まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第52話『ありがとうを求めて』
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おんぷ「えっと、ママ、今日の仕事はさっきの写真撮影で終わりだっけ?」
おんぷがそう尋ねると、おんぷの母・瀬川美保はスケジュールがびっしりと書かれた手帳をペラペラとめくりながら、
みほ「そうね、今日の仕事はもう終わりね・・・おんぷちゃん、お疲れ様。」
と答え、差し入れのジュースをおんぷに手渡した。
おんぷ「ありがとう。あ、えっと、これからちょっと出かけてきても良いかな?」
みほ「えぇ、良いわよ。でも、何処に行くの?」
おんぷ「ちょっとね。」
おんぷはそれだけ答えて、TV局の楽屋を後にした。

***

西日が射す美空市の街、風木は困っていそう人を探して歩き回っていた。
かぜき「どうしよう、日がだいぶ西に傾いてきちゃったよ〜。」
こがね「焦ったらダメだよ。」
かぜき「でも・・・。」
こがね「こういうときこそ冷静にならなくちゃ。とか言って、去年の私はここで冷静になれなかったから1級試験に落ちちゃったんだけどね・・・。」
かぜき「うう〜、冷静にって言われても・・・。」
っとその時、商店街の裏道を2人が歩いていると、足元を何かが横切った。
『チューチュー』
かぜき「きゃ、きゃぁ!ネズミ?」
こがね「あら、可愛いじゃない。」
かぜき「え、えぇ!?か、可愛いですか?」
こがね「あれ、可愛くない?」
かぜき「ううん、言われてみれば確かに可愛い気もしますけど・・・。」
ペルル「私は無理・・・。」
ネズミに拒絶反応を見せる妖精のペルル。
こがね「ほら、おいで、ネズミちゃん。」
そう言って野良ネズミを掌に乗せると、こがねはネズミの頭を撫でた。
ペルル「よ、良く触れますね・・・。」
こがね「ん、だって可愛いじゃん。」
ペルル「その可愛いって感覚が分からない・・・。」
かぜき「南井さん、あんまりネズミには触らない方が・・・。」
こがね「え、なんで?」
かぜき「変な細菌とか持ってるかもしれないですし・・・。」
こがね「風木ちゃんは心配しすぎ、大丈夫だよ。」
かぜき「大丈夫ってそんな・・・。」
こがね「分かったよ、じゃぁネズミちゃん、元気でね。」
そう言ってこがねはネズミを放してやった。
こがね「って、良く考えたら、ネズミと戯れてる場合じゃなかったよね、ごめんごめん。早く行こっか、日が暮れる前に試験終わらせないと・・・。」

─ガチャン
『チュー!!』

かぜき「え?」
突然聞こえてきた、何か鍵がかかるような物音と、ネズミのけたたましい鳴き声に驚いて、2人は振り返った。
かぜき「あっ!」
こがね「これって・・・!?」
見ると、そこはとある飲食店の裏口の前で、ネズミ捕りの罠に、さっきの野良ネズミがかかっていた。
こがね「ネズミちゃんが罠にかかってる!?」
かぜき「これってもしかしてここのお店の人が作った罠なのかな・・・何だか可愛そう・・・。」
こがね「そっか、飲食店だもんね、ネズミに店内を走り回られたりしたら、お客さんから文句が出ちゃうし、仕方ないのかもしれないけど・・・。」
かぜき「でも、可愛そうですよ。私、助けます。」
風木はそう言って罠に手をかけ、ネズミの挟まった体を罠から外そうとした。
ペルル「た、助けなくても良いって〜。」
ネズミが苦手なペルルは言うが、風木は必死になってネズミを助けようとしている。
かぜき「ぬぅぅぅぅ、開・か・な・い〜。」
力いっぱい罠を外そうとするも、ネズミの挟まった部分はピクリとも動かなかった。
かぜき「はぁ、はぁ、開かないよ・・・。どうしよう・・・。」
こがね「あ、あのさ、風木ちゃん。」
かぜき「え、どうかしたんですか、南井さん?」
こがね「こういうときこそ魔法、使ったら?」
かぜき「・・・あ。」
風木は思い出したように頷く。
かぜき「えっと、誰も居ない、ですよね?」
風木は前後をキョロキョロと見渡して、誰もいないことを確認した。そして、ポケットから香水のコロンのようなものを取り出すと、それを身に吹き付けた。
かぜき「プリティ〜ウィッチ〜かぜきっち〜♪」
魔女見習い服に着替え、ポーズを決めると、すぐにポロンを構えた。
かぜき「ペルオ〜ルタント フィラディリオン!ネズミちゃんを助けてあげて!」
ポロンから放たれた光は、ネズミのかかった罠に触れると、弾けて消えた。すると、罠の金具だけが見事に消えた。
『チュ〜、チュ〜、チュ!』
ネズミは何やら嬉しそうに鳴き声をあげると、頭を下げて(風木にはそう見えた。)その場を立ち去って行った。
かぜき「また罠にかかるんじゃないよ〜。」

─チリンチリ〜ン

突然、風木の背後でベルの音が鳴り響いた。
モタ「1級試験、合格よ〜。」
ペルル「え、合格、ですか?」
モタモタ「さっきのネズミが、“ありがとう”って言ってたわよ〜。」
かぜき「ネズミが・・・?」
こがね「あ、そうそう、動物を助けてあげても合格になるんだよ。」
かぜき「へぇ〜、そうなんですか。・・・ってことは、私、本当に・・・?」
モタ「えぇ、合格よ〜。」
かぜき「やったぁ!」
こがね「良かったね、風木ちゃん。それから、1級試験合格、おめでとう!」
かぜき「はい、本当にありがとうございます!」
風木は満面の笑みを浮かべながら、こがねに頭を下げた。
かぜき(やったよ、リックス、私・・・私、試験に受かったよ!)
風木はそう心の中で呟きながら、赤く染まり始めた西の空を眺めた。
こがね「とりあえず、魔法堂に戻ろっか。」
かぜき「はい。」
こがね「あ、そうだ、ちょっとだけ待ってて。」
かぜき「え?」
こがねはそう言って路地裏に隠れると、ポケットから携帯電話らしきものを取り出し、電話をかけ始めた。
こがね「あ、もしもし?うん、私、こがねだよ。うん、予定通りだから、準備頼むね。それじゃ、今からそっち行くから。うん、じゃぁね〜。」
手短に会話をすませ、こがねは携帯の通話終了ボタンを押す。そして、何事もなかったかのようにこがねは風木の元へ戻ってきた。
こがね「風木ちゃん、ごめんごめん、さ、行こっか。」
かぜき「あ、はい・・・。」
こがねの行動に、頭の上に?を浮かべる風木だったが、とりあえず魔法堂書店に戻ることにした。

***

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