北岳の巻 2005.7.9

 「キタダケソウを見てみたい・・・」

 去年あたりからそんなことを考えていた。北岳には登ったことがある。が、ここには他では見られない植物がいろいろ
あるという。中でもその名を冠されたキタダケソウ・・・。写真では見ることができるが、実際にはどんな花なんだろ
う・・・?

 というわけで行ってみることにした。・・・が、仕事の関係で1泊2日なんてなかなか望めない、特にキタダケソウの見ら
れる6月下旬から7月上旬なんて、仕事のピークに差し掛かるころで絶対無理!・・・実際休みが取れんかった週もあっ
たりする。

 ・・・うーむ、これではまったく望むべくもないじゃないか・・・

 「・・・じゃあ、日帰りで行くか・・」

 以前、地図を見ながらコースタイムを計算してみた。トータル8時間40分・・・フツーのサラリーマンの勤務時間とあまり
変わらない・・・てことは、体が動けない時間ではない。

 「・・・何とかいける」
 もぉ、頭ン中はキタダケソウ一色。とにかく行動あるのみ!

 ・・・と、ゆうわけでこの強行日帰り山行が始まった。


 まずは前夜、車で芦安の駐車場まで入る。・・・のはいいが、中央道からの道がわかりにくいのは何とかならんだろう
か・・・。
 どこをどお通ってきたのかわかんないまま芦安の温泉郷に到着。駐車場が臨時も含めて8ヶ所もあるから大丈夫だ
ろうと思ってたのだが・・・23時の段階でもう第1、第2は入れなくなっていた・・・そんなにいるのかよ!しかしまぁ、交通
整理で警備員が配置されてるので、迷うことはない。

 ・・・この人たち、シーズン中は毎晩立ってるってことなのか・・・?

 車を止めて仮眠をとろうと思ったのだが、よく見ると駐車場の空いたスペースにテントがちらほら・・・

 だから駐車場が混むんだ!!(怒)


 ・・・翌朝、4時半起床・・・ってゆうか、すでに周りもざわめき始めて目覚ましなくても起きられました。
 車からザックを取り出し、すぐそばのバス停へ向かう。
 さすがに土曜日である。停留所にはすでに50人くらいがバスの出発を待っている。「乗れないんじゃないか」一瞬ヒヤ
リとするが、もちろん向こうはプロだ。すぐにもう2台ほどバスがやってきて、5:10ほぼ定刻どおりに出発する。
 6時。夜叉神峠を越えて、我われは広河原に入った。私はここで軽く朝食を済ませ、体をほぐしたりする。

 「橋が壊れてるって」

 周りの登山者たちがそんな会話をしている。聞き捨てならない。自分のコースに支障があるようでは、日帰り予定の
私にはそもそも山行そのものが不可能になってしまう。目の前のビジターセンターで確認をせねば・・・。
「すみませ〜ん、橋が壊れてるってどの辺ですかぁ」
「大樺沢沿いのコースです。先日の大雨で一部流されまして」

・・・ヤバイ・・・
「ぜ・・・全然ダメなんですか?」
「まぁ通れなくはないんですが・・・水量が増えると危険なので我われとしては通れるとはいえません」
「イヤァ・・・そのコース使って日帰りを考えてたんですけどねぇ」
「・・・
普通そんな計画考えません

 ・・・言われてしまいました。

 まぁ来ちまったもんは仕方ない、行ってみるか!

時間 ポイント 概要 歩行時間
(トータル)
 6:30 広河原 発
←登山口から望む北
・・・高いなぁ・・・
 7:30
 7:44
崩落地 休憩
     発
 大樺沢沿いに右側を歩くうちに、やがて崩落地に差し掛かる。道が塞がれ、
左岸に渡って行かなくてはならない。さて、橋は・・・
 「何だ、たいしたことないじゃん」
 板を何本か渡しただけの簡素な橋である。所々壊れているが、濡れるのを
覚悟すれば何のことはない。天候は薄曇りだったが、土砂降りで増水でもしな
ければ危険というほどのこともなかろう。ほっとした。
 橋を渡って小休止。
  1′00
 8:27
 8:42
二俣 着
    発
 橋を渡って左岸を歩くこと約20分(・・・だったかな)、また橋を渡って右岸に
戻る。そこからひたすら山頂目指して登るわけである。
 やがて、二俣に到着、ここで休憩。
 周りには、小さな青い花がたくさん咲いている。
  0′57
( 1′57)
「これはミヤマハナシノブというんですよ」

 近くで休んでいた登山者から教えてもらう。何でも他では咲いていない花だ とか。北岳の独自の生態系に感心する。
 9:44
 9:52
休憩  二俣のあたりからあった雪渓も、ようやく切れ目が見えてきた。あの切れ目
を過ぎれば八本歯のコルもひと踏ん張りだ。
 薄日が差していた天候も、上へ登るにつれ、ガスも上がってきた。今回はピ
ークでの見晴らしは期待できないだろう。まぁいいや、キタダケソウが見られ
れば!
  1′02
 (2′59)
 
