まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第48話『風の舞う夜の丘で』
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パディオ「ドレイク・・・俺の親父か?」
オルテガ「あぁ、そうだ。お前の親父さんだ。パディオと出会う10年も前のことだ。その時にはドレイクさんはもう死んでいたがな・・・。」
パディオ「しかし、俺は父の死に際にその“悪魔になる薬”を貰ったとき、“悪魔になる素質の無い奴にこの薬を飲ませても無駄だ”と教えられた。つまり、悪魔に等しい悪しき心を持った者でないと、とな。今のお前の話を聞く限りでは・・・とてもお前にその素質があったとは思えん。」
オルテガ「そう・・・どうやら俺にはその素質が無かったらしい。だから、悪魔になりきることが出来なかったのさ。」
パディオ「・・・貴様、まさか・・・。」
メアリー「二重人格・・・。」
オルテガ「・・・ご名答。悪魔になりきることが出来なかった俺は・・・。あの薬を飲んだその日から・・・2つの人格を持つことになった。悪魔である“オルテガ”としての人格と・・・魔法使いである“リックス”としての人格との2つをね。俺も初めはどうして2つの人格を持つことになったのか、分からなかった。しかし、この間俺たちで人間界侵略の話をしていて・・・。その薬を飲んでも“悪魔になる素質”が無いと悪魔になることは出来ないという話を聞いたとき、やっと俺に2つの人格が生じた理由がはっきりしたんだ。」
パディオ「二重人格・・・それでさっきまで“オルテガ”だったのに・・・突然“リックス”の人格に戻ってしまったお前は・・・俺の攻撃から風木を守りに入ったってわけか・・・。」
かぜき「オルテガ・・・。」
オルテガ「風木・・・すまなかったな、俺が無力であるがためにこんなことに巻き込んでしまって・・・。」
風木は一生懸命首を横に振って否定してみせる。
かぜき「私は・・・オルテガに会えて良かったと思ってるもん・・・。」
オルテガ「風木・・・。」
ふいに、オルテガは風木の頭を撫でた。突然のことに驚いた風木だったが、すぐにその瞳からは涙が零れ落ちた。
オルテガ「お前は・・・本当に良い奴だよ。だから・・・せめてもの償いとして、俺の“オルテガ”としての人格が戻ってくる前に・・・こいつをなんとかしてみせる。」
そう言うとオルテガは・・・いや、“リックス”はパディオの方を睨みつけた。
かぜき「ダ、ダメだよオルテガ、そんな体で・・・!!」
リックス(オルテガ)「風木、危ないから下がってろ。それに、俺は・・・“オルテガ”じゃない。」
次の瞬間、リックスはパディオに向かって走っていった。
パディオ「そんな体で・・・俺に勝てるとでも思っているのか?」
パディオの右手がリックスの方に向けられた。
かぜき「ダ、ダメ!助けなきゃ、オルテガを・・・リックスを助けなきゃ!」
慌ててポロンを構えると、すぐに呪文を唱える。
かぜき「ペルオ〜ルタント フィラディリオン!何でも良いからオルテガ、リックスを助けて!!」
しかし、風木の唱えた魔法は発動されない。
かぜき「な、なんで、どうして何も起こらないの!」
どれみ「もしかして、マジョラッタが言ってた、魔法を制御する機能にひっかかって・・・。」
かぜき「そ、そんな・・・どうして・・・私には正義の心が足りないの?」
風木はポロンを両手で構えたまま叫んだ。
かぜき「出てよ、魔法!リックスを助けて!!」
突然、風木の体から強烈な白い光が放たれた。
どれみ「え、一体何?何が起こったの!?」
パディオ「な、何だぁ!?」
リックス「か、風木!?」
突然のことに、パディオもリックスも光り輝き始めた風木に目を奪われた。
テイル「眩しい・・・凄い光だ・・・。」
メアリー「風木の体が突然光りだして・・・。」
こがね「もしかして・・・大変・・・魔力が、暴走してる!!」
あいこ「何やって、魔力が暴走?」
しずく「このポロンを使ってる限りは魔力が暴走しないんじゃなかったの?」
こがね「ある程度はね、だけどそれでも暴走してしまう危険性は0じゃないってマジョラッタが・・・。」
ももこ「Oh my god!早くなんとかしなくちゃ!!」
かぜき「リックスを・・・助け・・・て・・・。」
強烈な白い光に包まれた中で、風木はただそれだけを思っていた。そして、薄れていく意識の中で、風木はさっきの台詞を確かにまた聞いたのだった。

『風木は・・・なぜ魔女見習いになろうと思ったんだ?』
かぜき(あ・・・オルテガの声だ・・・。)
『え?何故かって・・・何でだろうね。』
かぜき(この声は・・・私?)
『特に理由は無いのか?』
『いや・・・ううん、あるよ。』
『どうしてなんだ?』
『魔法って使えたら便利でしょ?それに、いろんな人を助けられそうじゃん。私の家ってさ・・・お父さんが仕事してないから、結構貧しくて・・・。そのせいでいろいろと苦しいこともあって・・・。そんな時、いつも魔法が使えたらなぁ、って思ってた。だから、もしも苦しんでいる人を見つけたときに、魔法で助けてあげることが出来たらステキだなって・・・そう思ったの。』
『そうか・・・なかなか立派な理由だな。』
『えへへ。そう?』
『じゃぁ、もし俺が・・・俺が苦しい時、風木は俺を助けてくれるのか?』
『もっちろんだよ!私が魔法で絶対に助けて見せるよ!』

かぜき(そう・・・絶対に助けてみせるって・・・オルテガと誓った・・・。だから、助けなきゃ・・・オルテガの正体はリックスって言う魔法使いだった・・・でも、そんなこと関係無い、助けなきゃ・・・リックスを助けなきゃ!!)

風木の体からあふれ出た光は次第に強くなっていく。その光は、東の空にようやく顔を出し始めた“笑う月”のそれよりも明るかった。そして、暴走した魔力によるためか、ゆっくりと風木の体は浮上を始めた。

***

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