まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第49話『虹をかけよう』
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かぜき「これが・・・さっきリックスの言ってた洞窟、かなぁ?」
風木は恐るおそるその洞窟へと近づいていく。
かぜき「誰か居ますか〜?」
風木が洞窟の中に向かってそう言ってみるも、帰ってくるのはこだました風木の声だけだった。
かぜき「何だか怖いなぁ〜、とりあえず入ってみよう・・・。」
中は右も左も分からないくらい真っ暗で、風木の足音が不気味に響いていた。
かぜき「灯り欲しいな・・・。」
風木はふと思い出したようにポケットを探った。出てきたのは、香水のコロンのような物体だった。
かぜき「やっぱりあった・・・。」
風木はそれをシュッシュッと自分に振りかけた。すると、魔女見習い服が宙に舞ったので、風木は急いでそれを身に纏った。
かぜき「プリティ〜ウィッチ〜かぜきっち〜♪ペルオ〜ルタント フィラディリオン、灯りよ、出てこ〜い!」
ポンッと音をたてて出てきたのは、一本の懐中電灯。
かぜき「スイッチオン、と。うわぁ!!」
懐中電灯の電源を入れて、風木は悲鳴をあげた。何故なら、目の前に突如として巨大な十字架が現れたからだった。正確には、暗いためにその十字架の存在に気付いていなかっただけなのだが・・・。
かぜき「何だろう、この十字架・・・お墓かな。誰のお墓だろ。」
風木はそう呟くと、懐中電灯の光を十字架の根元の方に当てた。すると、そこには何やら札がついていて、何かが書かれていた。
かぜき「“フェミル・バラード、ここに眠る”・・・ウソ・・・。」
その札に書かれた名を読み上げた瞬間、風木の瞳からは涙が零れ落ちた。
かぜき「マジョフェミルさん・・・。」
そして、その名前の下には、何やら1年ほど前の日付が載っていた。
かぜき「1年前に・・・マジョフェミルさんが居なくなってすぐに・・・。死んじゃってたんだ・・・マジョフェミルさん・・・。」
止まらない涙を必死で拭いながら、風木はじっとその札を見つめていた。
“フェミル・バラード”。
それは、忘れもしない名前だった。それは、マジョフェミルが人間界に住むうえでの偽名として使っていた名前なのだが、その名づけの親が風木自身だったからだ。

『ねぇ、マジョフェミルさんってお客さんにもその名前名乗っちゃって良いの?』
『良いのって・・・どうしてだ?』
『だって、名前がまるで魔女みたいじゃん』
『まぁ、そう・・・だが』
『偽名でも名乗ったら?あ、そうだ、私が名前付けてあげるよ!えっとね・・・。“フェミル・バラード”なんてどう?』
『“フェミル・バラード”?』
『マジョフェミルさんのフェミルに、バラード。』
『バラードは何処から来たんだ?』
『私が好きな本の主人公の名前だよ〜』
『そうか・・・“フェミル・バラード”、か・・・。』

懐かしい、1年以上前の会話。あれから随分と時は経ったけれど、その会話は鮮明に思い出すことが出来た。
かぜき「マジョフェミルさん・・・会いたかったよぉ・・・。私、最後のもう一度だけ、マジョフェミルさんと、会いたかったよぉ・・・。」
その時だった。風木の視界に、何かが映った。
かぜき「・・・虫かご?中に何か・・・居る?」
十字架の後ろに、一辺20センチくらいの立方体の形をした虫かごのような檻があった。そして、その中に、何かの影が見えた。風木は、懐中電灯の光をゆっくりとそれに当てた。
かぜき「あ・・・あ、あ!!!」
その小さな檻の中で眠っていたのは、灰色の小さな生物だった。
かぜき「ぺルル・・・あんた、ぺルルでしょ!!」
風木がそう叫ぶも、返事が無かった。
かぜき「ぺルル、ぺルル!!!」
ぺルル。そう、それは風木の妖精の名前。マジョフェミルが居なくなったとき、マジョフェミルの妖精を見つけたと言って探しに行ったっきり、戻ってこなかった、風木の妖精だった。
かぜき「ぺルル、返事をして!!」
ぺルル「か・・・ぜき?」
かぜき「ぺルル!!」
ぺルル「風木、なの・・・ウソ、これは・・・夢?」
かぜき「ぺルル、違う、夢じゃない、これは夢じゃない!」
ぺルル「どうしてここに風木が・・・。」
かぜき「リックスに・・・オルテガに教えてもらったの。」
ぺルル「オルテガに・・・?」
風木は黙って頷いた。
ぺルル「そっか・・・。」
かぜき「それより、ペルル、どうしてこんなところに・・・?」
ペルル「オルテガがね、こっそり面倒見てくれてたのよ、ここで。」
かぜき「え?」
ペルル「『今は事情があって風木の元へ帰すわけにはいかないが・・・いつかきっと帰してやるから、それまでここで我慢してくれ』って・・・。」
かぜき「オルテガ・・・。」
ペルル「でも・・・会えて良かった・・・。」
かぜき「ペルル・・・私もだよ。」
ペルル「ねぇ、私、風木のところに・・・もう、風木のところに戻っても良いの?」
かぜき「うん、当たり前じゃん。あ、そこから出してあげるよ。じっとしてて。」
風木はポロンを構えた。
かぜき「ペルオ〜ルタント フィラディリオン!檻よ、開いて!」
すると、檻は静かに開いた。それと同時に、ペルルは檻から飛び出して風木の胸元に飛びついてきたのだった。
ペルル「風木・・・ありがとう、私、絶対会えるって・・・信じてた。」
かぜき「ペルル・・・。」
ペルル「本当に・・・ありがとう。」
風木は、その暗い洞窟の中で、いつまでも止まらない涙を流しながら、再会の歓びに浸っていた。

***

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