おジャ魔女どれみ+α

特別編「親子の絆」
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「ねぇ、メアリー知ってる?」
「何を?」
「MAHO堂☆カフェっていうお店。街のはずれにあるんだ。」
「へ、へぇ〜知らない。いろはは行ったことがあるの?」
 メアリーは一瞬動揺したように見えたが、いろははそんなことには気がつかなかった。
「うん。何回かね。そこの紅茶が甘くてとってもおいしいんだ。」
「そうなんだ。今度行ってみたいね。」
「うん。」
「あ、そうそう、いろはって姉妹とか兄弟っているの?」
「ううん、一人っ子だよ。メアリーは?」
「私は三歳年上のお姉ちゃんがいるんだ。」
「そうなんだ。お姉ちゃんもこの学校にいるの?」
「うん。あ、もうこんな時間、そろそろ帰らないと。」
 メアリーは校舎の柱時計を見ながら言った。柱時計は四時をさしていた。
「もう四時なんだ・・・。」
 いろはがそう言うと、柱時計はちょうど鐘をならし始めた。
「魔法を使えばもうちょっと遊べるのにな。」
 いろはは思わずそう言ってしまった。
「魔法?」
「え・・・いや、なんでもないよ。」
「もしかしていろはって・・・いや、そんなわけないか。」
「え?」
「いや、まさかとは思うけど、いろは魔女見習いだったりしないよね?」
 この言葉にいろはは驚いた。
「な、何で・・・?」
「あ、本当にそうだった?大丈夫よ、私も魔女見習いだからさ。」
「そうなんだ・・・。」
 いろはは安堵の表情を浮かべた。
「メアリーって何級まで受かってるの?」
「一応一級まで受かってるけど・・・。」
「凄い!私なんてまだ三級受かったところだよ。」
「そうなんだ。」
「でも、一級受かってるんならなんで魔女にならないの?」
 メアリーは黙ってしまった。
「ごめん・・・私、何かまずいことでも聞いた?」
「ううん、この間、私のお母さん昔死んだって言ったよね?」
「う、うん。聞いたよ。」
「実はさ・・・お母さんが魔女だったんだ。」
「え?」
「でもお父さんが普通の人間だったから、私も普通の人間だったのよ。そんなある日にさ、私お母さんの正体を見破っちゃって・・・。」
「それで魔女見習いになったの?」
「うん。その時まだ二歳ぐらいだったけど、お母さんにもとの姿に戻って欲しかった。でも、魔女見習い試験って人間界じゃ夜に行うでしょ?そんな夜遅くに起きれなくて・・・。そして私がお母さんを魔女だって見破って一週間もしないうちに、お母さんは病気で死んじゃったんだ。その時知り合いの魔女の人がお見舞いに来てたんだけど、その人にMAHO堂を頼むって頼んでた。そのあとどうなったか知らない。そもそもお母さんの経営していたMAHO堂が何処にあるのかも分からないし・・・。」
 いろははその話を聞いて何かに気が付いたが、それが何かは分からなかった。しかし、何処かでそんな話を聞いたような気がしていたのだった。
「それで・・・お母さんのこと・・・忘れたくなかったから・・・お母さんが死んだあとも必死で魔女見習い試験受けたんだ。そしてやっと1級試験に受かったんだ。」
「そうだったんだ・・・。」
「私は魔女になろうとは思わないけど、魔女見習いとしてい続けたら・・・いつか・・・お母さんに会えるんじゃないかって・・・。」
 メアリーの目からは涙がこぼれていた。
「メアリー・・・。」
「あ・・・ごめん。私泣いてた?おかしいな・・・泣かないって・・・決めたつもりだったのに・・・。」
「ねぇ、メアリー。もしお母さんの経営していたMAHO堂が見つかったら、行きたい?」
「うん・・・。行きたい。凄く行ってみたいよ。」
「じゃぁ、一緒に探そうよ。私も・・。
 メアリーのお母さんが経営していたMAHO堂、きっと見つけてあげるからさ。」
「・・・ありがとう。」
 メアリーの目からあふれ出ている涙は夕陽に照らされて赤く染まっていた。それはまるで血の涙のようだった。

***

「こんにちは〜っと。」
「いろはか。遅かったな今日は。」
「ちょっとね。」
 いろははメアリーと別れたあと、一度家に帰ってからここ、MAHO堂へとやってきていた。
「ふむ。そうだ、いろはもだいぶ大きくなったことだ、あの話の続きをしてやるかな。」
「あの話?」
「北海道のMAHO堂の話じゃ。」
「え・・・?うん、聞かせて!」
「私の親友があのMAHO堂を守ってくれといっとった理由だが・・・。」
「あのさ・・・ちょっと聞いても良い?」
「なんだ?」
「その親友の人って・・・子供が魔女見習いだったり・・・しないよね?」
「いや、子供は魔女見習いだったそうだ。その子供に見せて欲しいものがあるから 残しておいてくれと、そして五年たったら子供に見せてやってくれと・・・ 私は彼女がそう言っておったように思えてならんのだ。」
「その魔女の人ははっきりそう言ったわけじゃないの?」
「あぁ。なぜ五年なのかは・・・おそらく、彼女の子供が小学生になったらと・・・そういう意味だったのだろうが。」
「じゃぁ、マジョセスロインさんはなんでその子供を捜さなかったの?」
「見つからんかったんだ。手がかりが何も無かった。彼女の子供は人間の父親と共にイギリスの北部で暮らしていたはずだった・・・。しかし行っても誰もおらんかった。」
「ねぇ、その娘の名前ってわかる?」
「さぁな。そこまでは分からん。分かっていれば魔法を使ってとっくの昔に見つけている。」
「じゃぁ・・・そのマジョセスロインさんの親友の魔女の人って・・・死ぬ間際は魔女ガエルだったの?」
「あぁ。死ぬ一週間ほど前に子供に正体を見破られてな。」
「メアリーだ・・・。」
「何?何だって?」
「多分その子、学校の友達・・・。」
「なんと・・・。本当か?」
「うん。マジョセスロインさんにメアリーって子の話、何度か話したことあるでしょ?」
「あぁ、何度かな。聞いた覚えがある。まさかその子が・・・?」
「うん・・・。」
「そうか・・・ならば、今すぐその子を連れて北海道に行け。」
「え?」
「いいから今すぐだ。」

***

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