   ↑大樺沢から望む北岳              ↑北岳バットレス
10:47
10:55
八本歯のコル
       発
 八本歯のコルの手前で、ほかの登山者とすれ違う。
「この上に黒百合が咲いてますよ」
 いいこと教えてもらった。今回はピークハントは目的ではない。花が目的な
のだ。ラッキー♪
   ′55
 (3′54)
 なんとか稜線に出れた。とゆ ーわけでここで黒百合を探して 撮影。・・・したのはいいけど、 ワシ黒百合って見たことないん だった。これでいいのか な・・・?
 あとは山頂に向かうだけ。念 願のキタダケソウは見られる だろうか。ワクワクしてきた♪
11:26 分岐  ガイドブックでは、山頂の南西面にキタダケソウが群生していると書いてあっ
た。・・・が、まったく見つけられず山頂が近づくばかり・・・
 ヤバイ、ピークは二の次で登ってきたはずなのに、本来の目的が達成でき
ないではないか!焦りを感じつつ、北岳山荘への近道に出る。
 もしかしたら・・・可能性に賭け、ピークを捨てて北岳山荘へと水平移動を始
める。
  ’31
(4’25)
北岳山荘への
近道
(脱線中)
 キタダケソウを探してピークを捨てる。
 ここの道は花が多い。なかなかいい道だ。・・・時間に余裕があればな(しくし
く)。
 いろんな花はあるんだけど・・・キタダケソウが見つからない。ここではない
のか?!このまま行ったら、北岳山荘までたどり着いてしまうのではないか。
なんだか目的がすりかわってしまいそうな不安に駆られつつ、前進・・・したい
んだけど前の団体さんが遅すぎる・・・
「ああ、この花は○×で・・・」
 みんな花を愛でつつ、和気藹々と山歩きを楽しんでます。とてものどかな風
景です。


こっちが日帰りじゃなきゃな。

 やはりもう咲いていないんだろうか・・・キタダケソウが見つからない苛立ち
と、差し迫る時間からの焦燥感にもはや限界。
「仕方ない、今回はあきらめよう(涙)」
脱線中
11:55 分岐(復帰)  元の道に戻る。忸怩たる思いを胸にしまいこみながら、一路山頂へと進
む。・・・仕方ないんだ、今回は時期が悪かったんだ・・・ああ悔しい・・・
復帰
12:10 吊尾根分岐  稜線に出る。
 ・・・あぁ、さっきの水平道も、もっと先まで行けば北岳山荘の手前で稜線に
出られるんだったのに・・・
 まだ引きずってます。
  ’15
 (4’40)
12:30
12:45
▲北岳  山頂到着。・・・やっぱりガスの中。こんな天気でワシ何しに来たんだろう・・・
ふと考えてしまう・・・
花を見に来たんだろうが
  ’20
(5’00)
「今日登ってきたんですか?」先に休んでいた登山者に声をかけられる。
 「はい、キタダケソウを見に来たんですけどねぇ・・・」
 「きれいだったでしょう?」

・・・咲いてたんですか?!

 詳しく話を聞く・・・ぇぇぇぇええええええええ?!さっきの水平道にさいてたん ですかぁぁあああ?!?!し・・・しかも、ワシが考えてた、稜線へまっすぐ上 がる分岐のあたりと・・・
 ・・・・山に登ってて、これほど悔しかったことはない。

近くまで行ったのにぃぃ・・・

 聞けば、今年の開花は6月10日ごろと例年より早く、もう咲いているのはそこ だけになってしまったと・・・引き返そう、とは思ったがもう予定では下山する時 間となってしまった。ってゆうか、16時半のバスに間に合うかとっても不安。 ヤバイ、ダッシュで降りなければ!!!
13:00 吊尾根分岐  一応、ポイントごとにタイムを記録していたが、もう何にも余裕なし。山頂か
ら広河原までのコースタイムは3時間、一応16時半のバスまでには45分の余
裕があるが・・・45分しかないのである。
 ガスもいつの間にか濃くなってきて、コルを下ってしばらくするうち、だんだん
道がわからなくなってきた。大樺沢を登ってきたのだから、逆に下ればいいの
は間違いないのだが・・・ほかに登る人も下る人もいない、一人ぼっち状態。
いったん不安になると、その不安がだんだんと膨らんでいったりする。大丈夫
か、ここを進めばいいのか・・・?もう二俣に着いてもいいんじゃないか、やっ
ぱり道を間違えたんじゃないか・・・
 そりゃそうだ、土曜日のこんな時間、登る人も山小屋に着く時間を考えたら
いるわけないし、日帰りの人間なんているわけないから誰も歩いてないん
だ・・・不安を抑えつつ、ノンストップで二俣へ到着。・・・ホッとした。
 でもやっぱりさみしいので、休憩を取らずにさらに下山。
  1’55
(6’55)
13:27 水平道分岐
14:40 二俣
16:00 広河原  予定の時間に30分の余裕を持って到着。よし、ちょっとゆっくりしよう。
 そこへゲートにいた職員の人が
 「あ、今ならバスに間に合いますよ!」

・・・イヤ、ワシ
その次のバスに
乗る予定
なんですけど・・・

 と思いつつ、つい走ってしまうワシがちょっと悲しい。
 とゆーわけで、最後まであわただしい日帰り登山でした。
 1’20
(8’15)

 とまぁ、本来の目的は達成できなかったが、ほかにもいろんな花々が楽しめたのでまぁいい山行ではあった。
・・・負け惜しみではあるが

 せっかくなので、撮った花の写真ものっけてみる。

 さて・・・
写真をのっけたのはいいが、この中で名前のわかる花
は、
左のミヤマハナシノブだけなんですけど。


 待てよ、いっぱい写真を撮ったけど・・・

その時間を
キタダケソウを探すのに
使うべきだったのでは?!


・・・次回、北岳リベンジ編へ続く・・・のか?!

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