まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第16話『新しい"風"が吹く!』
1/2
???「風木、ちょっとこっち手伝って。」
かぜき「はい、はい。ちょっと待ってよ、お母さん。」
 母親から風木(かぜき)と呼ばれた小学4年生の少女は母の下へ走っていく。
母「はい、この荷物運んでちょうだい。」
かぜき「え〜、重いよ、これ。」
母「つべこべ言わずに運ぶの。」
かぜき「もう、お姉ちゃんに頼んでよ、こういう重いのは。」
 彼女らは美空市のとあるアパートに引っ越して来たところで、荷物を部屋に運んでいるところだった。彼女らは元々美空市港と呼ばれる美空市のはずれにある港の近くに住んでいたが、つい最近になって美空市の市街地に引っ越すことになったのだった。
かぜき「えっと、302号室だから・・・ここだね。」
 風木は荷物をひとまず廊下に置いて、扉を開け、中に入った。中は両親と姉妹2人の4人で暮らすにはとても十分な広さとは言えず、狭かった。
かぜき「ここが新しい家かぁ・・・。前の家はもっと広かったのに・・・。」
 風木はそう呟くとため息をついた。そして荷物を部屋の真ん中に置いてから母のもと へ戻っていった。

***

 数日後のことである。どれみたちはさつきの家で夏休みの宿題をするために集まっていた。そして、夕方になって空が赤く染まった頃になって、さつきが言った。
さつき「さてと、今日も遅いからそろそろ終わろっか。」
どれみ「うん、今日はありがとう、さつきちゃん。」
 どれみは帰り支度をしながら言った。
しずく「本当、助かったよ。」
さつき「助かったって言っても宿題やったのは自分の力じゃない。」
どれみ「でもさつきちゃん居なかったら私わからない問題のところで宿題やるのやめて遊んでたよ、きっと。」
 帰り支度を終えたどれみは立ち上がって玄関にむかいながら答えた。
さつき「それはどれみちゃんのやる気がないだけでしょ。」
どれみ「そ、そんなこと無いってば!」
さつき「あはは、冗談よ、冗談。とにかく、気を付けて帰った、帰った。」
 玄関の前まで来ると、さつきが言った。
しずく「それじゃぁ、また今度ね。」
どれみ「バイバイ、さつきちゃん。」
さつき「バイバ〜イ。」

 2人はさつきの家を出て、黄昏の街を歩いていた。
どれみ「うわ、外はまだちょっと暑いね。」
しずく「本当ね。もう結構暗くなってきてるのに・・・。」
どれみ「あ、そうだ、そこのコンビニでアイス買って帰ろうっと。」
しずく「え、コンビニよるの?」
どれみ「うん、しずくちゃんはどうする?」
しずく「私は・・・。今日財布持って来てないし、早く帰らないといけないから、というわけでごめん、私先に帰るよ。」
どれみ「そっか、それにコンビニはしずくちゃんの家の方向と逆だしね。じゃぁバイバイ。」
しずく「うん、バイバイ。」

 どれみが1人でコンビニに入ると、中に客は主婦らしきおばさんが3人、男の人が2人、小学生ぐらいの女の子が1人いるだけだった。
どれみ「アイス、アイスっと。」
 どれみがアイスを売っているショーケースの前へ行こうとしたとき、ふと目に止まったものがあった。
どれみ「あれ・・・?」
 見ると、女の子が何かを手さげ鞄の中にさり気なく入れているのが見えた。
どれみ(もしかして・・・万引き?)
 後ろ髪を大きなリボンでくくった灰色の髪の可愛らしい少女は何事もなかったかのように店を出ようとした。どれみはそれを店の外に出て捕まえた。
どれみ「ちょっと、ちょっと!」
女の子「え・・・な、何ですか?」
どれみ「その鞄の中に入ってるもの、出しなさい。」
女の子「な、何でですか?」
どれみ「今万引きしたでしょ?」
 女の子は焦ったような表情を見せた。
女の子「ご、ごめんなさい、許してください。盗む気は無かったんです。」
どれみ「ほら、取った物出して。店員さんには黙っておいてあげるから。」
女の子「え?」
どれみ「ほら、早く。」
 そう言われて女の子が鞄から出したものは、たった100円くらいの可愛らしいデザインのシャープペンシルだった。どれみは何も言わずにそれをもって店の中に入ると、すぐに戻ってきたが、手にはレジ袋を下げていた。
どれみ「はい。」
 どれみはそのレジ袋を女の子に手渡した。女の子は驚いたような顔をした。
どれみ「買ってあげたから、もう万引きなんかしちゃだめだよ。」
女の子「え、良いんですか?」
 どれみは黙って頷くと、女の子はとても嬉しそうな顔をして、言った。
女の子「あ、ありがとうございます。」
どれみ「今度から欲しいものはちゃんとお金出して買うこと、分かった?」
女の子「はい。ごめんなさい。でも・・・。」
どれみ「どうかしたの?」
女の子「な、何でもないです。あ、お姉さん、あの、名前は・・・?」
 女の子は何かをごまかしたように言った。
どれみ「私?私は春風どれみ。美空中学校の2年生だよ。」
女の子「私は・・・水野風木って言います。あの、本当にありがとうございました。」
 女の子はそうお礼を言って帰っていった。
どれみ「なんだ。良い子じゃん。あんなに良い子なのになんで万引きなんかしたんだろう・・・?」
 どれみは首を傾げている。

***

次のページへ
リストに戻る