法律用語あれこれ 
保護と救済
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 保護と救済

 民法の解説書には「保護」という言葉がよく出てきますが条文には出てきません。
 民法20条の制限行為能力者の相手方の催告権、民法96条の詐欺や脅迫による意思表示の取消し、民法177条の不動産に関する物権の変動の対抗要件は、取引の安定化や第三者の保護で説明されます。
 取引内容や相手が分かっている当事者と異なって第三者には知り得ないからです。近年のように個人情報の保護が厳しい時代に年齢を確かめることさえ困難だからです。
 まして、「あなたは精神的な障害者ですか」とか、「正常な判断力をお持ちですね」など口にすれば人権侵害になりかねません。

 民法には保護という用語は見当たらないのは、対等の私人間に保護を持ち出す必要がないからでしょう。
 改めて確認することを「催告」といい、相手に反論できないことを「対抗要件」と具体的に示すだけです。
 親族編の「親権」章では、820条が親権を行なう者は、子の「監護」及び教育する権利を有し、義務を負うとあります。
 また、「後見」や「補佐及び補助」の章でも「監護」を使っています。
 そして、「扶養」の章も「扶養する義務」は出てきますが保護は見当たりません。

 保護という用語が使われる法律は、生活保護法、人身保護法、個人情報の保護に関する法律、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預金払戻し等からの預金者保護等に関する法律などがあります。
 その他には保護処分や保護司もあります。
 
保護は弱者救済として使われますがそうとも限らないようです。
 刑法25条の2(保護観察)や警察官職務執行法3条(保護)は別の場所への「隔離する」ことを意味します。

 民法の解説書には「救済」も出てきません。これも対等な私人間にはなじまないからでしょう。
 むしろ、
特別法の説明で保護と救済は同じ意味に使われています。
 たとえば、借地借家法の建物の賃貸借は、住居に限らず事務所・店舗・倉庫等の営業用の建物にも借家人の保護が図られています。
 また、農地法の賃貸借の小作権は契約の解除に都道府県知事の許可が必要なことから、物権の「永小作権」より強い権利になっています。
そして、消費者保護の視点から、宅地建物取引法の免許制、特定取引に関する法律(旧訪問販売法)のクーリングオフ、割賦販売法の抗弁権の接続制度、消費者契約法の諸規制もあります。
 雇用契約には、一方的な解雇は解雇権濫用の法理による規制のほかに労働基準法等の規制があります。
 損害賠償にも、失火責任法の重過失規定、国家賠償法の使用者責任、自動車賠償責任法の運行供用者の無過失責任、製造物責任法の製造物責任などがあります。

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