おジャ魔女どれみ+α
特別編「親子の絆」
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「・・・誰じゃ?客か?」
「え、いや、その・・・MAHO堂って書いてあったんでその・・・。」
 いろははしどろもどろしながら言う。
「なんじゃ、お主はどこぞの魔女見習いか?」
「あ、はい。まぁ一応・・・。」
「そうか。私はマジョライドじゃ。もちろん魔女じゃ。お主は?」
 マジョライドとなのる魔女は険しい顔から一転して優しい顔になった。それを見ていろはも安心したらしく、落ち着いてきたようであった。
「私は藤崎いろはです。」
「藤崎いろはか・・・、ところでお主・・・以前何処かで会わなかったかの?」
「はい?」
 いろはは突然そのような事を聞かれて驚いた。
「いえ・・・そんな記憶は無いんですが・・・。」
「そうか。それもそうじゃな。あれは日本の鳥取で・・・。」
「鳥取?」
「いや、なんでもない。せっかく来たんじゃから、お茶でもいっぱい飲んでいくか?」
「良いんですか?」
「良いんじゃ。ゆっくりしていけ。」
 いろははマジョライドがやけに親切なのに違和感を感じたが、敵意は感じられなかったから、警戒はしていなかった。数分して、マジョライドは紅茶を入れたカップを運んできた。いろははカウンターのまん前の席に座った。
「ありがとうございます。」
 いろははそう言って紅茶を飲んだ。紅茶を飲み終えたいろはは、席から立ち上がって礼をしてからその場を去っていった。
「懐かしいな・・・。まさかこんなところで彼女と会うとは思っていなかったな。」
「誰だい?今のかわいい女の子は。知り合い?」
 店の奥から若い男が出てきた。
「あぁ。一応な。私はリックスを探しに人間界にきたと、そう言っただろう?」
「それがどうかしたのかい?」
「あれは確か六年前じゃったな。お前から聞いた頼りのない情報を信じて日本にいったんじゃ。」
「おいおい・・・。頼りないってひどいな。」
「だってそうじゃろ?お前が鳥取という街でリックスを見たといったから飛んでいったのに、魔法使いの一人もおらんかったではないか。」
「まぁそうかっか怒るなって。で、話の続きは?」
「ふん。まぁいい。私が鳥取に行って、リックスを探していたときに、私は彼女とあったんじゃ。」
「へぇ。」
「わしも急いでおったからな。海沿いの街を歩いておったら突然飛び出してきた二歳ぐらいの女の子とぶつかってしまったんじゃ。その時彼女の左足に怪我をさせてしまったようなんじゃが、彼女は泣かんかっ た。 しかも私がぶつかった時に落としてしまったMAGICBLUEのネックレスを拾ってくれて、それを笑顔で私に渡してくれたんじゃ。その時じゃった。彼女の手の中でMAGICBLUEは輝き始めたんじゃ。MAGICBLUEには魔女の素質があるものを判別する力も持っていてな。私はその光を見て、彼女を魔女に育てたいと思った。しかし彼女はまだ二歳じゃ。私はとりあえずそのネックレスを彼女にあげ、それを目印にいつか会いに行こうと思っておったんじゃ。」
「その女の子がさっきの子かい?」
「あぁ。間違いない。しかし、もうその必要もなくなってしまったようじゃな。彼女はもうすでに魔女見習いじゃった。きっと立派な魔女になることじゃろう。」
「へぇ。そうなんだ。」
「それよりお主は魔法使い界に帰らんでいいのか?」
「・・・まるで帰って欲しいような言い方だな。」
「もうお前からリックスの情報は聞き尽くしたからな。」
「へっ、いわれなくても帰るぜ。それより今度こそリックスを見つけて来いよ。」
「余計なお世話じゃ。」
「しかしリックスの奴も物好きだな。こんな魔女と恋に落ちるなんてな。」
「う、うるさい!こう見えても私は昔は美人だったんじゃぞ!」
「はははは、冗談だよ。それじゃ、俺は帰るよ。」
「さっさと帰れ!まったく・・・。」
 マジョライドは再び扉の中の部屋に入っていった。

***

 いろはが三級の魔女見習い試験に合格した翌日の朝のことだった。いろはが一人で街を歩いていた。その時、いろはの目的地はMAHO堂カフェだった。
「こんにちは〜♪」
「おや、何やら嬉しそうだね。見習い試験にでも受かったのかい?」
「うん、三級試験に受かったんだ。」
「ほう、もう三級か。どれ、お祝いの意を込めておいしい紅茶でもいれてやるかな。」
「え、いや、別に気をつかわなくても良いんですけど・・・。」
「まぁ、気にするな。待っておれ。」
「はい・・・ありがとうございます。」
 いろはは一瞬戸惑った顔をしたが、すぐに嬉しそうな顔に変わった。なんだかんた言ってもここの紅茶はとても甘くておいしいので、いろははマジョライドの紅茶を飲むのをいつも楽しみにしていたのだ。 しばらくして、マジョライドは紅茶を持ってやってきた。
「はいよ。どうぞ、召し上がってくれ。」
「はい、いただきます。」
 いろははおいしそうに紅茶を飲み始めた。
「ふふふ、いつもおいしそうに飲んでくれるな。」
「だって、本当においしいですから。」
「そうか、そうか。はっはっは。私は子供には弱くてな。」
「そうなんですか?」
「あぁ。」
「魔女にしては珍しい人ですね。」
「はっはっは。そうかもしれんな。大抵の魔女は子供が嫌いじゃからな。」
「ごちそうさま〜。本当においしかったです。」
「ふっふっふ。良い子じゃな。もう帰るかい?」
「はい。マジョセスロインさんの所に行かないと・・・。」
「そうか。気をつけてな。」
「はい。ありがとうございます。」
 そう言うといろはは勢い良く走り出してその店を後にした。
「・・・元気の良い子じゃな。」
 マジョライドは一人そう呟くと、ニコッと笑っていろはの飲んだ紅茶のカップを片付け始めた。

***

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