スタート




少年は困っていた。
ここは天空大陸上の都市、ティカーノのアーガスティン大学寮。
外観年齢は7歳ほどで、黒い髪を中途半端な長さに伸ばした、濃い茶色の目の少年は周囲を見回した。
今日はこの寮に新入生が入る日なので、新入生やその手伝いをしている人々と荷物で通路はとても狭くなっている。
もとの通路はかなり広かったらしく、新入生のたくさんの荷物が積まれている今でも人一人くらいなら通れそうな幅だけは残っていた。
少年は肩から提げていた飾り気のない白いカバンから、茶封筒を取り出す。
封筒は大きめのパンフレットが入りそうなサイズで、宛名は「アーク」となっていた。
少年は細く形のいい指でその中から『大学寮の案内』というパンフレットを取り出した。
冊子の最後のページに大学寮の簡単な地図が載っている。
少年はため息をつきながらも、地図と周囲の景色を何回か交互に見た。
「で、現在地がわかんないのに地図って役にたったっけ?」
ほとんど聞こえないほどの小さな声で少年はそう言った。
そしてまたため息をつく。
予想しなかったわけではないが、やはり道に迷った。
もう一時間は寮の中を歩いているはずなのに、目的地がどこなのか全くわからない。
先天性方向音痴の気が強いという自覚だけはある少年はうんざりとしつつパンフレットを閉じた。
で、どうしよう。
右に行っても左に行っても後ろに行っても・・・事態は全く変わらない気がする。
「おい。」
声をかけられて、少年は反射神経で振り向いた。
振り向くと、濃い茶色の髪の非常に背が高く肉付きがいい青年が立っていた。
肉付きがいい、といっても贅肉はほとんどなさそうな青年である。
表情は明るく、目だけ笑っていない、ということもない。
「すいません、道に迷ったんですけれど、ここはどこですか?」
少年が遠慮なく聞くと、青年は首を傾げた。
「迷子?ああ、荷物が多いからどこもいっしょのような景色だもんな。」
そうそう、それで迷ってるんだよ。
「それで何回もここを通って行ったんだな。」
少年はあいまいに笑った。
この寮には貴族などの階級の人間が多いらしく、高値で売れそうな服がしょっちゅう目の前を通り過ぎていく。
明らかに安物の布でできた自分の服装は目立つだろう。
暗殺者やスリと勘違いされると困るから用心しよう、などと確かに思ってはいたが。
すでにスリと勘違いされても仕方がない状態になっているようだ。
「よかったら案内してやるよ。どうせ俺の荷物は整理し終わったしな。」
なるほど、地位の高い貴族の子供だということで荷物をはやめに運ぶこともできたのか。
少年は納得した。
「ありがとうございます。この部屋なんですけど。」
少年は『大学寮の案内』の簡易地図の赤い丸がふられた部分を指した。
青年は驚いたらしく、小声でうめく。
「ここか・・。特待生の部屋じゃないか。」
少年も目を丸くした。
「特待生のくせに忘れ物でもしたのか。」
青年はさわやかに笑って、歩き出した。
少年は歩幅の全く違うはず青年に置いていかれまい、と焦ったがその心配はなかった。
青年は意識して歩幅を狭くしているようだ。
貴族にしてはよくわかってる。
少年はそう思いつつ、大きめの歩幅で歩いていった。
「そういえば、今年の特待生もすごいらしいな。魔法を手足のごとく使えるとか、裏では注目の的とかいろいろあるが、本当か?」
青年が話している間に少年の表情は引きつり具合が大きくなってきていたが、周囲の喧騒のせいか気に留めるものはいなかった。
「そうなんですか。すごいんですね。」
「すごいんですねって、知り合いだろ?まあいいか、ほら着いたぞ。」
青年に言われて、少年は初めてそこが自分の目的地だと気付いた。
部屋のプレートも送られてきた通知と同じ。
「ありがとうございました。」
少年は素直に礼を言った。
「もうこんなところで迷うなよ。」
青年はそう言ってからちらっと笑い、さっきの場所に戻っていった。


