まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第44話『後戻りなんて必要ない!』
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まだ冬の寒さの残る美空市の誰も居ない海岸。いや、正確に言えば、誰も居ないというのは誤りで、そこには1人の少女が居た。
かぜき「オルテガ・・・何処行っちゃったんだろう・・・。」
波は比較的穏やかで、耳をすませると、心地よい波の音が聞こえてくる。水野風木は陸風に髪をなびかせながら、その波の音を聞いていた。
かぜき「オルテガ、そのうち戻ってきてくれる・・・よね?」
風木はの問いかけに対し、返ってくるのは波が波止場に打ち寄せる音ばかり。しかし、風木はその波の音が、自分を励ましてくれているような気がしてならなかった。
かぜき「きっと、戻ってくるよ。」
何故か、そう思わずには居られなかった。いや、何かが風木にそう思わせたのだろうか。そうだとしたなら、何が?その答えは少なくとも風木には分からなかったが、おそらくオルテガと過ごした日々の思い出が、そうさせたのだろう。
かぜき「きっと、幻獣界に急用が出来たんだよ、きっと・・・。」
そう信じることしか、風木には出来なかった。しかし、現実とは非常なものであった。風木がずっとオルテガは幻獣界の住人であると信じていたこと自体がすでに風木を裏切っていたのだから・・・。
そうとも知らず、風木は今日もオルテガの帰りを待っていた。美空市港の近くにある、1年半前まで魔法堂書店という看板の下がっていたその建物で、今でもオルテガの帰りを待ち望みながら─。

***

場所は変わり、ここはイギリス・ロンドンのとある場所。
パディオ「・・・どうやら動き始めたようだな。」
グルモス「パディオ、どうした?」
パディオ「例のガキどもに・・・この場所を感づかれたようだ・・・。」
パディオは、水晶玉のようだが、何処か少し違った、黒いガラスのような球体を見つめながら言った。
グルモス「・・・本当か?」
パディオ「あぁ。」
グルモス「そうか、あのガキどもも大したものだな。」
パディオ「おいおい、笑い事じゃないぞ。」
グルモス「ふん、悪いな、つい・・・。」
パディオ「それにしても奴ら、予想以上だ。」
グルモス「な〜に、所詮ガキはガキだ、ほっておけ。」
パディオ「いや、出る釘は打たねばならない。予言書に書かれていた連中だ。予言など信じているわけではないが・・・。気味が悪いほど、俺たちはあの予言書どおりの行動をとっている。だから、少々不安があってね。」
グルモス「自信家のパディオが・・・珍しく弱気だな。」
パディオ「弱気なわけではない。弱者は必ずしも弱いとは限らない、ただそれだけのこと。」
グルモス「・・・どういう意味だ?」
パディオ「意味ぐらい自分で考えろ。」
パディオはそう言って、今居る部屋を出た。
グルモス「・・・出る釘は打つ、か。まぁ用心に越したことは無いのは確かだな。」
グルモスはそう呟くと、窓に下がっているブラインドの隙間から外をのぞき見た。窓の外には、ちょうど月が西の空へ沈もうとしていたところだった。
グルモス「今夜もまだ月は笑っていない、か・・・。」
グルモスの呟く声が、しんとした部屋に響いた。空に上っていたのは、俗に言う三日月とは左右対称の“27日の月”だった。その月よりさらに西へ目を移すと、日の入りを迎えたばかりの太陽によって、うっすら空が赤くなっていた。
グルモス「月が笑うのはまだまだ先のようだな。」
その時、ついさっきパディオが部屋を退出した後、閉まったはずの扉が再び開いた。入ってきたのは、オルテガだった。
グルモス「なんだ、オルテガか・・・。」
オルテガ「グルモス、この部屋で1人で何をしてたんだ?」
グルモス「いや、特に何も。」
オルテガ「そうか・・・。月はまだ笑わないのか?」
グルモス「あぁ。笑うどころか、新月もまだ迎えていない。」
オルテガ「そうか・・・。」
グルモス「・・・怖いのか?」
オルテガ「な、急に何を言う、グルモス。」
グルモス「長い付き合いだ、俺にはわかる。」
オルテガ「・・・。」
グルモス「何、まだ月が笑うまではだいぶある。それまでに心を落ち着かせとけよ。」
オルテガ「あ、あぁ。」
グルモス「俺たちはたったの3人しか居ないんだ。誰か1人が欠ければ、その時点で魔女界やその他の連中に捕まってゲームオーバーだ。」
オルテガ「分かってる・・・大丈夫だ。」
グルモス「・・・なら良いんだがな。じゃぁ、俺はもう寝るぜ。」
グルモスはそういうと、部屋を後にした。オルテガはそれを確認すると、さっきまでグルモスが外を覗いていた窓の所までやってきた。そして、グルモスと同様にして、ブラインドの隙間から窓の外を見た。27日の月は気味悪く地上を睨んでいた。そして、静かにこの地上を照らしていた。

【笑う月の晩まで  あと 18 日】

***続く


次回予告
どれみ「ついに判明した、悪魔たちの居場所。みんな、準備は良い?」
さつき「OKよ。」
しずく「私も大丈夫よ。」
ぽっぷ「ちょ、ちょっとお姉ちゃん、待って、風木ちゃんが・・・!!」
どれみ「次回、まだまだ!?おジャ魔女どれみ、『風木の勇気』、ドキドキピース、勇気をと〜もせ♪」

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