おジャ魔女どれみ+α
特別編2『銀髪の魔女見習い』
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「母さん・・・なんで・・・」
少年はベッドの上に横たわった母親に寄り添って泣いていた。
「母さん、なんで死んじまったんだよ・・・俺、いったいこれからどうやって生きていくんだよ・・・父さんも居ないのに・・・俺、ひとりで・・・どうやって・・・」
そう言いながら泣き崩れる少年の背後に、怪しい男の影があった。
「少年よ・・・」
「だ、誰だ!?」
「良いことを教えてやろうか?」
男はニヤリと笑ってみせた。

***

1月初頭、深々と降る雪はアスファルトで舗装された道路をうっすらと覆い始めている。雨が雪に変わった頃からだろうか、街を歩く人々の足取りはいつの間にか軽くなっていた。
そして、その雪の中を1人の少女がひた走っていた。その少女は、近くの店の軒下まで駆け込むと、呟いた。
「困ったなぁ、もう、急に降ってくるんだもん」
少女は銀色のカールした長い髪に積もった雪を払うと、今度はさっきまでの雨でビショビショになったコートを拭い始めた。
「はぁ〜あ、私っていつになったら帰れるのかなぁ・・・」
深いため息をつくと、少女は雪が落ちてくる空高くをじっと見つめた。

***

「冬休みもあと1週間で終わりかぁ」
赤い髪を頭の上で丸く2つにまとめているその少女は呟く。
「私も明後日になったらアメリカに帰らなくちゃ」
「ほんまやなぁ、あっという間の2日間やったし、あと2日もあっという間に過ぎてまいそうやな」
冬休みを利用して飛鳥ももこ、妹尾あいこの2人は春風どれみの家へと遊びにやってきていた。
「さて、じゃぁ今日も1日遊びますか」
─コンコンッ
突然、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「どれみ〜?お友達が来てるわよ」
どれみの母、はるかのその声の後に、3人の少女が部屋の中へ入ってきた。
「どれみちゃ〜ん、おはよ」
「こがねちゃんにしずくちゃん、それからさつきちゃん、おはよう」
「ももちゃんとあいちゃんが泊まりに来てるって聞いたからさ、みんなで遊びに行こうかなって思ったんだけど、どうかな?」
さつきが問いかけると、
「私らは良いけど・・・遊びにって何処行くん?」
とあいこ。
「実は特に考えて無かったんだけど・・・何処が良いかな・・・」
「雪もちょうど良い感じに積もってきたし・・・ねぇ、雪合戦しない?」
「雪合戦か・・・良いね、それ」
ももこの意見に賛同するどれみ。
「そうね、雪合戦なんてめったに出来ないもん」
「雪がこんなに積もることなんてまず無いもんね」
「じゃぁ、雪合戦で決まり!」
「そや、それやったらはづきちゃんとおんぷちゃんも誘おうや、人数多い方が楽しいし」
「でも、はづきちゃんは多分大丈夫だと思うけどさ、おんぷちゃんはお仕事忙しいんじゃないかな?」
「どうやろ、とりあえず誘ってみるだけ誘って見ようや」
「そうだね、じゃぁ2人に電話して聞いてみるから、ちょっと待っててよ」
どれみはそう言って部屋を出ると、受話器をとり、まずおんぷの携帯の電話番号を押した。
「あれぇ・・・出ないなぁ、お仕事中なのかな?」
コール音がしばらく続いたかと思うと、留守番電話センターに接続された。
「とりあえず、メッセージだけ入れとこうかな」
どれみは留守電にメッセージを入れ終えると、受話器を下ろした。
「さて、次ははづきちゃんだね」
どれみは受話器を再びとると、今度ははづきの家の電話番号を回した。

***

はづきと合流したどれみたち7人は、美空市郊外の山のふもとへとやってきていた。
「うわ〜、凄い雪!」
「これだったら思う存分雪合戦が出来そうだよ」
「それにしても、おんぷちゃんが来れないのは残念だなぁ〜」
「でも、留守電にメッセージ入れといたんでしょ?後から来るかも知れないじゃん」
「なぁなぁ、グッパでチーム分けせぇへん?」
「OK!」
「よっしゃ、行くで〜」
グッパでチーム分けをした結果、どれみとあいこ、さつきの3人と、はづき、ももこ、しずく、こがねの4人とに分かれた。
「んじゃぁ、雪合戦開始!」
「ほな行くで〜、それ!」
「きゃ、つ、冷たいわ」
「そりゃぁまぁ、雪やしね・・・」
「そ〜れ!」
「うわ、やったな、ももちゃん!」
「へっへ〜ん、油断大敵だよ」
「よいしょ、よいしょ、っと、んじゃぁ、行くよって、うわぁ!」
雪玉を投げようとしたどれみは、凍った地面で滑って転び、雪の中に顔から突っ込んだ。
「ど、どれみちゃん大丈夫!?」
「冷たぁ〜、まさか転ぶなんて・・・トホホ〜」
「いまのうちに、そら、ほいっと」
隙をついてこがねが投げた雪玉はさつきに命中する。
「こがねちゃん、やったわね〜」

数十分後、雪合戦が白熱してきた頃だった。
「どれみちゃん、覚悟〜!」
「わぁ、ももちゃん、タンマ、タンマ〜」
と、その時、ももこの背中に雪玉が命中した。
「あいたっ」
「お、おんぷちゃん?」
ももこに向かって雪玉を投げたのはなんとおんぷだった。
「どれみちゃん、電話ありがとう、留守電聞いたよ。さっきは電話に出られなくてごめんね、ちょうどラジオ番組の収録中だったからさ・・・」
「ううん、それは良いけど、おんぷちゃん、もうお仕事は良いの?」
「うん、もう今日の仕事は全部終わったもの」
「そっか、おんぷちゃん、雪合戦やるでしょ?」
「うん、やるわ、雪合戦なんてめったに出来ないもんね」
「じゃぁ、私とあいちゃんとどれみちゃんのチームに入ってよ、こっち人数少ないからさ」
「分かったわ」
「それじゃぁ、雪合戦再開!」
そう言ったどれみの顔面に、雪玉が命中する。
「あいたっ〜・・・」
「油断大敵だよ、どれみちゃん」

***

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