まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第51話『絆が動かす運命の歯車』
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人間界、風木は家で居間の片付けをしていた。その途中、ふと時計を見た。
かぜき「7時半か、もうすぐお姉ちゃんがバイトから帰ってくるころかな・・・。」
そう呟くと、風木はポケットに手を突っ込んで、魔女見習い服に着替えるために必要なコロンを取り出した。そのコロンを取り出す際、何か小さな石のような物が風木のポケットから落ちた。
かぜき「あ、落としちゃった、リックスさんからもらった石。」
リックスから預かったベリアリウムという宝石を拾い上げると、風木は妙な胸騒ぎを感じた。
かぜき「なんだろう・・・この胸騒ぎ・・・。」
風木はたった今拾い上げたベリアリウムの黒い輝きを遠目にじっと見つめた。

***

原告1「被告人リックスの死刑確定まであと10分か・・・。」
原告2「ふん、やはりあの少女どもの証言ははったりに過ぎなかったらしいな。」
弁護1「そ、そんなことは無いはずだ、第一まだ10分もあるではないか。」
原告2「“まだ”?は、あと10分で何が出来るというのだ。」
原告3「おい、裁判長、もう良いだろ、さっさとリックスの死刑を確定しろ。」
裁判長「むぅ、しかし残された時間はまだ10分残っている・・・。」
原告1「チッ、頭の固いジジイだぜ。」
リックス「静かにしてくれないか?」
突然、被告人台に立つリックスが声を上げた。
原告1「な、何ぃ!?」
リックス「私が死刑になるかどうかは、どうせ10分後には決まるんだ。10分ぐらい、犬だって黙って待つさ。」
原告2「いちいちしゃくに障る奴だな、まぁ良い、どうせお前の死刑は確定したようなものなんだ。」
???「それはどうですかね?」
その声は裁判所内に突然響き渡った。原告側も弁護団も全員一斉に、声の聞こえてきた裁判所の入り口の方を向いた。
原告1「な、戻ってきやがった・・・どうした、もう諦めたか?」
こがね「いえ、その昔、マジョユーナという魔女が作った・・・“二重人格を治す薬”というのを持ってきました。」
原告3「マジョユーナ・・・まさか、地獄界出身の魔女が作ったあの・・・。」
こがね「はい。これをリックスさんに飲ませたいのですが、よろしいですか?」
裁判長「・・・許可しよう。」
どれみ「こがねちゃん、良かった、何とか時間には間に合ったみたいだね。」
キロル「あとはマジョユーナさんの発明が本物であることを信じるだけだね・・・。」
こがねは、その薬の入ったコップを持ってゆっくりと被告人台へと近づいていった。
こがね「リックスさん、どうぞ・・・。」
リックス「これを・・・飲めば良いのか?」
こがね「はい。」
リックス「そうか・・・ありがとう。」
リックスは笑顔でそう答えると、こがねからコップを受け取ってその薬を飲み干した。
裁判長「では・・・その薬の効果が本物かどうかを確かめるために、リックスの二重人格に関する項目をを再検査する。」
裁判長がそういうと、リックスは原告側と弁護団の数人の手によって別室へと連れて行かれた。
こがね「“あとはマジョユーナさんの発明が本物であることを信じるだけ”、か・・・。」
裁判所から連れ出されるリックスの後姿を、こがねは黙った見届けた。

***

数分後。
裁判長「検査結果が出た。これより、判決を言い渡す。」
こがね(マジョユーナさん・・・お願いします─)
こがねは両手を祈るように組んで、心の中で呟いた。そして、裁判長は少し間をあけたから、言い放った。

裁判長「被告人リックスを、懲役3年の刑に処す。」

その言葉が放たれた瞬間、弁護側から大きな歓声があがった。
リックス「裁判長・・・ありがとうございます。」
どれみ「やったぁ!こがねちゃん、やったよ!」
こがね「うん・・・良かった、本当に良かった・・・。」
ももこ「I'm very very relieved.」
おんぷ「早く帰って風木ちゃんにこのことを教えてあげないとね。」
はづき「風木ちゃん、きっと喜ぶと思うわ。」
しずく「それにしても本当にギリギリだったね・・・。
」 あいこ「薬がなかなか見つからんかって、一時はどうなることかと思ったで。」
さつき「本当、間に合って良かった・・・。」
リックス「みんな・・・わざわざ私のためにいろいろしてくれて、本当にありがとう。」
こがね「そんな、私たちはただ薬を探して持ってきただけですから。」
リックス「私が釈放されるまでの間・・・風木の世話はよろしく頼んだよ。」
どれみ「はい、任せてください。」
裁判官「おい、早くしろ、今から刑務所に連れて行くぞ。」
リックス「あぁ、分かってる。それじゃぁ、心配するなと風木に伝えてくれ。頼む。」
リックスはその言葉を最後に、裁判所から刑務所へと連行されていった。
いろは「メアリー・・・。」
メアリー「ん、どうしたの、いろは?」
いろは「今日は助かったわ、あなたがあの子達を連れてきてくれなかったら、リックスさんは助かってなかった。」
メアリー「そんなこと・・・お礼を言うことじゃないでしょ。」
いろは「あはは、メアリーならそう言うと思った。」
そう言っていろはとメアリーの目が合うと、2人は特におかしいわけでもないのだが、思わず声をあげて笑い始めた。それにつられて、どれみたちも笑い声をあげた。

幻獣界の空に広がる雲は、まるで人間界にまで続いているかと思うほどに長く空の果てまで伸びていた。

***続く


次回予告
どれみ「今夜はついに満月の夜かぁ・・・。」
しずく「これで緑樹石が輝きを取り戻してくれたら良いんだけどね。」
こがね「でも、魔女界と人間界をつなぐ扉が安定してきてるみたいだよ。」
かぜき「じゃぁ、私の魔女見習い一級試験ももうすぐ出来るようになるのかなぁ・・・。」
どれみ「次回、まだまだ!?おジャ魔女どれみ、『ありがとうを求めて』、ドキドキピース、みんなをつ〜つめ♪」

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