まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第25話『森の力、炎の力』
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ももこ「ふわぁあ、眠い・・・。」
 ももこが目を覚ましたとき、ここ、ニューヨークはまだ真っ暗だった。
ももこ「今何時だろう・・・。」
 ももこは薄暗い部屋を見回して目覚まし時計を探した。時計は2時過ぎを指していた。それを見て、ももこはベッドから起き上がり窓のカーテンを開けた。窓の外には、月が南からやや西へ傾いたところで笑っていた。
ももこ「笑う月・・・か、懐かしいな。」
 ももこはそう呟くと、カーテンを閉め、そして着替えてこっそり家を後にした。

***

ももこ「うわぁ、寒いや。もっと厚着してくるべきだったかなぁ・・・。あの時に森羅さんを神殿に連れて行けたら良かったのに・・・。」
 ももこが森の精霊、森羅(森羅)と出会った日、その日の夜は月の笑う晩だった。それは森羅が言ったことだったが、その夜ももこが森羅と出会った森へ行くと、そこに森羅の姿はなかった。
ももこ「あの時どうして森羅さん来なかったのかな。まさか今日も来ないなんてことは・・・。」
 ももこは寒い体をこすりながら、森羅と出会ったあの森へと向かった。しばらくして、その森に到着した。湖の方から冷たい風が吹き、その風が木々を揺らす音は、薄暗い森の不気味さをよりいっそう引き立てていた。
ももこ「How cold...」
 そう呟きながら、ももこはスカートのポケットから何か棒状のもの─スティックを取り出した。ももこはそれを伸ばすと、光を確認した。
ももこ「・・・光らない、ということは近くに精霊が居ないってこと?」
 冷たい風は容赦なく吹き付けている。
ももこ「森羅さん何処に行ったんだろう・・・。」
 ももこはひっそりと静まりかえったこの森に、誰かが現れることの方が不思議に思えてきていた。
ももこ「帰ろうかな・・・。」
 ももこが諦めてスティックをしまおうとしたその時だった。
ももこ「え・・・。」
 かすかに、一瞬だけスティックが青白く光った。しかしその光は冷たい風にかき消されるかのようにすぐに消えた。
ももこ「消えちゃった・・・でも、今スティックが・・・。」
 ももこはスティックを持ったまま走り、森羅を探し始めた。そして湖の方へ走っていった時、スティックに再び光が灯った。
ももこ「また光った・・・。」
 しかも、今度の光はすぐに消えなかった。ももこはそのまま辺りを見回し、スティックの光を見ながら走り回った。ももこの体が温まるぐらいに走り回ったころ、ももこは湖の前にたどり着いていた。スティックが放つ光は、一段と増していた。
ももこ「もう、すぐ近くに居るのかな・・・。」
 ももこは辺りを見回すが、精霊どころか人影すら見当たらない。ももこはふと、湖の方へ目をやる。
ももこ「まさか、森羅さん、この湖の中に!?」
 その時、ももこの背後で突然ガサガサと木々が揺れる音がした。ももこは驚いて振り向いた。そこには見知らぬ女性が一人立っていた。
ももこ「あ、あなたは・・・。」
???「お前は・・・飛鳥ももこか?」
ももこ「え、どうして私の名前を知っているんですか?」
 ももこは突然のことに驚いた。
???「森羅から聞いた。そして今日はお前と会いに来た。」
ももこ「森羅さんから?」
???「とにかく落ち着いて順を追って話すわ。まず、私の名前は菜月。炎の精霊だ。」
ももこ「炎の精霊?」
菜月「そう。そして私は日本で私たち精霊を探している子の1人と会った。確かその子の名前は藤原はづき・・・もしかして知り合い?」
ももこ「はい、知り合いです。」
菜月「そうか。森羅はな、ひと月くらい前の笑う月が昇る日に私と会いにわざわざ日本まできたんだ。その時"精霊を探している者と会った"と言っていた。要するに、お前と会ったっていうことだな。」
 西の空に傾いた笑う月の淡い光がももこたちを照らしている。
菜月「その時私は森羅にあいつら、つまりももこ達なら信用できるから、ももこ達に時空の狭間の神殿へ連れて行ってもらおう、と言われた。しかし私は断った。」
ももこ「な、なんでですか?」
菜月「その時まだ私ははづきとも、ももことも会っていなかった。森羅が認めても、私が認めるとは限らない。会ったことの無い人間を信用するのはあまりにも危険だ。今ははづきという少女と直に対面して、私はお前たちのよさを知ったがな。それはさておき、とにかくそのとき私は断った。そうしたらこいつは仕方なく帰っていった・・・はずだった。」
ももこ「はずっていうのはどういうことですか?」
菜月「その翌日の朝、全身に怪我を負った森羅を日本で見つけたんだ。」
ももこ「え・・・。」
菜月「森羅は日本で何者かに襲われたんだ。」
ももこ「そ、そんな!いったい誰が森羅さんを・・・?」
菜月「わからない。少なくとも森羅が目を覚ますまではな。」
ももこ「ということは森羅さん、ずっと目を覚まさないんですか?」
菜月「あぁ、そうとうひどい攻撃を受けたらしい。いったい誰がこんなことを・・・。」
ももこ「あの、でも、森羅さんって人間界の精霊だから人間界の子供にしか見えないんじゃ・・・。」
菜月「・・・確かにそうだな。しかし、子供がこんなことをするとは考えにくい。だとしたらどうして森羅は・・・。そういえば・・・。」
ももこ「どうかしたんですか?」
菜月「い、いや、精霊というのは寿命が来るまでは絶対に死なない体だ、心配には及ばない。」
 菜月は何か話を誤魔化したように答えた。が、ももこはその事に気づかなかった。
ももこ「そうなんですか・・・。」
 ももこは少し安堵の表情を見せる。
菜月「・・・あのことはこいつたちに言うべきだろうか・・・。」
ももこ「え?」
菜月「何でもない、独り言だ、気にするな。それより、ここはもう夜が明ける。森羅を神殿に連れて行きたいなら・・・そうだな、日が昇って午前10時になったらここへ来い。日本を経由して神殿へ行く。分かったな。」
ももこ「わ、わかりました。」
菜月「ならそれまで家に帰って寝ておけ。幸い今日は日曜日とかで学校が休みの日だろう。」
ももこ「はい。」
菜月「用件はそれだけだ。じゃぁ後でまた会おう。」

***

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