まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第16話『新しい"風"が吹く!』
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かぜき「ただいま〜。」
???「お帰り。って、あ。」
 家に帰った風木を出迎えたのは6歳年上の姉、水野輝星(かほし)だった。この家の家事は輝星がこなしていて、その時はちょうど晩御飯を調理しているところだった。そして輝星は風木の下げているレジ袋を見て言った。
かほし「どうしたの、それ。あんたお金なんて持ってないでしょ?」
かぜき「優しいお姉さんが買ってくれたの。」
かほし「買ってくれた?本当に?」
かぜき「本当だよ。嘘じゃないもん。」
かほし「そう・・・でもお父さんに見つからないようにしなさい。何言われるか分からないから。」
かぜき「うん。・・・お父さんは?」
かほし「いつも通りよ。家には居ないわ。」
かぜき「そっか。」
かほし「それよりもうすぐ晩御飯できるから、食卓片付けてくれる?」
かぜき「うん、分かった。・・・あれ、そういえばさっきのお姉さん、春風どれみって・・・。」
かほし「どうかしたの?」
かぜき「え、ううん、何でもないよ。」

***

 その日の夜遅く。アパートの裏の線路上を終電が走る音に紛れて扉が開く音がした。
かぜき「そ〜っと行かないとね、お姉ちゃん起こすといけないし・・・。」
 風木はゆっくりと部屋を出ると、終電が通り過ぎないうちに扉を閉めた。風木の目に電車のバックライトの赤い光が眩しく入ってきた。風木はその電車が見えなくなるのを待ってからそっとポケットに手を忍ばせ、何かを取り出した。それは、香水を入れる容器のような形をしていた。
かぜき「行きますか。」
 風木は一言、そう呟くと、それを首の辺りに吹きつけた。すると、なんと魔女見習い服が宙を舞った。
かぜき「プリティ〜ウィッチ〜かぜきっち!」
 風木は小声で呟いてポーズをとる。風木は箒を取り出し、夜の空へ飛び立った。

***

 ここは美空市港近くのとある古い建物。風木はゆっくりその建物に入っていった。中はひっそりとしていて、波の音だけが建物の中に響いていた。
かぜき「オルテガ、居る?」
 風木の声がこだましていた。それだけここは静かなのだった。風木のその声に反応してか、建物の奥の方で、ボワッと火の玉のような灯りが現われた。
オルテガ「風木か?」
かぜき「うん。そうだよ。」
オルテガ「そうか、入って来い。」
 オルテガと呼ばれたその男は奥の部屋へ入っていく。風木は黙ってそれについて行った。
オルテガ「よく来たな。」
かぜき「今日はお父さんもお母さんも居ないから・・・。でもお父さんが帰ってくるまでには帰らないと。」
オルテガ「そうか。お前も大変だな。」
かぜき「大変だけど、マジョフェミルさん達が見つかるまでは私、諦めないよ。」
オルテガ「ふ、それでこそお前だ。」
かぜき「えへへ。そうそう、オルテガ、春風どれみって人、知ってる?」
オルテガ「春風・・・どれみ?」
かぜき「うん。私どこかで聞いたことがあるのよね、その人の名前・・・。」
オルテガ「魔女ガエルの呪いを解いた魔女見習いの名前だろう。」
かぜき「あ、そうだ、その人だ!」
オルテガ「我々の計画に最も邪魔な存在だ・・・。」
かぜき「え、今なんて言った?」
オルテガ「いや、何でもない。それより、その春風どれみがどうかしたのか?」
かぜき「昨日街で会ったの。」
オルテガ「な、何だって?」
かぜき「え、いや、そんなに驚くことないじゃない・・・。」
オルテガ(まずい、まずいぞ・・・二つの"風"が交わる時、それは・・・。)
かぜき「ねぇ、どうしたの?」
オルテガ「あ、あぁ、なんでもない。そんな有名な魔女見習いがこの近くに居たとは思わんでな、驚いていただけだ。」
かぜき「そう?」
オルテガ「そんなことより、お前は早く魔女見習い試験の1級に受かることを急げ。2年も前から魔女見習いをやっているというのに、遅すぎるぞ。」
かぜき「はぁ〜い。あ、そうだ!」
オルテガ「ん、どうした?」
 風木はポロンを構える。
かぜき「ペルオ〜ルタント フィラディリオン!私の部屋の枕元に置いてある箱よ、出て来い!」
 ポンッと音をたてて、小さな箱が出てきた。
オルテガ「何だ、それは・・・?」
かぜき「これは今日持ってこようと思って忘れてたの、はい、オルテガ。」
 風木はそう言ってオルテガにその箱を渡した。
かぜき「プレゼント。オルテガがこの魔法堂に来てから1周年記念。今まで面倒見てくれてありがとう。」
オルテガ「これは・・・。」
かぜき「お金無いから手作りだけど・・・。」
 オルテガがその箱を開けると、中には綺麗な貝の首飾りが入っていた。
かぜき「って、オルテガは男だからそういうの嫌いだったかな?」
 風木が心配そうに言うと、
オルテガ「いやいや、気持ちだけでも十分嬉しいよ。ありがとう。」
 と答え風木の頭を撫でた。すると風木は嬉しそうに笑った。
かぜき「そっか。じゃぁ私そろそろ帰るよ。お父さんが帰ってくる前に。」
オルテガ「そうか、気を付けて帰れよ。」
かぜき「うん、じゃぁ・・・。」
 風木はそう言うと魔法堂を後にした。
オルテガ「ふぅ、いい奴を演じるのも疲れるもんだぜ・・・。」
 オルテガはそう言うと今貰ったばかりのプレゼントを床に落とし、足で踏みつけた。
オルテガ「他の奴等も上手くやっているんだろうな・・・。」
 オルテガはそう呟くと、夜空に浮かぶ三日月を見つめてニヤリと笑った。遠くの方から犬の遠吠えが聞こえてきた。

***続く


次回予告
どれみ「え、小竹が今度美空市に遊びに来るの?ってことは・・・。」
しずく「どれみちゃん何にやにやしてるの?」
どれみ「え、いや、あはは、何でもないよ。次回、まだまだ!?おジャ魔女どれみ、『光れ、妖精の花!』、ドキドキピース未来にひ〜かれ♪」
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