まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第53話『おジャ魔女は止まらない!』
(2005/10/23 入稿)
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今日もこの川の土手で、相変わらず上達しないトランペットの音色が響いた。
しかし、その演奏もしばらくして止まった。
はづき「まさる君・・・。」
矢田まさるは、はづきがそう話しかけると、トランペットを傍らにおいた。
まさる「藤原・・・久しぶりだな。」
はづき「最近、来れなくてごめんね・・・いろいろ忙しくて・・・毎日来てたんでしょ?」
まさる「・・・別に。」
矢田は無愛想にそれだけ答えると、取り出した布でトランペットを拭い始めた。はづきはそんな矢田の横顔をただ見つめていた。
まさる「・・・何だよ、顔になんか付いてるのか?」
はづきの視線に気付き、矢田はトランペットを拭うのをやめて言った。
はづき「え、ううん、そうじゃなくて・・・まさる君らしいな、って思って。」
まさる「何だよそれ・・・変な奴だな。」
矢田はそう答えると、夕陽が照りつける水面を見つめた。市街地を流れる川にしては意外と綺麗なその川に映える日の光は、なんとも言えず神秘的に輝いている。
はづき「ねぇ・・・変なこと聞くみたいだけど、まさる君、魔法とかって信じる?」
まさる「は?何だよ急に・・・。」
矢田はそう言ってはづきの顔を覗き込むが、意外にもはづきの目が真剣であることに気付き、矢田も真剣に考えることにした。
まさる「信じるっつうか、ある訳無いとは思うけど、あったら便利だろうな、とは思う。」
はづき「・・・そっか。」
まさる「けど・・・。」
はづき「え?」
まさる「けど、魔法なんて使わなくても、人間何でも努力すれば出来るって俺は信じてる。だから、たとえ魔法が使えても俺はそれに頼るつもりはねぇけどな。」
そう言い切った矢田の言葉が、はづきの心に響いた。
はづき「・・・そっか。」
それは2年前にどれみが出した決断したそれと似ていた。いや、同じといっても差し支えは無いほどである。
どれみたちは、2年前、魔法を捨てた─はずだった。
しかし、この2年間、どれみたちは結局また魔法とめぐりあってしまった。
そんな2年間の生活を送る中、少し忘れかけていたあのときの決意─。
矢田の言葉によって、はづきはそれを再び思い出すことができた。
まさる「なんで・・・なんでそんなこと聞くんだ?」
はづき「それは・・・今はまだ言えない、かな。」
まさる「何だよそれ・・・じゃぁ、逆に聞くけど、藤原は魔法とか使えたらどうするんだ?」
はづき「・・・私もまさる君と同じよ。」
まさる「ふうん、そっか。」
はづき(私も・・・魔法には頼らない。2年前にそう決めたから─。)
***
ももこ「Hey!お待ちドォ!」
両手に1枚ずつ皿を持ったももこが、あいこの部屋に戻ってきた。
あいこ「よ、待ってました!」
ももこは両手に持っていた皿をあいこの部屋の中央に置かれたテーブルの上に乗せた。
おんぷ「うわぁ、これ、何?」
ももこ「私のオリジナルのSweetだよ。」
皿の上には、見た目はたこ焼そっくりの丸い物体が数個乗せられていた。
ももこ「小麦粉と牛乳、ベーキングパウダー、砂糖、塩と卵を混ぜて作った生地をたこ焼器のプレートで焼いて、中にイチゴとかバナナを入れて作ったんだ。最後に焼いた生地の上からタコ焼きの青のりの代わりに砂糖、それからソース代わりに生クリームをかけたら出来上がり!」
おんぷ「よく思いついたわね、たこ焼はたこ焼でおいしいけど、こういうのも悪くなさそうね。」
あいこ「まっさかたこ焼作るプレートでこんなお菓子作るとはなぁ〜意外っちゃぁ意外やなぁ」
ももこ「とにかく早速食べてみてよ!」
ももこに促がされ、2人はそのお菓子を一口、口に含んだ。
おんぷ「おいしい!」
ももこ「本当!?」
あいこ「うん、なかなかおいしいで、これやったら何個も食べられそうやわ。」
ももこ「良かった・・・ねぇ、今、2人とも幸せ?」
あいこ「え?」
おんぷ「幸せかって・・・どういうこと?」
ももこ「2年前にさ・・・私たち、魔女にならずに人間として生きる道を選んだでしょ?その時に私、決めたんだ。魔法に頼らなくても、人を幸せに出来るような、私が作ったお菓子を食べた人がみんな幸せになるような、そんなパティシエに将来なれたらなって。」
あいこ「食べた人がみんな幸せになるようなパティシエ、か・・・。」
おんぷ「・・・このお菓子で誰もが幸せを感じるかどうかは分からないけど、少なくとも私は感じたわ。」
ももこ「そっか・・・でも、やっぱりまだまだかなぁ。何かこう足りないというか・・・。同じ材料でも、もっと美味しく作れるような気もするし、もっと見栄えも良く出来るような気もするし・・・。」
自分の作ったお菓子を一つ口にしながら、ももこは呟いた。
おんぷ「私たちは専門的なことは分からないから、なんとも言えないけど、でも、ももちゃんがそう思う気持ち、分かる気がするな。」
ももこ「What's?」
おんぷ「私もこういうお仕事やってるから、いろいろとお芝居するじゃない?そうやってやった演技が、みんなは良かった、だとか、上手だった、だとか言ってくれるんだけど、何かが違う気がしたりするんだよね。本当にこれで良いのかな、って。だから、ももちゃんのその気持ちは凄く分かる。でも、そう思ったときに、次にどう動くかが、それを乗り越えるうえで重要だと私は思う。いつまでも悩むんじゃなくて、次に何をすれば良いか、それを考えるの。」
あいこ「なるほどなぁ・・・さっすがおんぷちゃん、経験者は語るって奴やな。」
ももこ「そっか・・・Thank you,おんぷちゃん。凄くやる気が出てきたよ。」
おんぷ「別にお礼を言われるほどのことなんて言ってないわ。」
ももこ「ううん、なんだか励まされたよ。もっと頑張ろうって気になれた。」
おんぷ「そう・・・じゃぁ私もももちゃんに負けないように頑張らなきゃね、お仕事。」
ももこ「へっへ〜、おんぷちゃんには負けないもんね〜。」
おんぷ「あぁ、言ったな〜。」
あいこ「私も2人に負けてられへんな〜、けどその前に何か目標作らなあかんなぁ・・・。」
ももこ「もし何か目標が出来たら教えてよ、私たちも応援してあげるからさ。」
あいこ「ももちゃん・・・、ありがとう。」
***
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