おジャ魔な水戸黄門!?
第一話『道中にて』

 晴れ渡る青空。眩しい太陽の下を今日もおんぷ率いる旅の一行は道中を歩いていた。
おんぷ「あいちゃん、はづきちゃん、今日も気持ち良い天気ね♪」
紫色の着物を身に纏い、一行の中心を悠々と気持ち良さそうに歩く少女おんぷ。
あいこ「ホンマやなあ〜♪ 今日は最っ高のスポーツ日和やで♪」
大阪生まれの浪速っ子、青色の装束を身に纏った、頭の触覚と額の広さが印象的な少女あいこが空を見上げながら話す。
はづき「みんなでのんびり日なたぼっこも良いわよね〜♪」
眼鏡を掛け、後ろ髪を大きなリボンで結び、腰に長刀と脇差しを差した、あいこに比べ少し大人しい感じの少女はづき。そして・・・
???「おお〜いぃ〜・・・みんな〜・・・もっとゆっくり歩いてよ〜・・・・」
後方から聞こえてくる情けない声に三人が振り返ると、20m程後ろから、頭の両側をお団子状に束ねた赤毛の少女が、ハァハァと息を切らせながら一行を追いかけて来る。
あいこ「どれみちゃ〜ん、遅いでぇ〜!ちゃっちゃと歩きなや〜!」
はづき「ファイト〜、どれみちゃ〜ん。」
おんぷ「頑張れ〜♪」
どれみと呼ばれる少女を励ます三人。

**********************

・・・十数分後フラフラになりながらも一行に追い着いたどれみはその場にドカッと座り込んだ。
はづき「どれみちゃん、大丈夫?」
はづきが竹製の水筒を差し出すと、その中の水を一気に飲み干すどれみ。
どれみ「もおダメ!!これ以上はもう無理だよっ!歩きたくないよ〜・・・」
あいこ「どれみちゃん、情けない事言うとったらアカン!次の宿場町までまだまだ歩かなアカンのやし、モタモタしとったら日が暮れてその辺で野宿せなならんのやでぇ。」
半泣きのどれみを叱咤するあいこ。
どれみ「じゃあみんな!自分の荷物くらいは自分で持ってよね〜!」
あいこに向かって力無い声で叫ぶどれみ。なんとここまでの道中、どれみ一人で四人分の荷物を担いで歩いていたのだった!
あいこ「おんぷちゃんは設定上は偉〜い黄門様。あたしとはづきちゃんはおんぷちゃんの護衛をせなアカン。となると荷物を運ぶのはどれみちゃんの役目や!」
口を真一文字にし、キッパリと言い切るあいこ。
どれみ「そんな設定ヒドいよ!滅茶苦茶だよ!あんまりだよ〜!・・・」
バッタリと仰向けに倒れるどれみ。
おんぷ(このままじゃ先に進めず野宿になっちゃうわ。そんなのアイドルの私にはとても耐えられないわ・・・)
そう考えたおんぷはあいこに何やら耳打ちし、あいこもそれに頷く。
あいこ「あ、そ〜言えば、次の宿場の美空町にはめっちゃめちゃ美味しいステーキのお店があるんやなかったんかな〜♪」
どれみ「えっ!?」
それまで倒れてグッタリしていたどれみが飛び起きる。
おんぷ「早く行かないと品切れになっちゃうかも!お肉がすご〜く分厚くて有名みたいだし・・・」
どれみを横目で見ながら、芝居口調で話すおんぷ。
どれみ「ぶ、分厚い・・・・ステーキ・・・ジュルル・・・」
肉汁が滴り、美味しく盛り付けされた分厚いステーキを想像し、思わずどれみの口からよだれが出てくる。
どれみ「・・・おかわり、してもいい・・・?」
お&あ「えっ?」
ヨッシャ!とばかりに心の中でガッツポーズするあいことおんぷ。
どれみ「ステーキ、おかわりしても・・・いい?」
おんぷ「おかわりどころか、3枚で4枚でもどれみちゃんの食べたい放題よ♪」
優しく微笑みながらおんぷは言う。
どれみ「うおっしゃあ〜!!」
さっき迄の疲れも何処へやら、四人分の荷物を素早く肩に担ぎ、締まりの無い笑顔で元気に先頭を歩き出すどれみ。
どれみ(ステーキっ!ステーキっ!ステーキっ!分厚いステーキっっ!)
最早ステーキへの執着心だけが今のどれみを支えていた。
はづき「ウフフ、どれみちゃんたら♪・・・でも、この時代にステーキ屋さんってあるのかしら・・・?」
あいこ「無いやろ。」
遠い目をしながら、無表情でボソッと話すあいこ。
はづき「へ?あ、あいちゃん今何て言ったの・・・?」
あいこの言葉に耳を疑うはづき。
あいこ「だからな、江戸時代にステーキ屋は無いやろおなって言うたんよ。」
はづき「ええっ!?」
全身を硬直化させるはづき。
おんぷ「時代が時代だけに、ちょっと考えられないわよね。」
はづき「そ、そんなあ・・・」
苦笑しながら話すおんぷ見て更に表情をこわばらせ、眼鏡を曇らせるはづき。
どれみ「お〜いみんな〜、早く早く〜♪ステーキ無くなっちゃうよお〜♪」
おんぷ&あいこの企みも知らず元気良く前方から手を振っているどれみ。
あいこ「今行くでぇ〜♪」
おんぷ「どれみちゃん待って〜♪」
お互い微笑み合いながら、再び歩き出すあいことおんぷ。
一人ポツンと取り残されたはづきは、
はづき(どれみちゃん・・・が、が、頑張ってね・・・)
口元を引きつらせながら、心からの応援を元気良く前方を歩くどれみに対して贈る事しか出来なかった。

第一話 ゛完゛

第二話『宿場町にて

リストに戻る