まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第38話『真冬に咲いたコスモス』
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しずく「おはよう!」
しずくが2年2組の教室へ着いたとき、まだその中には3、4人の生徒しか来ていなかった。
りな「あ、おはよう、しずくちゃん。」
そう答えたのはクラスメイトの植田理奈(うえだ りな)だ。
しずく「理奈ちゃん、おはよう。」
りな「あれ、どうしたの、その手袋、また自分で作ったの?」
しずく「うん、昨日完成したとこなんだ。」
しずくは白い手作りの手袋を理奈に手渡して見せた。
りな「うわぁ、すごい、そのマフラーも手作りなんでしょ?」
しずく「うん、こっちはだいぶ前に作った奴だけど。」
りな「良いなぁ、自分でこんなの作れるなんて・・・。」
しずく「作り方覚えたら結構簡単だよ、理奈ちゃんもやってみたら?」
りな「えぇ、私には無理だよ。」
だいき「あれ、おまえら、何の話してるんだ?」
突然話に入ってきたのは、クラスメイトの男子、木下大樹(きのした だいき)だった。
りな「見てよ、この手袋。しずくちゃんの手作りなんだよ。」
だいき「え、手作り?こんなの人の手で作れるもんなの?」
りな「ね、凄いよね?」
しずく「そんなこと無いよ。」
だいき「あ、もしかしてこのマフラーもか?」
しずく「うん、そうだよ。」
だいき「ふうん、凄ぇなぁ、相川ってそんなこと出来るんだ、へぇ〜。」
木下は興味あり気につぶやく。

***

いろは「はぁ、暖かい。」
こがね「どうしたんですか、そのマフラー・・・?」
いろは「これ?これは昔まだ私が人間界に居た時にしずくから誕生日プレゼントとしてもらったマフラーなんだ。」
こがね「しずくちゃんから?」
いろは「そう、しずくから。」
こがね「そうなんですか・・・。今でも大切に使っているんですね。それを知ったらしずくちゃんきっと喜びますよ。」
いろは「そうかな。そういえば、しずく、元気にしてるかなぁ。」

***

しずく「いろはさん、元気でやってるかなぁ。」
どれみ「元気でいると思うよ、きっと。」
さつき「こがねちゃんと一緒に居るんだし、大丈夫なんじゃない?」
しずく「そうだよね・・・。」
さつき「あ、じゃあ、またね。」
学校からの帰り道いつもの場所でさつきと別れた。
どれみ「ばいば〜い、また明日ね。」
どれみとしずくは手を振ってさつきを見送る。
しずく「そういや、もうすぐ中学3年だね・・・。」
どれみ「ほんと、ついこの間入学したばっかりなのに、来年にはもう卒業するんだね・・・。」
しずく「どれみちゃんは何処か行く高校、考えてるの?」
どれみ「ううん、美空高校かなぁ、家からもまぁ近いし。」
しずく「そっかぁ・・・。」
どれみ「しずくちゃんは?」
しずく「私?あんましよく考えてないんだ、実は。」
どれみ「じゃあさ、じゃあさ、一緒に美空高校に行こうよ!」
しずく「美空高校に?そうだなぁ・・・どれみちゃんと一緒なら行こうかな・・・。」
どれみ「ほんと?約束だよ!」
どれみが小指を差し出す。
しずく「うん、わかった!」
しずくそう言ってはどれみと指切りを交わした。
しずく「それじゃあ、また明日ね!」
どれみ「うん、ばいばい!」
どれみのその声を聞いてから、しずくは自分の家の方へ走っていく。どれみも、それを見てから自分の家を目指して歩き始めた。

***

しずく「ただいま〜。」
ちさと「おかえりなさい、寒かったでしょ?」
出迎えた母、千里は何気なく尋ねた。
しずく「うん、今日も凄い冷え込んでたよ。」
ちさと「そう、温かい紅茶を入れたけど、飲む?」
しずく「飲む!あ、じゃあ私、着替えてくるね!」
しずくはそう言って制服を着替えるために自分の部屋を目指した。しずくは、部屋に入るとまず制服から私服に着替えた。そして、鞄を机の上に置いたとき、ふと何も飾られていない花瓶が目にとまった。
しずく「あっ・・・。」
しずくはその花瓶に触れてみた。机の上に置かれているそれは、何の変哲もない陶器製の花瓶だった。そして、その何でもない花瓶が、今になってしずくの忘れていた記憶を蘇らせた。

***

7年前の冬。そこはフランスのマルセイユ。
いろは「うわぁ、寒い〜。」
しずくからもらったマフラーを首に巻いて、いろはが言う。
メアリー「寒いよね、ほんと。風邪引いちゃいそうだよ。」
しずく「フランスの冬は本当に寒いですよね・・・。」
いろは「まぁでもさ、パリとかよりは南だしね、フランスの中でもまだ暖かい方だと思うよ。」
しずく「これでですか〜?」
メアリー「あはは、確かに、でもそんなんじゃロシアには住めないわよ。」
しずく「とにかく寒いのは嫌いです。」
いろは「そうね、じゃあさしあたり、私の家まで行こう、外よりは絶対暖かいからさ。」
メアリー「賛成。行きましょ。」
外は寒いので、3人はとりあえずいろはの家に行った。

しずく「はぁぁ、暖かいです〜。」
メアリー「あ、見てみて!」
突然、曇った窓の外を見ていたメアリーが言った。
いろは「どうしたの?」
メアリー「ほら、あの山、すごい雪かぶってる。」
しずく「うわぁ、凄い雪、寒そうですね。」
いろは「あの山は雪が積もるくらい寒いんだ。」
メアリー「あ、ねぇ、いろは、知ってる?」
いろは「何が?」
メアリー「あの山にはね、雪の降る寒い季節になると、一輪のコスモスが咲くんだって。」
いろは「へぇ、そうなんだ。」
メアリー「それでね、その花を持ってるとね、願いがひとつ叶うんだって。」
いろは「本当!?その花見てみたい!」
メアリー「ね、欲しいよね、私も。でも、見つけるの大変だよね、きっと。」
いろは「そうだよね、雪の降るぐらい寒い時に咲くんでしょ?」
メアリー「探してるうちに寒くて凍え死んじゃうかもね。」
いろは「やめてよ、でも願いがひとつ叶うのか、凄いなぁ。」
しずく「いろはさん、コスモス欲しいんですか?」
いろは「そりゃぁね、何でもひとつ願いが叶うなら、是非とも欲しいよ。」
しずく「そうですか・・・。」
しずくは頷いてみせ、そして呟いた。
しずく「願いがひとつ叶う・・・かぁ。」
しずくの頭にはその言葉が何度も何度も繰り返し響いていた。

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