 少年は鍵を使って部屋のドアを開けた。
不必要なまでに重々しい音がして扉が開く。
やはり重々しくゆっくりと閉まろうとするドアを手早く閉めながら、少年はため息をついた。
「まったく、やりきれないね。」
ドアの鍵を閉めると、少年は室内のテーブルに置かれた書類の学生の名前の部分をチェックした。
よし、ちゃんと全部「アーク」になってる。
今となってはどうでもいいことだが、これも実は偽名だ。
年齢も10才でちゃんとあっている。
「何だってもうウワサが出てるわけ?」
部屋で独り言を言っていると、自分が世界一のバカになったような気がしてきたため、少年は口を閉じた。
裏では注目の的、って何だよ。
そんな儲かりもしなさそうなこと、やってらんなーい。
脳内ではいろいろと愚痴を創造しつつ、アークは部屋の中をじっくりと見た。
どうせ一人しか人が入らないのに置かれている2段ベッド、いかに金がかかっているか見せびらかしたいとしか思えない最新型のテレビにビデオ、自分の体重でも思いっきり沈みそうなソファ、据え置き型のコンピュータ、やけくそに凝った飾りのついたクローゼット。
大学に入って知り合いが一人もできないなどという不自然な事態に陥らなかったら、しょっちゅう誰かが泊まりに来そうな部屋だ。
浴室と電子レンジもある。
アークはソファに沈み込みながら、郵送されてきた資料と部屋に置かれていた資料を見た。
そして気付く。
「うわ・・・、締め切り今日の昼じゃん・・・。もうすぐだ・・。」
アークは慌ててペンをとり、書類の記入事項を埋めていった。

 アークは誰に邪魔されることもなく歩いていった。
大学の構内は平和で緑にあふれている。
今回、魔導学部戦闘応用学科などという血の気の多そうなところに入学したアークも少々平和な気分に浸ることができた。
年齢を考えてもわかるとおり、アークは年齢不問の試験で合格して大学に入学した、いわばエリートである。
そんな感慨は今のところ全然湧いてこないが。
提出書類の期限が今日までということもあって、事務室への移動はとても楽だった。
他にも何人も目的地が同じと思われる学生がいたからだ。
とにかく後さえついていけばいい。
そう考え、実際アークは変わった色に髪を染めた学生の後ろに並んでいた。
前に並んでいる学生と思しき人物は髪を深い緑に染めていた。
肌の日焼け具合と考え合わせるととあまりにも人間味のない色だ。
宗教によっては人間は無から生まれ無にかえるとすることもあるので、そういう意味合いでも入っているのかもしれない。
と、その学生が振り向いた。
目は青。
無表情に振り向くため等身大のマネキンにでも見つめられているようで、はっきり言って不気味だ。
「・・・もしかして、貴方はアークさんですか?特待生の。」
そういう声ならかけてくれなくってもいいよ。
視線が自分に集まるのがイヤでもわかる。
へぇーあれが、などという声すら聞こえてきそうだ。
「まぁね。ご丁寧にどうも。そういう貴方は?」
今さらイヤがっていても仕方がないので普通に答えると、
「ディトナ・ハーディ」
という返事とともに封筒を渡された。
あて先はアークの部屋になっている。
「どうも。」
住所が丁寧な字できっちり書かれているのでここで受け取りを拒否しても後日投函されるだけだろう。
何の用だかわからないが、アークは封筒を受け取った。
それからも列に並んでいたが別に話しかけられなかった。
前後左右からコソコソヒソヒソ噂話をする声もちらほらと聞こえたが。
何でいちいち特待生呼ばわりされて、珍獣扱いされなきゃならないんだ。
アークが気にしたのはその点に関してだけだった。

 寮に帰ると、寮の一階の郵便受けに手紙が入っていた。
これで手紙を受け取るのは2通目だ。
住所がばれやすかったのだろうか。
そう考えて、郵便受けに入っていた茶封筒を見ると住所欄には何も書かれておらず、ただ宛名のみが書かれている。
ということは学生か事務からのものだろう。
宛名の字も汚いのでどちらとも言い難い。
部屋に帰ってから中身は読めばいい。
アークは自分の部屋がある階に行った。

