魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
第6話「試合終了後…」
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 第6話2006年度ペナントレース開幕! 美空スタジアム。ホエールズは2年連続地元開幕を飾った。相手は千葉ロッテマリーンズ、李内野手の最後のシーズンだった。この試合の主導を握ったのは3回裏のホエールズ剣の先制3ランホームラン。これがロッテのエース黒木のシュートを完璧にとらえ、ボールは場外へ消えていった。(このボールは場外にある駐車場に止まっていた車の後部のフロントガラスに直撃し、弁償ざたになった)
纏は剣に「頑張れよ。弁償…」
剣「え〜っ。球団がするんでしょう。先輩」
纏「するわけないだろ。私達はもう社会人責任はきちんとしなきゃね」
剣「は〜い」
シャワー室でそんな会話がされていた。

***

 開幕第2戦目には試合に先立って始球式が行われた。そのピッチャーはハナだった。球審の所にホエールくんが立つ。 この日の先発は田中選手。田中はハナに言った。
「あの座っているおじさんに向かって思い切りボールを投げるんだよ」
ハナは言われた通りに投げた。ボールはホーム上でワンバウンドし、キャッチャー上村のミットに収まった。実況アナは、
「ナイスボール。見事に収まりました」と言った。
 ハナは手を振りグランドを後にした。その様子をどれみ達はテレビで見た。(おんぷは携帯のラジオサービスで移動中に聴いていた)どれみは大阪に住んでいるあいこの家へ電話した。 あいこは、
「こっちではテレビ中継もラジオ中継もまだはじまってないから知らんわ」と言っていた。
 魔女界のラジオも中継し、魔女界女王は目を細くしていた。野球もだんだん広まりつつあったし、プロで成功したから今度は高校野球だ、とほざいている魔女もいた。
 魔女界の紹介も始まった。アナウンサーが原稿を読み上げる。魔法堂にもたくさんのお客さんが詰めかける。人間達は魔女界の観光をしたがっていた。異世界の体験をしたい人もたくさんいた。

***

 兵庫県神戸市にあるYahoo!BBスタジアム。この球場で久しぶりにプロ野球が行われた。ホエールズナインはオリックスの奇跡を忘れていなかった。その元・ホームグランドであるYahoo!BBスタジアムで野球をする日は神戸の野球ファンがたくさん詰めかけていた。相手は北海道日本ハムファイターズ。新庄と剣というセンターの対決に物凄い人が観戦に来ていた。
この日のスタメンオーダー
一番セカンド兵動
二番キャッチャー上村
三番サードディアス
四番センター剣
五番ファーストロペス
六番レフト相川
七番ライトミーナ
八番ショート石原
九番指名打者倉
 以上のオーダー。八番の石原さゆりは魔女界出身の選手だ。本名はマジョユリという。彼女は阪神大震災の直前まで若いながら魔法堂のオーナーをしていた。 が、震災が彼女の全てを奪った。昨年テスト入団の練習生だったが、監督に認められて選手になった。彼女の持ち味は快速な足と手堅い守備。ウェスタンリーグでは前期の盗塁王を頂いた。又、エラーも少なくチームの守備を引っ張った。首脳陣がかなり期待している選手だった。人間界への再挑戦が始まった…。

試合結果
5ー0
太陽ホエールズの勝ち。

 石原は3打数2安打の活躍だった。そう、打撃も上手なのである。若い魔女から試合終了にサインを求められたりした。ボールや色紙にサインを書く。握手を求める人間のファンもいた。
 その数十分前のこと、彼女は廊下を歩いていた。しかも纏や剣といった、この日活躍した選手と一緒に歩いていた。纏たちはマスコミの質問に答えているが、彼女は口数も少なく、質問に俯いて答えていた。ロッカールームで纏が声をかける
「さゆり、今日飲みに行かない?焼き鳥が美味しい店知ってんだ」
さゆりは答えた
「いいけど、瞳さんも誘おうよ。あの人がいたら盛り上がるし」
タクシーでその店に向かった。店名を見てさゆりは驚いた。
『居酒屋魔法堂』
確かにそう書かれていた。さゆりは思った。
(この店まだあったのか。母さんは元気かな)
 ここは彼女の実家だった。
「さゆり?どうしたの!?早く入ろ。纏が待ってるよ」と瞳が言った。
 いらっしゃいませ〜と、威勢の良い声がする。若い女性店員が席へ案内する。最近流行りの個室タイプの店だ。ここは居酒屋だが、世代に合わせていろんなメニューの食べ物があった。会員制の店で全国に支店があった。本店は名古屋にある。代金を割り勘で払って、ホテルへ引き上げた。
ホテルでさゆりは素振りをしながら考えた。母親は元気なのか気になった。ドアのノック音がした。返事をするとボーイが、
「室内での素振りはやめてください。他のお客様のご迷惑になりますので」
さゆりは仕方なく、屋上ですることにした。そして、シャワーを浴びて寝た。

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