まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第52話『ありがとうを求めて』
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かぜき「満月ですね・・・。」
どれみ「うん、満月だね。」
しずく「いよいよ来たね、この日が・・・。」
空の視界を遮るものは、辺りに群生する木々の他にはなかった。その木々の合間、空一面どの方角にも雲の子一つ見えない晴れ渡った空に、ポツンと浮かび地上を眺めている満月は、どこか寂しげに見えた。
そう、今日は満月の夜。
炎の精霊、菜月の話に寄れば、人間界を守護する神殿に捧げられる緑樹石は、満月の夜に“月の石”をかざして祈ることによって輝きを取り戻すかもしれないのだという。もちろん、緑樹石が輝きを取り戻さなければ、人間界は破滅の一途を辿ることになるだろう。
さつき「緑樹石、輝きを取り戻してくれると良いんだけど・・・。」
どれみ「うん・・・とにかく、始めよう。」
どれみは、月明かりに照らされた美空市の町並みを見下ろしながら、呟く。さつきの家の近くにある、夕日丘と呼ばれる小高い丘。その丘の上に群生する木々の合間の、出来る限り人目のつかない位置にどれみたちは4人は居た。

どれみが服のポケットから大事そうに“月の石”を取り出すと、それを月明かりにかざした。
どれみ「どうか緑樹石が輝きを取り戻しますように・・・。」
どれみがそう呟いたあと、あたりはしんとなった。
が、しばらくすると風が吹き、木々がザワザワと音を立て始めた。その一方で、“月の石”は相変わらず沈黙を保ったまま、全く何も反応を示さなかった。
どれみ「何も・・・起こらないね。」
っとどれみが呟いたその時だった。“月の石”が淡い光を放ち始めたのだ。
しずく「光って・・・る?」
かぜき「光ってますね。」
風木も驚いたように頷く。そうこう言っている間にも、その光は次第に増していった。そして、その光だけが突然上空へロケット花火のように飛んでいって消えた。ふと気が付いて“月の石”を見てみると、さっきまでの光は消えてしまっていた。
どれみ「これで・・・大丈夫なのかなぁ・・・。」
どれみたちはそう呟くと、光が吸い込まれて消えた闇夜の空をずっと見つめ続けていた。

***

緑樹石が輝きを取り戻したのは、その翌日の朝のことだった。朝早くに、人間界へと戻ってきた精霊たちが家までやってきてどれみたちにわざわざ教えてくれたのだ。大人には精霊の姿は見えないから、特に問題はなかった。
また、この日は全国一般的に、公立の小中学校では終業式が行われる日だった。どれみたちは朝学校へ来ると、学校の屋上へ行き眼下に広がる町並みを見下ろしていた。
どれみ「これで安心して、元の生活に戻れるね。」
しずく「うん、本当に、今年もいろいろあったね。」
さつき「そうね・・・。」
しずく「それにしても・・・今日で中学二年生もおしまいだね。」
さつき「明日から春休みで・・・春休みがあけたらもう三年生なんだよね・・・。」
どれみ「うん、小学校を卒業してから、もう二年が経つんだ・・・。」
どれみの記憶の中に、あの卒業式での出来事が蘇ってくる。すると、ふいにどれみの瞳から一筋の涙が零れ落ちてきた。
しずく「ど、どうしたのどれみちゃん?」
どれみ「え、あぁ、ごめん、ちょっと小学校の卒業式のこと思い出しちゃって・・・。」
しずく「小学校の卒業式・・・?」
どれみ「私さ、小学校を卒業したら・・・はづきちゃんとあいちゃん、おんぷちゃん、ももちゃん、それからハナちゃんたちともう二度と会えなくなるような気がしてさ・・・それで、卒業式の日に、私がMAHO堂に逃げ込んだことがあってさ・・・。」
しずく「そうなんだ・・・。」
さつき「そうだよね・・・小学校の間ずっと一緒だった親友と・・・離ればなれになっちゃったんだもんね・・・。」
どれみ「うん・・・正直言ってつらかったんだ・・・寂しかったんだ・・・。だけどね、私、みんなのおかげで分かったんだ。たとえ小学校を卒業したって、別にみんなと会えなくなるわけじゃないって。私は世界一不幸な美少女だなんてずっと思ってたりしたんだけど、私は不幸なんかじゃなくて、ずっと昔から幸せだったんだ、って・・・。」
さつき「ねぇ、どれみちゃん・・・。」
どれみ「何、さつきちゃん?」
さつき「もし・・・もしも来年の今頃、私たちがバラバラになっちゃうことがあったとしたら・・・その時に・・・言ってくれる?私のこと、私たちのこと、“親友”だったって、言ってくれる?」
どれみ「・・・当たり前じゃん。」
さつき「そっか・・・ありがとう。」
─キーンコーンカーンコーン
突然鳴り響くチャイムの音。
どれみ「あ、いけない、もうチャイム鳴っちゃったよ、早く教室に戻らないと。」
しずく「うん、じゃぁ、また放課後ね。」
さつき「OK、じゃぁまたね。」
そういって各自自分の教室へと戻っていくのであった。

***

魔法堂書店という看板の下がった建物の中、風木はひとりくつろいでいた。
かぜき「はぁ〜あ、なんかやることがなくて暇だなぁ・・・。」
椅子にもたれかかって座りながら、風木は呟いた。
かぜき「掃除でもしよっかな・・・。」
そう思って風木が立ち上がった時だった。魔法堂の入り口の扉を押して誰かが中へ入ってきた。
かぜき「あ・・・南井さん・・・。」
こがね「風木ちゃん、やっぱりここに居たね。」
かぜき「はい、学校も終わって、暇だったんで・・・。」
こがね「毎日ここに来てるの?」
かぜき「そうですね、学校が終わったらたいてい来てますよ。」
こがね「そっか。」
かぜき「あ、あの・・・。」
こがね「え?」
かぜき「今日はどうしてここに来られたんですか・・・?」
こがね「あ、そうだった、そうだった。あのね、明日のお昼の十二時から、風木ちゃんの魔女見習い一級試験があるんだって。」

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