魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
第16話「匠のおもしろアイデア」

 旧MAHO堂にボランティアしているメンバーが集まっていた。定例会議の最中に扉を開けてこがねが入って来た。彼女は魔女界のことやハナの孤軍奮闘ぶりをどれみに報告しに来たらしい。そこで匠はこがねに話しあった案を言った。

一、スタジアムの出入口に廃業になった造り酒屋の樽を置きそれを募金箱とする
二、当日のスタンドにいたファンにビラを配り、一口500円を銀行に振りこんでもらう。

アストロビジョンで協力を求める。
匠「具体案はこの二つなんよ。魔女界の人としてはどうや」
と、ホワイトボードを匠は指しながら言った。
こがね「私は樽募金がいいな。そうしたら、不特定多数の方が協力してくれるから良いと思うわね。でも、私の一存では決められないのよ。女王様に聞かないと…」
匠「そうだから、魔女界は進まない。これではプロジェクトXになりえない。長老魔女たちが反対してもわしらはやるんだ。それがプロジェクトXの言っていることなんじゃ」
と、匠はこがねに熱っぽく語った。
こがねは目頭が熱くなった。
どれみ「匠さんの口癖はね『誰かの為になんかやる』なの。こがねちゃんは魔女界の為に頑張ったじゃない。匠さんはそこに感動して、樽募金をやるって言い出したのよ。その気持ちをわかってあげてね」
こがね「…そうなんだ」

匠は河川敷に佇んでいた。防波堤に身を乗り出していた。
「誰かの為になんかやる。結局は無理やったか、魔女界は」
と、ボヤキながら立っていた。
こがね「樽募金をやろう!匠さん、樽のあてはあるんですか?」
匠「その言葉を待っていた。一週間前に広島の酒どころの西条の造り酒屋が倒産したんや。樽はもう確保しているで」

おんぷが半紙に筆ペンで『魔女界義援金』と丁寧に書いたものを三台用意した。準備は整った。

***

数日後、MAHO堂が原因不明の火事で半焼したのである。樽はかろうじて無事だったが、新たな部屋が見つかるまではメンバーの中で一番家が近いおんぷの家で会議するハメになってしまった。
匠「こんな大勢で押し掛けて、すまん」
おんぷ「いいのよ。今日は仕事もないし、パパもいるし」
匠「えーっ!お父さんがいらっしゃるんですか!!見ず知らずの男が年頃の娘の部屋に上がり込んで…」
おんぷ「ふふっ。そこはパワーバランスよ」
その言葉の通りおんぷの父親の剛が部屋に行こうとすると、母親の美穂が耳を引っ張って居間に戻した。

 ミーナはおんぷの家にボランティアとして一緒にいた。
ミーナ「おんぷのお父さん、大丈夫ですよ。私と匠が付き合っているんですから匠は二股は掛けません」
剛「そうですか。安心しました。娘に変なことをするかで、心配で…」
ミーナは笑った。そして、
ミーナ「そんなのありえないって。匠は真面目よ。あたしはそこが好きなのよ」部屋で匠は思った。
(ミーナ、説得ありがとう)


−次回予告−
ミーナ「本当に勘違いもいい所。匠はそんな人じゃない」
どれみ「おんぷちゃんのパパは疑い深いから」
匠「次回魔女野球。『匠のデート!?』心の直球あなたに届け」

リストに戻る