まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第51話『絆が動かす運命の歯車』
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幻獣界の裁判所。
こがねが“リックスの二重人格を治してみせる”と言ってどれみたちが裁判所を後にしてからは、裁判は一時中断となり、裁判長や原告側の検事、弁護団も裁判所の外へ出ていた。
しかし、その静かな裁判所の中で、つい先ほどまで裁判の対象だったリックスは、呆然と立ち尽くすように被告人台の前に立っていた。リックスの視線の先には、裁判所の天井にある明り取りの天窓からわずかに覗いている空があった。リックスはその何もない空を、ただ無言で見つめ続けていた。

***

魔女界。
どれみたちは、その昔、マジョユーナという地獄界出身の魔女が作った、“二重人格を治す薬”を求めて、現在マジョユーナの日記を所持しているマジョマリナの元へとやってきていた。
どれみたちの中で日記の文字、魔法文字を唯一読めるこがねは、その薬の在り処を知るためその日記を隅から隅まで、読み落とすところが無いように慎重になりながら読んでいた。そして、こがねはその日記に以前読んだときには無かった新たなページを見つけた。こがねはそのページをめくると、未見のその文章に意識を移した。
こがね「私は二重人格を治す薬を発明したがために、地獄界へ連れ戻されることとなってしまった。これは、我が娘、エミリに告げたい。」
そのような書き出しで始まったその日記は、次のように続いていた。

〜〜〜〜〜

 私は、エミリと離れることが、本当につらかった。しかし、どうしようもなかった。
 でも、私はエミリと別れることがどうしても納得がいかなかった。
 こんな別れがあって良いものだろうか。私は何も悪いことはしていないのに・・・。
 二重人格を治す薬発明したことが、何故人の人格を操る薬を発明するかもしれないという解答に行き着くのだろうか。
 私にはどうしても納得がいなかい。
 しかし、地獄界出身である私に味方してくれる魔女など、何処にも居やしない。
 だから、我が娘、エミリに私の無実を証明してほしいんだ。
 地下室に眠る、私の作った発明品で、魔女たちを救ってほしい。

   しかし、そんなことは私の身勝手に過ぎないことなど分かっている。
 エミリは地獄界出身の私と出会うことなんて、嫌がるかもしれない。
 そもそも、エミリがこの日記の意味を理解できるくらいに成長した頃には、私のことなどこれっぽっちも覚えていないかもしれない。
 だから、エミリの好きなようにしてほしい。
 私は、エミリが幸せになってくれればそれで良い。
 私は、他の誰よりもエミリの幸せを望んでいる。
 成長した、幸せになったエミリの姿を頭の中で想像しながら、私は地獄界での生活を送るとしよう。
 そうすれば、どんなに苦しい目にあっても、耐えることが出来る気がするんだ。
 だから、私にはそれだけで十分なのかもしれない。
 エミリよ、幸せになっておくれ。誰よりも、幸せに。

   最愛なる娘エミリへ、マジョユーナより

〜〜〜〜〜

マジョマリナ「マジョユーナ・・・お前は本当にそれで良いのか・・・。」
こがねの読み上げる日記の内容を聞きながら、呟くマジョマリナ。
どれみ「マジョユーナさん、絶対にエミリさんの会いたいと思っていると思う。」
こがね「でも、もしかしたら、これってチャンスかも知れない・・・よね?」
さつき「チャンスって・・・二重人格の薬を使ってリックスさんの二重人格を治せば、彼女の薬が役に立つから?でも、本当にそうかなぁ・・・。」
ももこ「Why?」
さつき「だって、世間の人からすればリックスさんは死刑を要求されるほどの罪人でしょ?それを二重人格を治す薬を使って二重人格を治し罪を軽くすることで、世間の人たちが“マジョユーナさんの薬が役に立った”って考えてくれると思う?そういう世間の人たちを見て、裁判所がマジョユーナさんの薬は役に立ったって判断を下せると思う?」
どれみ「言われてみれば確かに・・・。」
ももこ「ううん、やっぱりダメなのかなぁ・・・。」
しずく「確かに、そう判断してくれるとは思わないけど・・・。」
しずくは少し間をあけて、続けた。
しずく「でも、ここでマジョユーナさんの薬を使わなかったら、リックスさんは死刑になるんだよ?マジョユーナさんが地獄界から釈放される可能性はこれから先にまだあったとしても、リックスさんの死刑が免れる日はこれから先に、待ってても来ることは無いでしょ?何はともあれ、今はリックスさんのことの方だ先決だよ。」
???「私もそう思うわ。」
こがね「いろはさん!」
マジョマリナの家に突然現れたのは、なんといろはだった。
いろは「やっぱりここに来てたのね、しずくも、こがねも、みんなも。」
こがね「・・・はい。リックスさんの二重人格を治すには、マジョユーナさんのあの薬が必要だと思ったんで・・・。」
いろは「そうね。じゃぁ、悩んでいる暇は無いでしょ?早く、その薬を探さないと。」
こがね「・・・はい。」

***

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