おジャ魔女どれみ+α
第43話「ありがとうの重さ」
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 突然、こがねの小型通信機が鳴り出した。
こがね「あれ?ももこちゃんからだ。」
 こがねは通信を受けた。
こがね「どうしたの?ももこちゃん?」
 一緒に行動していたあいことおんぷもこがねの通信機の小さな画面を覗き見る。
ももこ「さつきちゃん、合格したよ。」
こがね「本当?」
ももこ「だから、こがねちゃんも頑張ってね!」
 ももこの後からさつきが顔を出して言う。
さつき「こがねちゃん、ファイトよ、ファイト。頑張ってね。」
こがね「うん。ありがとう。それじゃぁ。」
 こがねは通信を切った。
おんぷ「さつきちゃん、受かったんだ。」
あいこ「あとはしずくちゃんとこがねちゃんだけやな。頑張るでぇ〜。」

***

 しずくたちにもはづきから連絡が入っていた。
しずく「さつきちゃん、受かったんだ。」
 どれみたちは美空市を流れる川沿いのベンチで一休みしていた。
どれみ「とにかく、休憩終わりにして、私たちも頑張ろう。」
しずく「うん。」
 その時だった。今いる場所から百メートルほど下流から女の子の悲鳴らしきものが聞こえてきた。
どれみ「え?何?」
 どれみたちは急いでその場所に駆けつけた。見ると、女の子は川で溺れていた。その手には何かを抱いているように見える。どうやら、仔猫を抱いているようだ。しずくは物陰に隠れ、魔女見習い服に着替えた。
しずく「プリティ〜ウィッチ〜しずくっち〜。」
 しずくはポーズを決めてからすぐポロンを構えた。
しずく「ピルル〜カポルル〜カ パラピラピーロット!女の子を助けて!」
 しずくがそう唱えると、女の子は川岸の方へ流されてきた。どれみと普段着に戻ったしずくは女の子の元へ駆けつけ、彼女を川から引き上げた。
どれみ「大丈夫?」
女の子「お姉ちゃん、ありがとう。」
 女の子はとても嬉しそうな顔をしてどれみたちに笑いかける。
女の子「あ、そうだ、猫ちゃんは・・・。」
 仔猫は彼女の腕の中で静かにニャーと鳴いた。
女の子「良かった。」
しずく「その仔猫を助けようとしたんだ。飼ってるの?」
女の子「ううん、さっきたまたま溺れているのを見つけて・・・。」
どれみ「見ず知らずの仔猫を助けてあげるなんて、優しいね。」
 女の子は照れくさそうな顔をしてから、再度お礼を言ってその場を立ち去っていった。
チリンチリンッ─
 どれみたちの背後で突然そんな音が聞こえてきた。
モタ「合格〜♪」
どれみ「しずくちゃん、おめでとう!」
しずく「へへへ。ありがとう。・・・あとはこがねちゃんだけか。」

<只今の時刻:15時32分>

***

こがね「しずくちゃんも合格しちゃったよ。あとは私だけか〜。」
あいこ「こがねちゃん、焦らんかて大丈夫やって。」
おんぷ「そうよ。まだ日没まで2時間はあるんだから。」
こがね「そうだよね。よし、頑張ろう。」
 3人はただひたすら歩いていた。しかし、助けを必要としていそうな人も動物も見当たらない。ただ時間が過ぎていくばかりだった。
こがね「ううん。困ったなぁ。今何時?」
あいこ「えっと、4時10分ぐらいやな。」
おんぷ「まだ間に合うわ。日が暮れるのわ5時すぎぐらいよ。」
 変装していたおんぷは、かけていたサングラスを通して太陽の方を見る。日はもうだいぶ傾いていた。
こがね「うん。」

***

 こがねよりも先に合格を決めていたさつきとしずくは、MAHO堂へ戻ってきていた。
さつき「こがねちゃん、大丈夫かなぁ。」
しずく「うん。」
 二人はこがねのことを心配していた。いや、心配していたのは他のみんなも同じだった。

さつき「日、暮れちゃったね。」
 窓の外の真っ暗の景色を見て、さつきは呟く。
ももこ「うん。」
 すると、MAHO堂の入口の戸が開いた。入ってきたのはこがねたちだった。
どれみ「どうだった?」
 こがねは俯いたままゆっくりと首を横に振った。
こがね「私、やっぱり魔女の素質無いのかなぁ・・・。」
さつき「そんなこと無いよ。」
はづき「こがねちゃんは立派な魔女じゃない。」
こがね「でも・・・。」
あいこ「大丈夫やて、次がある。次が駄目でもその次があるで。」
こがね「あいちゃん・・・。駄目だな、私って。なんかいつも励まされたばっかりで・・・。みんなに・・・助けられてばっかりで・・・。」
ももこ「こがねちゃん・・・。」
 そんなこがねにどれみはそっと近づいて言う。
どれみ「こがねちゃん。私たちだって、こがねちゃんに励まされたり、助けられたりしてるよ。」
 こがねは顔をあげ、どれみの顔を見た。
こがね「私・・・が?」
しずく「そうだよ。この間の2級試験だって、こがねちゃんがいなかったら、受からなかったかもしれない。」
 こがねは一瞬笑って見せてから言う。
こがね「でも、また私みんなに励まされてる。助けられてる。」
 こがねはそう言うと、突然走り出し、MAHO堂を飛び出した。
どれみ「こがねちゃん!」
 どれみは急いでこがねの後を追った。しずくもどれみの後に続いて追おうとしたが、あいこがそれを止めた。
あいこ「どれみちゃんやったら一人で大丈夫や。どれみちゃんは人を元気付けることに関しては凄いから、大丈夫やと思う。それに、しずくちゃんとさつきちゃんは試験に受かってるやろ?だからかえってこがねちゃんを傷つけてしまうかもしれへん。」
 しずくは黙って頷いた。

***

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