 寮でまた迷ってしまい、アークが部屋に帰るころには日が軽く傾いていた。
部屋に戻ると、アークは早速茶封筒を開ける。
中身の簡素な便箋の上を幾度か視線が走り。
「・・・上等。」
アークは唇の端を吊り上げた。
手紙の内容は要するに「特待生だからって偉そうにしてんじゃねぇ。一回シメてやる。」といったものである。
外観が華奢なためよくあることだが、大学入学直後にごのザマだ。
一回しっかりシメ返して、同級生や上級生に思い知らせてあげないと、いつまでもこのテのお手紙がくるだろう。
手紙によると午後10時に屋上に集合とのこと。
夕食後、シャワーを浴びてから行けばいいだろう。
パジャマにも武器ぐらい仕込める。
さてと。
アークは室内のパソコンを見た。
そしてパソコンを立ち上げる。
仲間もパソコンを持っている。
できれば、無事事務処理が終わり何とか寮内で完全な迷子にならずに済んだことなどを言っておきたい。
幸い、パソコンはすでに通信可能な状態になっていた。
すぐにメールを出す。
夕食は学生同士の親睦を深めるため、立食パーティーのような形式である。
今のうちにやれることはやっておこう。
なけなしの私財をはたいて買っておいた正装を確認してから、アークは書類一式に目を通した。

 ああ・・・、貴族ってこんなもんなのだろうか。
晩餐会場でアークは天井を見た。
魔導学部の晩餐であるせいか、参加している学生のマナーはなかなか悪い。
ビールを他人にかけたりする人までいる。
フォークやスプーンの持ち方もおかしい人が多い。
・・・昔、厳しくやらされた礼儀作法って何だったんだ!?
アークは心の中で苦笑いした。
「ん?あの子供、何でここにいるんだ?」
う、この声は。
「こんばんは。」
アークはさっさと目の前の人物に挨拶をした。
「こんばんは。いや、特待生ってお前だったのか。悪ぃ、気ぃ付かなかった。」
寮で迷った時に部屋へと案内してくれた青年は笑った。
その横にはアークが思い描いていたような貴族の青年がいた。
髪や瞳の色合いこそ隣の青年に似ているが、他の部分は似ても似つかない。
礼儀作法は完璧、場を考えてか地味だが高そうな服。
「まあ、年からいってあんまりそれっぽくないし、気にしてない。一応、僕はアーク。」
「俺はフリスク。何逃げようとしてるんだよ、こっちがフリードリヒな。」
フリスクはフリードリヒの首に手を回しつつ言った。
「オレはそういうことに興味はない。・・・私はフリードリヒだ、よろしく。」
フリードリヒは明らかに迷惑そうに挨拶してきた。
「僕はアークです、よろしく。」
一応、もう一度挨拶をしておく。
「しっかし、その体格で実技はキツくなかったか?」
こちらの容姿をじっくり見てから、フリスクは不思議そうに言った。
ちぇっ、いいよ、いつか君並に大きくなるから。
どうでもいいことを考えつつ、適当に返事をしておく。
「魔法が使えるから、あまり苦労はしなかったかな。」
「その年でもう魔法が使えるのか。オレ、からっきしダメだからなあ・・・。」
フリスクは苦笑いした。
おいおい、じゃあ何で魔導学部なんかに入ったのさ。
顔に出したら失礼なことを考えていると、さっきまで嫌そうにしていた人物が言った。
「普通、魔法が使えるようになるのは入学後だろう。もう一通り使えるのか?」
気のせいか、フリードリヒの目が輝いているような。
人のことは言えないけど、もしかして、コイツ、魔法ヲタク?
やはり顔にも口にも出せないことを考えながら、
「何をもって"一通り"とするのかはわからないけど、基礎はできるよ。」
と答えておく。
「よかったな。似たよーなヤツがいたじゃねぇか、フリードリヒ。魔法使いか・・・。俺と同じ実技相手に当たらんくてよかったな。」
「何に当たったの?」
「封じ使い。魔術どころか剣まで鞘の中に封じやがるから、殴り倒してやったが。」
この青年の体格を考えるとすばらしい格闘が想像された。
封じ使いとやらがモヤシのような体型だったら1発で気絶させられてしまっただろうが。
すっごくあなた向けのモンスターですね。
などというわけにもいかないので、別の発言をしておく。
「僕に当たったら、まずかったな・・・。軽量級のパンチじゃロクにきかないだろうし。」
「ハハハ。それにしてもここ、テッキトーな会場だな。明らかに他の学部よりマナー悪いぞ。」
やっぱりそうなのか。
なぜかお金持ちの貴族と話が盛り上がり、アークは彼らとしばらく話をしていた。

