11 典型担保と典型契約(てんけいたんぽとてんけいけいやく)
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●典型担保(てんけいけいやく)と典型契約(てんけいけいやく)
民法の解説書では典型契約・有名担保、あるいは典型契約と有名契約という言葉が頻出します。
典型と有名は同じことで、法律に決められているか否かの違いです。
物権は法律で定められたものに限られます(物権法定主義)。
占有権・所有権・地上権・永小作権・地役権・入会権・留置権・先取特権・質権・抵当権の10種類です。
典型担保というのは、法律に定められた物権担保で留置権・先取特権・質権・抵当権です。
前の二つが「法定担保」、後ろ二つが「約定担保」といいます。
この他に利用される非典型担保には、所有権移転を伴う「譲渡担保」や人的保証の「機関保証」があります。
典型契約は民法の債権編にある13種類の契約です。
贈与・売買・交換・消費貸借・使用貸借・賃貸借・雇用・請負・委任・寄託・組合・終身定基金・和解です。
民法は契約自由の原則ですが、典型契約が13も細かく決められているのものの総則を読まないとわからないのも困ったものです。
現在検討されている民法改正は債権編が中心となるようで、関心のある方は岩波新書の「民法改正を考える」やちくま新書の「民法改正」などを読んでください。
【補足】 クルマの購入にあたっての思い出: 丸専手形と所有権留保
典型担保や典型契約の具体的な説明をしたら物権や債権のすべてにわたる説明をすることになります。
社会生活では民法に決めてない取引形態や担保の方法があります。
新車を何台も乗り換えてきましたが、自動車のクレジットやローンが普及する前には丸専手形で支払いをしていました。
貧乏人ですから、個人で当座取引(小切手発行)をすることはできないので自動車販売外車(ディーラー)から支払い専用の手形を得て、、毎月引き落としてきました。
ディーラーはこの手形を金融機関であらかじめ割引して資金運用をするわけです。
支払いができないと不渡り公告に乗ります。知り合いのもそんな人がいて大慌てしていました。
自動車メーカーによってはクレジットを拒み、丸専手形だけしか扱わないこともありました。
幸い寿命の良いクルマにめぐりあって、ローン地獄から脱出し、現金払いになってからは気楽になりましたが何でクレジットやローンにしないのかと不満でした。
ディーラーも車だけ販売しても利益が限られているので金利差(利ざや)で商売をしていたのでしょう。
ローンやクレジットでクルマを購入されている方は、所有者名と使用者名が異なっていることをご承知だと思います。
使用者なのに毎年自動車税の通知が届くのも不思議です。
これを「所有権留保」といいます。
所有権はディーラーで、使用者は返済が終わらない購入者です。
クルマは動産ですから、占有している者が所有者です。
それなのにディーラーが所有者になるのでしょう。
これはクルマには登録制度があるからなんですね。
非典型担保の譲渡担保は不動産で利用されますが、動産も所有権留保という形態で担保にしているわけです。
留置権や質権設定をすれば良いだろうと思われる方も居るでしょうが、占有しなければ権利を主張できません。
クルマは使わなければただの鉄の塊なんです。
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