わたしの生まれは名古屋の高級住宅地なのよ。ここよりも全然都会よ。
周りはたくさんおいしい食べ物やさんがあってね、お友達もたくさんいたわ。
1年ぐらいかしら、そこにいたのは。それがどうしてここに来たかって。

 ここのヤスヤンが単身赴任で、私が通うマンションに引っ越して来たって言うわけ。
夜遅く遊んでいると寂しそうに帰ってくるんで、ちょとお話し相手になってあげたのよ。
そしたら毎日ニャン缶を持ってきてくれてね。
だから私も帰ってくるのを待てってあげるようになってね、仲良しになったってわけ。

 でもね週末はもうひとつのおうちに帰ってしまってつまらなかったわ。
もっとひどいのは、10日もいない時があってね、
よそでお食事を捜さなきゃならない時は本当に困ったわ。
その年の冬は大雪でもう死にそうだったわ。
でも頑張ったの! 絶対帰ってきてくれると思っていたから。
うん! 帰ってきたわよもちろん! 
それからはお部屋にも入れてくれるようになってね。
でもお泊りはできなくてちょっと悲しかったわ。

 そして春になってボーイフレンドができたのよ。
「ゴマ」って言う子よ。そう「コマ」の父親。
ゴマの子供だからコマってつけてくれたんだけど、
今じゃよっちゃんなんか困ったコマちゃんなんて呼んでいるのよ。
ちょとおてんばさんなの。

 でもとうとうヤスヤンも東京の会社へ戻るときがきたのよ。
私もなんとなく変な感じがしてたの。時々私の顔を見て悩んでいたみたい。
電話でよっちゃんに、「無理だよねこれ以上は」って言ってたわ。
ここに来てわかったんだけど、この家にはたくさんお友達がいたのよ。

 ある日よっちゃんが来て荷物を運び出したの。
私は嫌な予感がしたんでヤスヤンの車の下に入り込んで動かなかったのよ。
だって私のお腹の中にはもうコマがいたんですもの。
でも車のそばにたくさんのごはん置いてヤスヤンは「ごめんよ」って言って
行ってしまったのよ。私はとっても悲しかったわ。

 でもそれがどうしてここにいるのかって? 
それはもうとても感動的なお話なので次回に回すわ。 
もったいつけるわけじゃないけどまたね来てね。
大きなおなか

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