 ふぃー、疲れた疲れた。
アークは自分の部屋に戻るとさっさと正装を脱いだ。
そしてシャワーを浴びる。
それにしても、高位の貴族のわりに豪快な性格だったなー。
アークは正式に名乗られなくても彼らの氏名(フルネーム)と彼らの実家のおおよその財産総額も知っていた。
これくらいは嘱託殺人業者としてのたしなみである。
たとえ殺せと言われても、フリスクは手強そうだ。
事実、惨敗した同業者も多い。
あの口調だと、フリードリヒも魔法使いらしいから普通の手段を使っていれば、彼も殺せない。
最近の貴族は強いねぇ。
アークはシャワーを浴び終えると、いろいろと武器を仕込んであるパジャマを着た。
まだ呼び出し時間まで間があるが、方向感覚を考え合わせればそう早くはないだろう。
一応、ちゃんとしたスニーカーを履いて、アークは屋上に向かった。

 アークが住む寮と同じ寮の別の一室。
そこには、小言を言いながらパソコンに向かっているフリードリヒとひたすら苦笑いするフリスクの姿があった。
4人部屋で、フリードリヒは寮生ではないため、彼らの他に3人の学生がいる。
「全く・・・、自宅のパソコンを持ってくるのはいいが、メンテナンスもできないのか。」
「悪い、悪かったってば。」
「ウイルスなど基本だぞ。なぜ身に覚えのないメールまで開くんだ。初心者でもあるまいに。」
「だー、悪かったって。」
謝りつつ、フリスクは夕食のパーティーで会った人間の顔を思い出していた。
立場上かなりの人間にあっている。
それにしても、あのアークってガキ、どっかで見た顔だな・・・。
どこかで確実に見ているのに、思い出せない。
あの中性的な顔からすると、会ったのはたぶん女性だろうがわからない。
あー、誰だっけ。
「おい、このアダルトサイトからの請求メールはいらないな?」
「ああ。俺見てねぇし。」
「それにしても特待生があそこまで小さいとは思わなかったな。」
「まーな。ゴツいヒゲオヤジだと思ってた。」
「あの年で魔法使いか・・・。世間は幅が広いな。」
「お前以外にそんなヤツがいるとはな。基礎は一通り、ってことは応用も間違いなくできるぜ。」
「「「え!?」」」
男3人の声が重なる。
フリスクもフリードリヒも思わず声のした方を見た。
フリスク以外の寮生3人が目を丸くしている。
「どうかしたのか?」
フリードリヒが尋ねると3人は顔を見合わせた。
「特待生に興味あったのか?話しかけりゃよかったのに。面白かったぞ。」
「いえ、噂がちょっとあって・・・。」
「何か先輩が屋上に呼び出したとかで・・・。」
フリスクとフリードリヒの顔が軽く引きつった。
先輩が何年生だかわからないが、あのアークの口調から考えて魔法の実力は互角かアークの方が上。
体術のほどは知らないが、パーティー会場での動き方を考えると素人ではない。
・・・どちらが勝ちそうかなどと言っていられるような状況でもなさそうだ。
どちらかが手加減抜きで立ち向かったら、どちらかの命はない。
「様子見に行くか。フリードリヒも来てくれ。」
フリスクが立ち上がって愛用している剣を背負う。
フリードリヒもため息をついて立ち上がる。
フリスクと同室の3人は一様にほっとした顔になる。
仲裁に入る一年生としては彼らが適任だからだ。

