まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第15話『幻獣界の実態』
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 フィーヌはMAHO堂が見えなくなるくらいまで飛んだところで言った。
フィーヌ「テイル、さっき言ったことが国王の耳に届いてみろ、息子だからって何されるか・・・。」
テイル「でも、でも僕はこのままじゃいけないと思うんだ。」
フィーヌ「何がだ?」
テイル「幻獣界と人間界の関係だよ。もちろん魔女界も魔法使い界も・・・。」
フィーヌ「しかし人間と接触する事は禁じられているんだ。いいか、事故とはいえ人間界に来たことを絶対に誰にも言うな。」
テイル「フィーヌさんはいつもそうやって逃げるんだ・・・。」
フィーヌ「何だって、何か言ったか?」
テイル「フィーヌさんはいつもそうやって逃げるだけじゃないか!」
フィーヌ「・・・俺だって変えたいさ、このままじゃ幻獣界が他の世界から孤立してしまうことも目に見えている。でもな、規則は規則なんだ。人間と接触したことがバレたら俺たちの命は無いぞ。」
テイル「だからって父さんのイイナリになるのは僕は嫌だ。」
フィーヌ「テイル、あのな・・・。」
テイル「父さんだってきっと何かあったんだよ、そうじゃなきゃ意味も無く人間を嫌ったりはしない。フィーヌさんだって分かってるんでしょ?」
フィーヌ「・・・・。」
 それからは互いに一言も喋らなかった。

***

どれみ「ねぇ、さっきの人・・・じゃないね、妖精の方・・・。」
 どれみが沈黙を破って言った。
さつき「それがどうかしたの、どれみちゃん?」
どれみ「何かを怖がってるような感じだった。」
しずく「私もそんな気がした。」
どれみ「幻獣界の王様はそんなに厳しい人なのかな・・・。」
さつき「かもね。」
どれみ「・・・幻獣界の王様に人間は嫌われているって言ってたけど、どうしてなのかな。」
しずく「昔、何かあったのかな。でも、普通は理由無しに嫌いになったりしないよね?」

***

 幻獣界の王の部屋。
幻獣王「くそ、痛むぞ、古傷が、この忌々しい古傷が・・・。」
 暗い部屋の中で幻獣王は嫌悪感を募らせていた。
幻獣王「許せん、人間を許すわけには・・・・いかない!」
 幻獣王の息は荒れていた。
幻獣王「ハァハァ、くそ、グルモス、忘れぬぞ、お前の顔を・・・。」

***

 しばらくした後、幻獣界の城、謁見の間の入り口が開いた。
フィーヌ「ディラノス様、只今帰りました。」
ディラノス「お前・・・人間界に行っていたそうだな。」
 ディラノスは開口一番にそう言った。
フィーヌ「な、何を言っているのですか!?」
ディラノス「人間界で龍が出た、と騒ぎがあったと聞いてね。その龍はテイル、お前だな。」
テイル「・・・はい。」
フィーヌ「しかしあれは事故です、好きで人間界に行った訳ではありません!」
ディラノス「黙れ、始まりはお前がテイルに注意を払わなかったからだ、違うか?」
フィーヌ「しかし・・・。」
ディラノス「言い訳が好きなようだな、フィーヌ、その口、二度と喋れないようにしてやろうか?」
フィーヌ「う・・・。」
ディラノス「お前達が精霊を探しに森を歩いていて、テイルが穴に引きずり込まれた・・・。それはお前の注意が行き届いていなかったからだ。もしもお前がちゃんとテイルに注意を払っていれば、テイルが穴に引きずり込まれる前に助けることぐらいできただろうに・・・。」
 奥の扉が開き、幻獣王が姿を表した。
フィーヌ「こ、国王!」
幻獣王「フィーヌ、お前は『テイルを守る』という私の命令に逆らった、そうだな?」
フィーヌ「ち、違います、私は・・・。」
 幻獣王は手のカギヅメでフィーヌを壁に押し当てた。
幻獣王「うぬぼれるな、フィーヌ。逆らったにしろそうでなかったにしろ、お前は命令された任務に失敗したんだ。」
テイル「お父さん、止めて!」
フィーヌ「テイル・・・。」
幻獣王「・・・なんだ、テイル。」
テイル「フィーヌさんは・・・悪くないんだ。」
幻獣王「ふん、こんな奴などかばってもなにもならないぞ?」
 王は皮肉じみた口調で言う。
テイル「ディラノスさん、正直になってください。お父さんが間違っていることぐらい子供の僕にだって分かっているんだ、お父さんの側近ぐらい偉いディラノスさんならそれぐらいわかるでしょ?」
幻獣王「テイル、誰が間違っているって?」
ディラノス「そ、そうだ、国王は間違っていない。」
フィーヌ("父さんのイイナリになるのは嫌だ"、か。)
幻獣王「なんだ、フィーヌ、何がおかしい。」
フィーヌ「テイル、お前は偉いぞ。そうだ、お前の言うことは正しい。国王の言う事は間違っている。」
 それがフィーヌの最後の一言だった。その一言が王の逆鱗に触れた。王はその"自慢のカギヅメ"でフィーヌの体を切り裂いた。
テイル「お、お父さん・・・。」
幻獣王「おい、ディラノス、こいつを外に放り出せ。」
ディラノス「・・・かしこまりました。」
幻獣王「それとテイルを牢に入れておけ。」
テイル「!!・・・お父さん?」
 王はそのまま部屋を出た。

***

城の外。
ディラノス「悪く思うな、フィーヌ。分かっているさ、国王が間違っていることくらい。しかし、もうどうにもならないんだ、あの方がなくなるまでは、な。せめて安らかに・・・。」
 ディラノスはそう言って城の外の人通りの少ない川の土手にフィーヌを置いて城に戻っていった。
フィーヌ「く、聞こえてるぞ、ディラノス・・・。バカが・・・。俺は・・・死んじゃいねぇ・・・。」
 フィーヌは起き上がると指を弾いて小さい妖精の姿に変身した。
フィーヌ「俺は・・・絶対この幻獣界を変えてみせる・・・それまでは、絶対に死なねぇ・・・。」
 フィーヌはそう言うと川上に向かって飛んでいった。

***続く


次回予告
どれみ「最近暑い日が続くからアイスがおいしいね。って、もうアイス無いの?」
さつき「どれみちゃん、アイス食べ過ぎ。おなか壊すよ?」
どれみ「無くなったアイスを買いにコンビニへ行ったら妖しい謎の女の子に会いました。次回、まだまだ!?おジャ魔女どれみ、『新しい"風"が吹く!』ドキドキピース未来にひ〜かれ♪」
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