おジャ魔女どれみ+α
特別編2『銀髪の魔女見習い』
3/13
美空市を一望出来るその高台の公園に、キララの姿はあった。
「アルス、いったい何があったって言うの・・・」
キララの頬を涙がつたった。
「アルス・・・」
その時、キララの流す涙を隠してくれるかのように、雨が降りはじめた。しかし、キララはそれに気付かないのか、雨宿りしようともせずに その場にうずくまって泣いていた。その時、突然キララの周りだけ雨が止んだ。
いや、雨を遮る何かがキララ頭上に現れた。キララは上を見上げると、そこにはピンクの傘があった。そして、その傘を持っていたのは・・・。
「どれみ・・・さん」
「キララちゃん、だよね、確か。どうか・・・したの?」
キララが泣いていることに気付いたどれみは、優しくそう問い掛けた。
「良かったら話してよ、相談のるよ」
「・・・」
「話したくなかったら無理に話してくれなくても良いけど・・・」
「火星で・・・」
「・・・火星で?」
「火星で最も高いといわれるオリンポス山の地下付近に・・・スルアズマという名の国があるの」
「スルアズマ・・・って、確かキララちゃんの名前にも・・・」
キララはゆっくり頷いた。
「私の住む国では、皇族はみなスルアズマという姓を名乗ることになっていて・・・」
「ってことは、キララちゃんって、その国の王女か何かなの?」
「うん、父が国王、そらから母が皇后・・・」
「す、凄い家系ですね、キララちゃん・・・キララ王女様」
「あはは、良いよ、キララで。それに敬語なんて使わなくても・・・」
「そ、そうっすか?」
「・・・でね、私のスルアズマって言う国には3つの財宝があるの」
「3つの財宝・・・」
「青龍(せいりゅう)の剣、玄武(げんぶ)の盾、そして、白虎(びゃっこ)の水晶・・・」
キララは少し間を置いてから、また3つの財宝について語りはじめた。
「青龍の剣は触れただけで手が切断されてしまうほどの鋭さを持った剣で、この世界中で貫くことが出来ないのは玄武の盾のみと言われる最強の剣。玄武の盾はいかなる物理的攻撃をも跳ね返す最強の盾。白虎の水晶は所持するだけで、魔女や魔女見習いでなくてもどんな魔法でも使えるようになるという水晶玉よそして、この3つのうち、白虎の水晶が城の宝物庫から盗まれた・・・」
「え、盗まれた!?」
「そしてそれを盗んだ犯人がこの地球にいるの」
「それでキララちゃんはその犯人を捕まえるために地球に来たの?」
「・・・犯人の子はね、私の幼なじみなの」
「・・・え」
「名前はアルス・ディルガーナ、私が物心ついたときからの友達なの。だから、私はアルスのことをよく知ってるわ。アルスは・・・自分の意思で何かを盗んだりする人じゃない。ましてや、国家の財宝を盗むなんて・・・」
「幼なじみなんだ・・・」
「実はね・・・さっき、見つけたんだ」
「アルス君を?」
「うん。でも、帰れって言われちゃった・・・お前に貧しい一般庶民の気持ちが分かってたまるか、だって」
「そっか、キララちゃん、それでさっき泣いてたんだ・・・」
「・・・うん」
「でも、ってことはアルス君が"百個"の水晶を盗んだ理由って・・・アルス君が自分を貧しい一般庶民だと思ってることと何か関係があるのかもね」
「そうかもね。もしかしたらよっぽど苦しい目にあっているのかもしれない。だけどどれみちゃん・・・、百個の水晶じゃなくて・・・白虎の水晶なんだけど・・・」
「え、あ、そうだっけ・・・?」
「・・・あはは、どれみちゃんって面白い」
「え、な、何が?」
「火星人がタコみたいなんじゃ、とか言ったり、白虎の水晶のこと、百個の水晶とか言ったり・・・。」
「それは・・・その・・・」
どれみは恥ずかしそうに苦笑いしている。
「だけど・・・ありがとう、おかげで元気でたよ」
「そ、そっか、それなら良かったよ」
「私、諦めないでなんとかアルスを火星に連れ戻して見るね」
「・・・うん、頑張って」
「それじゃぁ、私は・・・」
「そうだ!今日、私の家に泊まっていかない?」
「え?」
「だって、火星から来たってことは、こっちに家とか無いでしょ?」
「う、うん、でも・・・」
「ちょうど今私の友達・・・ほら、昼間会った時に一緒に居た子のうち、あいちゃんとももちゃんの2人が泊まりに来てるんだ。みんなといろいろ話あったらアルス君を連れ戻す良い考えが浮かぶかも知れないし、それに気分だって楽になるでしょ?」
「・・・だけど、悪いわ」
「良いの、良いの。それに、キララちゃん、なんだか疲れてるみたいだし・・・。もしかして火星に来てからアルス君を探すのに必死で、ずっと休んで無いんじゃない?」
「確かに、3日前にこっちに来てから・・・まだ一睡もしてないけど・・・」
「一睡も!?ダメだよ、ちゃんと休まなきゃ、やっぱり私の家に来なよ」
「でも、私たちさっき知り合ったばかりなのに・・・」
「"友達"にさっきも昔も無いよ」
「友・・・達・・・?」
「え、違う・・・かな?」
「ううん、ありがとう・・・でも、ごめんなさい、私、一分でも早くアルスを火星に連れ戻したいから・・・それに、アルスが国家の財宝を盗まなければならないほど何か苦しい事態に直面しているのだとしたら・・・私はこれくらいのことで"苦しい"なんて言ってられない。だから・・・ごめんなさい」
「・・・そっか」
「それじゃぁ、行くね、今日は本当にありがとう」
キララはそう言って魔女見習い服に着替えるためのコロンを取り出した。
しかし・・・。
「あ・・・」
「どうしたの、キララちゃん?」
キララの手からコロンが落ちると、キララはバランスを崩して水溜りの上に倒れた。
「キ、キララちゃん!」
どれみはピンクの傘を放してキララに駆け寄った。
「どれみ・・・ちゃん・・・」
「大丈夫?やっぱり疲れが溜まってたんだよ、ほら、私の家まで連れて行ってあげるからさ。」
「ごめんなさい・・・」
「ううん、気にしないで」
どれみはそう言ってキララを起き上がらせると、傘を拾ってから、キララの肩を持ってゆっくりと家に向かって歩いていった。

***

次のページへ
リストに戻る