まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第45話『風木の勇気』
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しばらくした後、ぽっぷは海岸沿いの道を歩いていた。学校から真っ直ぐ家へ帰ろうとしたはずなのに、いつの間にか海のそばまで来て いた。しかし、当のぽっぷは気付かないのか、トボトボとその砂浜を歩き続けている。赤くなった西日に照らされ、ぽっぷの影は砂浜の上に長く伸びていた。
ぽっぷ「風木ちゃん、どうしちゃったんだろう・・・。」
もう、そのことしかぽっぷの頭には無かった。それ以外何も考えられないで居た。とにかく心配で、心配で仕方が無かった。そんな調子で、ずっと歩いていると、日は暮れ、東の空には一番星が輝きはじめていた。
辺りが次第に薄暗くなっていく。暗くなっていくことで、やっと気付いたのか、ぽっぷははっと我に帰った。
ぽっぷ「悩んだって仕方ないじゃん、風木ちゃんと直接話しをしなくちゃ、悩んだって意味無いよ。」
そう呟いたぽっぷの目に、1件の建物が入ってきた。
ぽっぷ「え、魔法堂・・・書店?」
そう、それは風木がいつも通っていた、美空市港の近くにある魔法堂だった。美空小学校から2キロ近くもある美空市港の辺りまで歩いてきていたことに、ぽっぷはこの時やっと気がついた。それと同時に、ある言葉をぽっぷは思い出していた。

『魔法堂は、悩みを持った人を導く』

その言葉どおり、ぽっぷは悩んでいた。悩んでいたからこそ、ここへたどり着いたのだとぽっぷは確信した。ぽっぷは、とりあえず頷いてみせると、迷うことなく魔法堂書店の中へ入った。
中は真っ暗だった。しかし、ぽっぷは構う事無く中へと入っていった。そして、そこに1人の少女が居ることを発見した。
ぽっぷ「風木ちゃん・・・。」
かぜき「ぽっぷちゃん・・・。」
驚いたように言う風木の頬には、涙が流れた跡が見られた。
ぽっぷ「泣いてたの?」
かぜき「・・・。」
ぽっぷ「あのさ・・・風木ちゃん、何かあったの?」
かぜき「別に・・・何もないよ。」
ぽっぷ「嘘、だって、風木ちゃん、昨日から変だもん。ねぇ、どうして隠すの?良かったらさ・・・話してくれないかな?」
しばらくの沈黙の後、ようやく風木は口を開いた。
かぜき「二つの風の話・・・知ってるでしょ?」
ぽっぷ「うん、お姉ちゃんから聞いた。」
かぜき「どれみさんは・・・私をその二つの風のうちの一人だって言ってた。でもさ・・・よく考えたら、私、ただの女の子だよね?なのに、悪魔と戦うの?だたの女の子が?そんなこと、私に出来るのかって考えたら・・・。考えれば考えるほど、そんなの無理だって思いが強くなってきて・・・。」
ぽっぷ「無理じゃないよ、風木ちゃんならきっと大丈夫だよ。」
かぜき「無理じゃないなんて、どうして分かるのよ!」
ぽっぷ「そ、それは・・・。」
かぜき「私なんかが悪魔と戦おうとするなんて・・・ただの足手まといになるだけだもん。」
ぽっぷ「足手まといだなんて、そんなこと・・・。」
かぜき「私さ、気付いたんだ。今まで、自分が弱虫だっていう現実から逃げてたって。今まで強がって、自分は弱くないんだって言い聞かせてただけってことにさ。オルテガが居なくなって、やっと気付いたんだ。マジョフェミルさんが居なくなったとき、オルテガのおかげで立ち直れた。私がつらい時はいつもオルテガが助けてくれた。けど、私はつらいことを自分の力で乗り越えたんだって勘違いしてたみたい。だって・・・オルテガが居なくなっただけで・・・こんなに不安になるんだもん。マジョフェミルさんが居なくなったとき、オルテガが私に言ってくれたんだ。『お前のことは死んでも守る』って。だから、ずっと頼りにしてたのに・・・。居なくなっちゃって・・・だから、ダメだよ。私には、無理だよ。」
ぽっぷ「風木ちゃん・・・。」 何を言って良いのか、分からなかった。ただ、励まそうとしても、なんと言って励ませば良いのだろうか。それが分からなかった。そんな自分を悔しく思っていた。─と、その時だった。
???「人間は、誰だって弱虫なんじゃないかな、風木ちゃんに限らずさ。」
ぽっぷと風木は、その声のする方を振り向いた。
ぽっぷ「お姉・・・ちゃん。どうして・・・。」
どれみ「ぽっぷの帰りが遅いから、メアリーさんに頼んで魔法で探してもらったんだ。」
どれみの横には、メアリー=ヒルスの姿があった。そして、どれみは風木の方へ歩み寄ると、優しく語りかけた。
どれみ「風木ちゃん。失敗を怖がっちゃ、ダメだよ。」
かぜき「失敗を・・・怖がる?」
風木は瞳からあふれ出した涙を拭いながら、やっとのことでそう言った。
どれみ「みんなの足でまといになることなんて、気にしなくても大丈夫ってことだよ。私なんてさ、いっつもみんなの足引っ張ったりしてさ・・・。けど、みんな優しいから、私のこと怒ったりしないよ。そりゃぁ、足を引っ張ることが良いことだとは言わないけど・・・。人間誰だって失敗はあるし、足を引っ張っちゃうことだってあると思うんだ。」
メアリー「私もどれみの言うとおりだと思うわ。失敗は成功の元、とも言うしね。」
どれみ「それに、私たちには風木ちゃんの力が必要だからさ・・・。」
かぜき「私の・・・力が?」
どれみ「そ、だから、お願い、私たちに力を貸して欲しいんだ。」
かぜき「・・・。」
ぽっぷ「風木ちゃん・・・。」
メアリー「風木ちゃん、ほら、勇気出して。」
少しの間をおいて、風木の口が動いた。
かぜき「すいません、心配かけて・・・オルテガが居なくても・・・私、頑張ってみます。」
どれみ「・・・そっか、ありがとね。」
そう言ってどれみは風木に微笑みかけた。
ぽっぷ「・・・お姉ちゃんには勝てないや。」
どれみと風木のやりとりを見ていたぽっぷがぽつりと呟いた。
どれみ「え、何?ぽっぷ、何か言った?」
ぽっぷ「あ、ううん、何でも無いよ。」
どれみ「ちょっと、言いなさいよ!」
ぽっぷ「だから何でも無いってば〜。」
そんな言い合いをするどれみとぽっぷを見つめながら、風木はふと思っていた。
かぜき(どうして気付かなかったんだろう・・・オルテガ以外にも、私にはちゃんと味方してくれる人が居るってことに・・・)

【笑う月の晩まで あと 12 日】

***続く


次回予告
どれみ「ついに、悪魔の本拠地、ロンドンへ行くことになった私たち。こがねちゃんがマジョラッタからもらってきた新しい魔女見習い服もあるし、準備万端?次回、まだまだ!?おジャ魔女どれみ、『最初の砦、ロンドン』、ドキドキピース明日もひ〜かれ♪」
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