おジャ魔女どれみ+α
特別編「親子の絆」
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─コンコンッ
 メアリーは突然窓を叩く音が聞こえたのに驚いた。
「だ、誰?」
「私だよ、私。」
 窓の外には浅葱色の見習服をまとい箒に乗った女の子がいた。
「いろは・・・。どうしたの?」
「メアリーのお母さんのMAHO堂の場所がわかったんだ。」
「え、本当?何処なの?」
「日本の北海道だよ。」
「日本?そっか、お母さん日本が大好きだったから。」
「それより、急ごう。」
「え?」
「MAHO堂は経営するか住む人がいなくなってから五百日経つと魔女界の人がそのMAHO堂を消しちゃうんだって。それに私とマジョセスロインさんがそのMAHO堂からいなくなって明日でちょうど五百日なんだよ。だから早く・・・。」
「うん。」
「さ、メアリーも早く着替えて!」
「分かった。ちょっと待っててね。」
 メアリーは部屋の机の引出しを開けた。そこには見習いタップが入っていた。メアリーはそれをもつと、真ん中のボタンを押して見習い服に着替えた。メアリーの見習服の色はこげ茶色だった。メアリーは箒にまたがるといった。
「じゃぁ、行こう。」
「うん。」
 二人は箒にまたがって北海道のMAHO堂を目指した。
「ねぇそういえばさっき・・・そのMAHO堂を去ってから五百日って・・・。」
 メアリーは空を飛びながらいろはに聞いた。
「うん、メアリーのお母さんが亡くなった日に、知り合いの魔女にMAHO堂を頼むって頼んでたんでしょ?」
「うん。え、もしかして・・・。」
「そうだよ。その魔女が私が正体を見破った魔女だったんだよ。」
「そうだったんだ・・・。でも、これでやっとお母さんのMAHO堂にいけるのね?」
「うん。でも・・・大丈夫かな・・・?間に合うかな・・・?」
「なんで?日本にならその気になれば二時間もかからないわよ?」
「うん・・・でも、時差があるから・・・。」
「あ、そっか・・・ってことは?」
「向こうを出てから二時間かかったら、時間的には十時間後になるんだよ。」
「え・・・?」
「だから・・・間に合うかな?」
「と、とにかく急ごう!」
「うん!」
 二人は出し切れるスピードを出して日本へと急いだ。
「着いた・・・。」
「・・・寒くない?」
「北海道だから・・・。」
「・・・今ちょうど夜があけたところみたいだね。」
 日高山脈の向こう側はうっすらと明るく、赤くなっていた。
「ここが・・・お母さんのMAHO堂・・・。」
「マジョセスロインさんから合鍵をもらってきたんだ。入ろう。」
「うん。」
 いろはは鍵を開けてMAHO堂の中へ入った。中はホコリだらけだった。
  「ゴホッ、凄いホコリ。」
「本当・・・。」
 メアリーの目は涙でキラキラ輝いていた。その時・・・。
「メアリー・・・。」
「え?」
「今の声、どこから聞こえてきたの・・・?」
「私は・・・私の名前はマジョミンディー・・・私を・・・覚えていますか?」
 いろはたちは辺りを見渡したが、何処にも姿は見当たらない。
「お母さん・・・?」
「メアリー・・・これは私が死ぬ前に残した魔法のメッセージです。」
「魔法の・・・メッセージ?」
「私はあなたが来るのをずっとまっていました。あなたがここに来るのを、ずっと待ってました。元気にしていましたか?メアリーが大きくなった姿を見れなくて・・・お母さんは残念です。マジョセスロインに頼んでおいたかいがありました・・・。メアリー・・・おそらくあなたは今、一級の魔女見習い試験に受かったことでしょう。しかし、魔女にもならず、魔女見習いのままでいると思います。メアリー、自分の道は自分で決めていいのです。魔女になりたいならなりなさい。なりたくないのなら人間として生活しなさい。魔女のことは・・・私のことは忘れて・・・。」
「そんなの・・・そんなの嫌だよ・・・。私・・・。」
「メアリー・・・。あなたは良い子です。良い子のはずです。だから・・・私のことは忘れて独り立ちしてください・・・。大人になってください。それが私の願いです。メアリーが悲しみに押しつぶされないように・・・。」
「お母さん・・・。」
 メアリーの目はまた涙であふれていた。夕方、涙は出し切ったはずなのに、拭いても拭いても、涙は止まらなかった。
「メアリー・・・。さようなら。元気に・・・そして大人になってください。」
「お母さん・・・。」
 辺りは突然しんとなった。どうやら魔法のメッセージは終わったようだった。メアリーは相変わらず泣いていた。いろはにはそんなメアリーに何もしてやることが出来なかった。
「メアリー、お母さんの言う通りだよ。元気だそう。」
「でも・・・。」
「いくら泣いたって、お母さんは帰ってこないよ。メアリーの気持ちはよく分かる。」
「いろはに・・・両親のいるいろはに・・・私の気持ちなんて・・・。」
「そうだね・・・確かに分からないかもしれないよ。でも、メアリーのお母さんが望んでいるのは、明るくて元気なメアリーだと思うんだ。」
「明るくて・・・元気な私?」
「うん。メアリーにはいつまでも過去を引きずらないで未来を真っ直ぐ向いて欲しいんだよ。」
「そうだけど・・・それは分かってるけど・・・。でも・・・。」
 メアリーは魔法のメッセージが聞こえてきた天上を見上げて言う。
「過去はただ遠ざかっていくだけだよ。だから遠ざかるものを見てても、何もいいことはないと思うんだ。」
 メアリーは涙を拭いてから答えた。
「ありがとう、いろは。」
 メアリーの顔に笑顔が戻っていた。いろはも自然と笑っていた。
「へへへ。メアリーはやっぱり笑ってなきゃね。」
「じゃぁ、行こうか。」
「うん。」

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