まだまだ!?おジャ魔女どれみ
第11話『鏡の中のさつき』
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 さつきは美空市を流れる川のほとりでひとり、制服姿のまま座っていた。
さつき「あぁ〜あ。私みんなにどうしてあんなこと言っちゃったんだろう。みんなは何も悪くないのに。悪いのは私の・・・。」
 さつきは手の中に握られた、クシャクシャになった紙を見て呟く。さつきはしばらくそれを見つめ、そして何かを思い立ったように立ち上がり、それを川に向かって投げようとした。しかし、さつきの右手は何者かによって突然動きを止められた。
白岩「何してんだよ。」
さつき「し、白岩君、離して!」
 さつきは無理やり白岩がさつきの腕を握ったその手を、振り払おうとした。
白岩「これ・・・やっぱり原因はテストの点か。」
 白岩はさつきの手に握られているその紙を見て言う。それは理科1分野のテストの答案だった。白岩はさつきの手の理科の答案を奪って、広げた。
白岩「はは。42点かよ。」
さつき「何よ・・・。」
白岩「あ?」
さつき「私が理科のテストでこんな点数取ったの見てそんなに楽しい?」
白岩「いや、全然。」
さつき「でも、今笑ったじゃない。」
白岩「この点誰にも見られたくなくて、けどみんながお前のテストの点を見ようとしてきたから怒って帰ったわけ?」
さつき「う、うるさい、あなたに何が分かるのよ。」
白岩「わかんねえよ。分かるわけねぇだろ。」
さつき「・・・!?」
 白岩の返答に驚いてさつきは何も言えなかった。
白岩「1回テストでしくったからって落ち込んでても仕方ねぇだろ。」
さつき「落ち込んでって、こんな点でカレン女学院に受かるわけないじゃない。」
白岩「何言ってんだ。入試まであと何日あるんだよ。2年近くあるじゃねぇか。」
さつき「そうだけど・・・。また落ちるんじゃないかって不安になるのよ・・・。」
白岩「え?」
さつき「私さ、中学カレン女学院受けて・・・落ちたの。」
白岩「そうだったんだ。」
 白岩は答案をさつきに返して呟いた。さつきは後ろの白岩の方を振り向かずに川の方 を見つめて呟いた。
さつき「高校こそは受からないと・・・。」
白岩「・・・何かやりたいことあるのか?」
さつき「・・・医者になりたい。」
白岩「医者か、へぇ。それで勉強頑張ってるんだ。」
さつき「・・・。」
白岩「お前さっき現実から逃げようとしてただろ?現実逃避って奴?」
さつき「え・・・?」
白岩「また高校でカレン女学院受けて受かりたいんだろ?なのに1回悪い点取ったからって何へこんでんだよ。」
さつき「そ、それは・・・。」
白岩「この答案川に捨てても何にも変わらないぜ。むしろ後悔するだけだと俺は思うんだけど。」
さつき「でも・・・。」
白岩「うわ、お前数学100点じゃん。英語も。」
さつき「ってちょっとなに人の答案勝手に見てるのよ。」
 さつきが振り返ると白岩はさつきの鞄からさつきの答案を勝手に出して見ていた。
さつき「ちょっと、聞いてる?」
 さつきは白岩から答案を奪い取る。
白岩「いや、悪い。でも、お前なら絶対カレン女学院受かるよ。」
さつき「・・・え?」
白岩「それだけ点数取れてて落ちる方がおかしいだろ。後は苦手科目だけやってりゃ完璧。」
さつき「そ、そんなこと・・・。」
白岩「大丈夫、俺が保証してやるよ。」
 さつきの心の中のガラスでできた鏡のように冷たく突き刺さっていた何かが砕ける音 がした。
さつき(あれ、前にもこんなこと・・・。)
 さつきはふとそう思ったが、白岩の言ったセリフを思い出し、思わず笑ってしまう。
さつき「はは。」
白岩「な、何笑ってるんだよ。」
さつき「白岩君に保証されてもなぁ・・・。」
白岩「な、せっかく俺が新庄の応援してやってるのに。お前って奴は・・・。」
さつき「とにかくありがとう。私、帰ってテストの見直ししなきゃ。じゃぁ・・・。」
 さつきはそう言って走り去っていく。
白岩「またな。」
 白岩はさつきの後ろ姿を見てそう答えた。

***

 さつきは家に帰って部屋に入ると、机の上に鞄を置き、椅子に座った。
さつき「確かに、あのテスト1番の問題に時間使っちゃって後の問題解く暇無かったのよね。時間さえあればもっと良い点取れてたかも・・・。」
 そして、さつきは、さっきふと思ったことを思い出す。
さつき「白岩君・・・そうだ、前にもあんなことがあって、あの時はたしか・・・。」
 さつきはの心の中にあった過去の記憶と、白岩のセリフが重なる。
さつき「『俺が保証してやるよ』、かぁ。」
 さつきは頬をやや紅く染め静かに微笑んだ。

***

 翌日、終業式の日の朝。
どれみ「ねぇ、さつきちゃん大丈夫?」
さつき「え、何が?」
しずく「噂では昨日怒って帰ったって聞いたけど・・・。」
さつき「あぁ、別にたいしたことじゃないから、気にしないで。クラスのみんなにもちゃんと謝っとかないとね。」
しずく「そ、そう?」
どれみ「なら良いんだけど・・・。」
 心配する2人を横目に、さつきだけは笑みを浮かべていた。

***続く


次回予告
どれみ「そういえば私達の"娘"は元気なんだろうか・・・。」
しずく「む、娘?」
どれみ「ハナちゃんのことだよ。ハナちゃん、元気にしてるかな。次回、まだまだ!?おジャ魔女どれみ、『ハナちゃんの大脱走マーチ』ドキドキピース未来にひ〜かれ♪」
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