まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第48話『風の舞う夜の丘で』
2/4
リックス「調子はどうだ?」
魔女「おかげさまで、大分良くなったよ。」
リックス「そうか、しかしすまないな。」
魔女「え?」
リックス「近かったとはいえ、こんな死神が運営する物騒な病院に連れてきてしまって・・・。」
魔女「そ、そんな・・・私は嬉しかったです。見ず知らずの私に親切にしてくれて・・・本当に嬉しかった。」
リックス「そうか・・・そうだ、自己紹介がまだだったな、俺の名前はリックス、見ての通り、魔法使いさ。」
魔女「リックス、さん・・・あ、あの・・・実は・・・お願いがあるんです。」
突然話題を変えるようにその魔女が言うと、リックスから目を逸らし、俯きながら言った。
リックス「え、どうしたの?そんな急に改まったりして・・・。」
魔女「もし、もし私が退院したら・・・私と・・・私と・・・。」
そこで、その魔女は口をつぐんだ。そのため、病室が一瞬しんとなった。
魔女「私と・・・付き合ってもらえませんか?」
魔女はその美しい顔を真っ赤にしながら、言った。
リックス「え・・・?」
リックスは突然のことに驚いた。そして答えに戸惑った。なぜなら・・・。
リックス「魔女界は今・・・魔法使い界と交流を絶っている・・・。そのことを承知の上で君は言っているのか?」
魔女「私は・・・それでも構いません。いっそのこと、人間界に行けば、誰も追っては来ないでしょう・・・。」
リックス「人間界・・・。」
魔女「ご、ごめんなさい、変なこと言っちゃって・・・。どうしちゃったんだろう、私、あの・・・。」
突然顔を赤くしながらあたふたと慌てだした彼女を見て、リックスは真剣な表情で答えた。
リックス「行こう、人間界に。」
魔女「・・・え?」
リックス「君となら・・・喜んで・・・。」
魔女「本当・・・ですか?」
リックスは黙って頷く。
魔女「ありがとうございます。あ、まだ・・・名前、言ってませんでしたよね?私の名前は・・・。」

その時の彼女の表情は、薄暗い部屋の中、頼りなく光る白熱灯の光に照らされた中に燦々と輝いて見えた。

***

オルテガ「そうして、俺はその魔女と共に人間界にやってきた。しかし、ある日、ちょっとしたことから彼女とケンカしてね・・・。怒った彼女は魔女界に帰っていってしまい・・・。付き合い始めてわずか1年ほどで彼女と別れることになった。」
どれみ「たった1年で・・・。」
オルテガ「最初は俺も頭に来ていてね・・・なんとも思っていなかったが・・・。次第にあのケンカの原因は俺の方にあったんじゃないかって思うようになった。しかし・・・もう、どうしようも無かった。当時まだ魔法使い界と魔女界の国交はまだ回復していなかった・・・だから魔女界に帰った彼女に謝りに行くことも出来なかった。俺はただ・・・泣きたかった。だが何も出来なかった。つらかった。そんなとき、俺は奴と出会ったんだ。」

***

人間界のとある民家に、リックスの姿はあった。
リックス「あれは俺が悪かったんだ・・・俺があんなことを言わなければ・・・彼女は怒って魔女界に帰ることもなかった・・・。」
ただ後悔の日々に明け暮れていたリックスの背後に、その男は知らないうちに立っていた。
???「お悩みかね?」
リックス「・・・あなたは、いつの間にそこに!?ここは俺の家だ、勝手に入ってくるな!」
???「お前の家?お前は魔法使いだろう、この人間界に住んで何をしているんだ?」
リックス「な、どうして俺が魔法使いであることを・・・貴様、人間じゃないな・・・。」
???「さよう、私はドレイク、4000年の太古に滅んだ悪魔界の住人の生き残りさ。」
リックス「悪魔、だと?ふざけるな。」
ドレイク「信じる、信じないは自由だ。しかし、お前の力と引き換えに・・・。お前の悩みを解決してやる。どうだ?」
リックス「俺の・・・悩みを?」
ドレイク「これを飲めば・・・全てを忘れられる。代わりに、お前は魔法使いではなく、悪魔になってしまうがな。」
ドレイクと名乗る人物は、何処からとも無く取り出した黒い粉の入ったビンを見せながら言った。
リックス「悪魔に・・・?」
ドレイク「とにかくこれを飲めば楽になれる。どうした、何を躊躇している?飲むだけで良いのだぞ?」
リックス「しかし・・・俺は・・・。」
ドレイク「ほう・・・女にフラれたのか。」
リックス「なっ!?」
ドレイク「俺にはお前の心を読む力がある・・・。だから、俺にはお前が苦しいことがよく分かるのさ。さぁ、飲め・・・。早く・・・。」
リックス「俺は・・・。」
しかし、リックスの意思に反して、彼の右手はその“ビン”へと伸びていた。気がつけば、その黒い粉を飲み干していた。そして、彼の背中には黒い翼が生え ていた。
ドレイク「ほう、上等だ・・・“悪魔になる薬”、完璧だな・・・。お前は今日をもって魔法使いではなくなった。もうお前は“リックス”じゃない。今日から“オルテガ”と名乗れ。」
ドレイクは、ニヤリと微笑みながら言った。

***

次のページへ
リストに戻る