魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
第11話「若き鯨物語」

 美空球場。ここには何かが足りずに1軍へ行くことの出来ない2軍選手たちがいた。こがねもその一人だった。彼女はケガの状態が思わしくなく、なかなか1軍(うえ)に上がれずにいた。アンダーの衝撃デビューから半年。こがねは「天才少女」といわれ、かなりちやほやされた。新聞記者である匠は美空球場に足を運び 、こがねの取材を敢行した。
匠「南井選手!何時になったら1軍に上がるんですか?ファンは待ちわびていますよ!」
こがね「今は調整の毎日です。まだイースタンリーグの公式戦も投げてませんから…。夏まで無理かもしれないですね」
匠「あきらめないで下さいね。大空のスタンドに子供たちが待っていますから」
 たった15分間の取材だった。それでも記事にしなければならない。小さな記事だったが、翌日の中国新聞のスポーツ面にその記事は載った。
 こがねはその記事を読んで泣いた(本誌その物は箒で飛んで買いに行った)。匠はその頃、練習場で琳選手の取材をしていた。
匠「日本に来て数年がたちましたけど、慣れましたか?」
琳「うーん。厳しい質問だヨ。食品には慣れないです。納豆なんて、食べ物と分かるのに何ヶ月もかかったネ」
匠「臭いですからね、納豆。僕の弟なんて朝からですよ」
 あちこち話が飛んで美空球場。イースタンリーグ公式戦が行われる。その5回表、こがねはマウンドに帰って来た。3回を抑えて、防御率0・00という最高の形で初登板を終えた。解説者も…
「このピッチングをね、次の試合にもして欲しいですよ。そうしたら、1軍昇格も早いですよ」
と褒めていた。 果たして、こがねは「天才少女」としての意地を見せれるのか!?

***

その頃1軍は首位ダイエーと3ゲーム差に並び、連覇の可能性も見えて来た。ダイエーのエースこと、新垣が調子を出して来た。これまで負け無しの5連勝をしていた。一方、ホエールズも擬宝珠の好投でチーム三連勝していた。ダイエーはマウンドに新垣を送り、ホエールズは苫米地を送った。
ダイエーの捕手は強肩豪打の城島。すでに2ケタ本塁打を両リーグで最初に達成していた。本拠地の福岡ドームはかなり外野席フェンスが高く、ヒットでの試合が多いがその福岡ドームですら本塁打を連発してしまう打者だった。

その試合をこがねはテレビで見た。リリーフ投手が打たれるたびに、早く1軍昇格しないと…と焦った。  しかし焦れば焦るだけ、結果は逃げて行った。イースタン戦は試合経験を積む為の物。2軍選手という人たちは練習でお給料をもらっている。この作品での投手コーチ、大野豊氏の著書にはこうある。 『仕事愛し、人を愛し、自分を愛せよ』
この言葉の受け入れ方は人によって違う。しかし、こがねはこれができないから自分は2軍と思う様になった。
2軍監督は「努力しない者にこの世界での明日はない」と言った。
こがねは体質改善を図る為に黒酢を飲み始めた。その手の専門校で栄養士の免許を取得した。
“目指すは瀬川おんぷ”
 新聞を読むことが日課になったおんぷはファミファミサタデーで「目標にされて嬉しい」と言った。

 その2軍に新外国人が1軍から成績不振で降りて来た。その名は、グラン・ファニーニョ内野手。守備位置はファーストとサード。早速、ファニーとあだ名された。31歳で独身のアメリカ領プエルトリコ人。3Aでは本塁打15本の活躍、ヒットは225本(通算)を放った。(身長は204センチ、体重は67キロ。メジャー時代の 4番経験もあるが、この日はスタメンが風邪を引いていた為に仕方なく入った)

 イースタンリーグ公式戦。この日は巨人戦ともあって、多くの2軍ファンが美空球場に詰め掛けた。そして、こがねの先発で試合が始まった。
(巨人軍のスタメン)
1番センター、鈴木
2番セカンド、宮崎
3番レフト、高野
4番キャッチャ吉永
5番ファースト後藤
6番サード、福井
7番ショート、永池
8番ライト、中濱
9番ピッチャー、石井(魔女)
以上。巨人ファンは湧き上がる。

 試合が終了して ホエールズ2軍寮に帰ると、どれみたちが遊びに来ていた。彼女らも高校生に成り、礼儀や作法も良くなっていた。この寮にはプリクラとスタクラが設置してある、外部者の驚く選手寮だ。


−次回予告−
匠「広島の野球ファン待望のパリーグ公式戦。楽しみだな」
ミーナ「でも、広島市民球場は狭いよね」
匠「とりあえず、パリーグ公式戦やって良かった」
どれみ「次回、魔女野球。『こがね復活!悪夢の広島公式戦』心の直球あなたに届け」

リストに戻る