 何かケンカっ早いところに来ちゃったなあ。
屋上で先輩3人と対峙しつつ、アークは思った。
「ドブネズミの中でいくら頭が出てるからって、図に乗んなよ!」
別に乗ってないよ。
「あぁ、今は一応違うんだっけか?元・ドブネズミ君。」
うん、そうだね。
「ドブネズミからはドブネズミしか生まれないもんだがなぁ。」
遺伝の法則から考えて、それは正しいと思うよ。
アークは退屈さのあまり、先輩の言うことに心の中でいちいち一行コメントを付け加えていた。
彼らの言いたいことを要約すると「ドブネズミ(過去・現在問わず)は低姿勢で生活していろ」となるようだ。
まだ何もしていないのにそう言われても。
それとも特待生の90数パーセントは偉そうなのだろうか。
「聞いてんのかテメェ!」
そう怒鳴られ、アークは胸倉を掴まれた。
が、一瞬でその手が悲鳴とともに離れる。
「手に刺した針は抜くまで血は出ませんよ。血で服を汚すかどうかはご自由になさってください。」
アークはパジャマの掴まれてしわになった部分のしわを伸ばしながら言った。
「っのヤロ!」
アークは上半身を無造作にずらした。
さっきまで上半身があったところをナイフが通り過ぎる。
体勢を低くしてから右横に動く。
先輩方の突きと銃撃をそうしてかわしてから。
「ファイア!」
魔法で小さめの火の玉を生み出す。
先輩が魔術を用いて作った氷の矢が火の玉とぶつかり消滅する。
アークは首を傾げた。
銃弾を避けてから、魔法の構成を作り上げる。
先輩が足元を狙って投げたナイフを踏んでから。
「いけっ!」
アークは叫んだ。
声にならない悲鳴が上がる。
存在する物体全てを消滅させる空間を創り出したアークは、急激にそれを膨張させた。
この一撃で勝負は決まるだろうと思われた。
が。
「やめろ!捕まるぞ!」
聞き覚えのある声がした。
アークは創った空間を即座に消す。
フリスクが先輩2人、フリードリヒが1人の服の首根っこをつかんでアークの恐るべき攻撃を避けさせていた。
「こんばんは。」
ごまかしてがら挨拶すると、フリスクはため息をついて先輩の服を離した。
「先輩・・・。大丈夫ですか?お前も無事か?」
フリスクの声に呆れの色が強いのは気のせいではないだろう。
フリードリヒも先輩を立たせるのを放棄して、ため息をついている。
「僕は別に。先輩、手に刺さってるの抜いた方がいいですよ。効きの遅い軽めの毒が塗ってありますから。」
一言言うと、先輩は手の甲に刺さった針をあっという間に抜いて投げ捨てた。
「一部始終見てたわけじゃない。部屋に帰れ。先輩は保健室に連れてっとくから。」
「ありがとう。おかげで安眠できるよ。」
「事情は正直に話させてもらうからな。」
「いいよ。ありがと、おやすみ。」
アークはフリスクと少し言葉を交わして、フリードリヒに会釈をしてから、アークは屋上を去った。

 部屋に帰ってから、アークは事務室でもらった封書を思い出した。
疲れてるけど、一応読んでおくか。
アークは糊付けされた封筒を破り内容を見た。
・・・最後まで読み終えて。
「うへぇ・・・。」
もう感想はこれしか出てこない。
何てケンカっ早いところなんだ!
以前にいたところでもこんなにケンカっ早くなかったよ!
「拝啓
 
 突然のお手紙で失礼いたします。
 本日は折入ってお願いがございましてペンをとりました。
 先日、貴殿の強さをうかがう機会がございまして、つきましては私と戦ってはいただけないかと存じます。
 私の勝手な希望ですので、日時、場所につきましては貴殿の都合のよいようにお決めいただいて結構です。
 お手数ですが、日時、場所をお決めになられた際には同封の封筒でご返信ください。
 なにとぞよろしくお願いいたします。
 
                                敬具
 
 開空暦2013年4月3日
          ハーディ研究所所属 ディトナ
 アーク様                                                               」
文面の通り、返信用封筒が同封されている。
・・・あーあ、どうしよう。
END




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*atogaki*
書き始めてから書き終わるまでにだいぶ時間がかかりました。
しかも、まだ続編があるし・・・遅くなってすみません。
アークの嫌な一言はホントかウソかはイメージでお決めください。
それにしても今回は微妙だ・・・・出会い編だからかもしれないけど・・・・。