魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
第15話「こがねの希望」

 2007年日本シリーズは稀に見る大激戦になった。引き分けが2試合…そして3勝3敗2分けで迎えた史上初の日本シリーズ第9戦。場所は大空スタジアム。この試合で勝った方が日本一の栄冠に輝く。
 上田野球は実にしぶとい物だ。臭い所をついて来る。イチロー二世と言われたこがねですら攻略法が見つからない。
こがね「ヤな所ばかりにボールが入ってくる。私のバットコントロールですら無理よ。知将と言われただけあるわ」

内野年間指定席にはハナがいた。
ハナ「こがね〜っ頑張ってよ。魔女界のイチローなんだから〜」
そして外野席では…
匠「今回は、三者凡退に終わりましたけども、先発の苫米地投手にはマシンガンを壊す勢いで、抑えていって欲しいと思います」
と言って壇上を降りた。
匠「口上が長いよ。声が裏がえったよ、全く」
おんぷ「ご苦労様。はい、お茶」
とおんぷペットボトルを匠に差し出す。
はづき「匠さん、なんか独り言を言っているけど…」
匠「広島は野球がらのある土地じゃ。審判のひいき防止策やな。カープはよくやられたもんよね」
はづき「それで野球にはうるさいのね」
匠「ストライクに入ったろうが!へぼ審判が。帰れバカ」
どれみ「結論に急ぎ過ぎですよ。匠さんは」
匠「正しいことを言っているんや。今のはギリギリで入っとるし、これは市民球場では当たり前のことじゃ。オリンピックの審判のがまだ正しいよ」

 こがねは冴えてなかった。同点のままライトの守りにつく。その時!
どれみ「こんなのこがねちゃんらしくないよ!!魔女界を励ますんじゃなかったの!!」
匠「春風お前、初めて野次ったんじゃないのか?」
どれみ「友達だから…、親しいから…」
とどれみは言った後黙った。
匠「……。女ってのは複雑だなぁ」

 9回裏、こがねは次の打席に立った。その大きい当たりはスタンドへ消えて行った。サヨナラ本塁打。大舞台でやった。日本一決定弾である。
匠「仕事したね。日本一決定弾だ」
おんぷ「これがプロの仕事なのね!こがねちゃん、ありがとう!」

 魔女界モニター前では大歓声が行っていた。
アナ「今日のヒーローはこの人しかいない!南井こがね選手です!!どうですか、決定弾を挙げたのは?」
こがね「最高です!それにファンの皆様今日は夜遅くまでありがとうございます!夜道は気をつけて帰って下さいね」
球場を大歓声がうねった。花火を打ち上げて、日本一を祝った。
(やったね。こがねちゃん!)
どれみはそう思った。

***

 輝かしい栄冠を手に入れたホエールズのシーズンオフ。こがねは魔女界にいた。魔女界の友と過ごした学び舎は無くなっていた。マジョハートの診療所には、国境なき医師団のメンバーが目立っている。彼らもまたボランティアである。こがねの母親は、仮設住宅にいた。元気にやっていた。

 その一方で、かたくなに自衛隊の復興支援を断る地域があった。かつて、マジョガエルの村があった地域である。
山崎「危険ですから早く仮設住宅に移って下さい。建物の倒壊の恐れもありますから…」
村長「日本人は信用しない。早く出ていけ!」
山崎「まただめか。こうなれば上の力を借りるしかないな」
そう言って軍用改造されたカワサキKLXオフロートバイクに乗って王宮に向かった。エンジン音を 出して走り出した。
 こがねは瓦礫の山と化した魔女界の町を歩いていた。その横をバイクが走り抜けて行った。
こがね「危ないわね!今のバイク。こんな狭い道を高速で走り抜けるなんて。あの自衛官は何を急いでいるんだろう」
と独り言を言った。

 王宮にバイクを降りた山崎はハナに言った。
山崎「マジョガエル村の元・村長がなかなか仮設住宅に移ってくれないんです。我々が信用できないとかたくなに拒んでいます。力を貸してください!これでは作業が続けられません」
ハナ「うーん。あの人は頑固者だから、なかなか聞かないんだよね。ハナちゃん、なんとかしてみるよ」と言って、ハナはそこへ向かった。

 着いた途端にハナは彼女を引っ張って現場に行った。
ハナ「これが、日本人の真の姿だよ」
その先には、自衛隊員の汗を流す姿があった。ロープの結び方や、救助の仕方などを若い魔女に教えていた。診療所では医師団のメンバーがケガの手当てに回っている。
こがね「女王様の言う通りです。おそらく、協力していないのはあなただけですよ」
ハナ「こがね…!いつの間に」
こがね「さっきから聞いていましたよ。どれみちゃんたちに報告しておきます」
魔女界は確実に復興の道を歩んでいた。


−次回予告−
どれみ「ハナちゃん、頑張ってるね。私たちも負けないように頑張ろう」
匠「樽(たる)募金でもやろうか。結構お金が集まるぞぉ」
おんぷ「次回魔女野球。『匠のおもしろアイデア』心の直球あなたに届け」

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