが」
 面会室の外では匠と看守が会話をしていた。
看守「君は良いのかい?彼女の側にいなくても」
匠「看守さん、久々の父娘の会話。よそ者は不用ですよ」
看守「それもそうだな…そうそう、田中竜平受刑者は内部での態度が優秀だから無期懲役刑よりも早く出所できるかもしれないな。あの娘さんもきっと喜ぶよ」
匠「そうですか…ミーナも喜ぶと思いますよ。時間が終わったら伝えてあげないといかんな」

***続く


−次回予告−
どれみ「ついに楽しかった学園生活ともお別れして、いよいよ私も社会人だね」
かよこ「次回魔女野球『どれみの卒業式で大騒動!!』心の直球あなたに届け」

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