八ヶ岳で入浴と山歩き
2007年08月16日〜17日


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 みはらしの良い温泉に入りたい、手軽に山を歩きたいという希望に応えて八ヶ岳へ出向いた。片道90分の山道でも休憩や撮影を加えれば我ケ家では半日くってしまうから日帰りではきつい。宿の予約もせずに出向くのはいつものとおりである。行きは高速、帰りはー般道の550Kmの走行だ。稲妻の中を甲斐大泉の温泉に立ち寄り、茅野市で泊まって北八ヶ岳の横岳に登り、奥蓼科や富士見の温泉に入浴して入笠山に立ち寄ったささやかな夏休みである。

◎首都高走行から雨模様

 うだる暑さに閉口し、午後に横浜脱出を図れば首都高の新宿あたりから今にも雨が降り出しそうにうす暗い雲がたれこめる。稲光に脅えて石川パーキングに停めると雨が降ってきた。「涼しくていいわ」と暑がりの妻がのんきな言葉をもらし、いつになくカメラの説明書を確める娘は外を気にしない。地図やガイドブックをしまい込み、ロープウエイの営業時刻や入浴先を調べる気配はいつものとおり欠ける。「これじゃ入浴も登山も無理だな」と言えば、「明日があるでしょ」と妻子は屈託ない。

◎稲妻にめげず入浴

 小雨になったので長坂インターを降りて甲斐大泉にある「パノラマの湯」をめざす。小海線の清里の次の駅前にあるというが、クルマで行動しているわたしには大泉や小泉の区別がつかない。「駅前だって書いてあるわ」と言われても、その駅へどう行くのかわからない。天女山をめざしたら着くのに呆れた。富士山が眺められる温泉といわれたって稲妻が光る天気では期待もできまい。人気の露天風呂には編み笠をかぶって入浴する客もいたがさすがに腰がひけて内湯にとどめた。晴れていれば低温の露天風呂につかれたが命とひきかえに入浴する勇気はない。ぬめりもあっていい風呂とは妻子の評である。玄関前の無料の足湯につかって笑いこけるライダーのほうが賢い。

◎暗い夜道を宿探し

 ハヶ岳高原ラインから鉢巻道路へ入るとまわりは真っ暗だ。原村にある「もみの湯」をめざしたが妻子は黙りこくる。道端の別荘に明りが灯っていても無関心である。たまにクルマを見かけるとほっとため息がもれる。「風呂はいいから早く宿を決めようよ」と娘が言い出すのもおかしい。茅野市へー気に下る暗い道を走れば、「ちゃんと運転してよ、こんなところへ助けに来る車なんていないんだから・・・」と娘は不安を隠さない。いつものとおり大浴場つきの諏訪のビジネスホテルに決めた。

◎ロープウエイで北横岳へ向う

 ハヶ岳は麦草峠を境に南北に分けられる。編笠山・権現岳・赤岳・横岳・硫黄岳・天犲岳までが南ハヶ岳で、縞枯山から蓼科山に至る山々が北ハヶ岳とされる。南北のちがいは見た目である。岩峰も多く猛々しい姿をしている南に比べると池も多くてなだらかに映る北は登山者に区別させるのだろう。若い頃は見栄っぱりだったから南ハヶ岳を歩いたが北ハヶ岳もけっこう辛い登りが続く。
 朝からうだる暑さである。「朝風呂に入ったからさっぱりしたわ」と妻子は動じない。国道299号から左折してビーナスラインへ向う林の中の道路でようやく涼しくなった。ピラ夕ス蓼科ロープウエイ乗場の駐車場は車もまばらである。お盆も過ぎた平日だからとタカをくっていたら100人乗りのゴンドラは定刻に観光客で満員になった。4日前の白馬ハ方ロープウエイのゴンドラの揺れに懲りた娘はしっかり手すりにしがみつく。頂上駅にある散策路の「坪庭」は妻子が初めて歩く。数年前に妻と訪れたときはわたしだけが歩き、山歩きに関心がない妻は待合所で待っていた。八方池まで往復した娘は鼻息も荒いが、入浴のためにつきあう妻はうんざり顔である。

◎喘ぎながら北横岳を登る

 坪庭から左折し、はい松に隠れた山道を横岳へ向う登山者は少ない。「60分て書いてあるわ、50分って言ってたくせに・・・」と妻が不満を並べる。そのくらいの誤差がどうした。経験や体力に応じて誤差がつきまとうのも山歩きである。「この間ちやんと歩けたんじゃないか、乗鞍岳や陣馬山だって登れたお前には軽い軽い」と声をかければ、「そうよお母さん、大丈夫よ。バテたらお父さんに脊負ってもらえばいいのよ」と娘がそそのかす。
とはいえ、林の中を丸太階段や岩をへっつて歩くのは辛い。いつもより休みを増やし水を飲ませて妻の足どりにあわせて登る。ときおり眼下に見える坪庭や彼方にそびえる山々の解説も加えると妻も渋々歩く。ときおりアルバイ卜休みの息子から妻や娘に携帯メールが入るから休みも増える。「うるさいな。こっちは山を歩いてるんだよ。メシぐらい自分で作りな !」と娘が声を荒立てる。先日の薄着とヒール靴の登山に懲りた娘は完全な登山装備で口ぶりも山女になっている。

◎北横岳の南峰と比峰を往復

 横岳ヒュッテから頂上へは10分の道のりだが急登なのでわたしが先を進む。山頂前で妻子を待ちながら周囲を眺めると南ハヶ岳の先に北岳・甲斐駒ケ岳・千丈岳などの南アルプスの峰々がくっきり姿を現わす。ゼイゼイ息をはずまして妻子がようやく着けば、「ハ方尾根の山道よりきついわ」と娘が批難する。「歩く時間は短くても足場が悪いわ」と妻も言い出す。同じことはわたしも山歩きの相棒に何度つぶやいたことか。
 南峰で360度の展望を目にして妻子はさきほどの不満を忘れて展望を楽しんでいる。南アルブスだけでなく、中央アルブスの木曽駒ケ岳の横に御嶽山、そして乗鞍岳から槍ヶ岳に至る北アルプスも雲間に見える。後には浅間山もあるが雲に隠れている。家族連れも多いが、中学生がー番元気で親がバテるのは我ケ家と似ている。ー人で北峰へ向うと妻子がついてくるのも意外だ。「ここまで来て寄らないことはないわ」と居直るのに呆れた。南峰は蓼科山がじやまをするから展望は今ひとつである。下り道で娘が、「お父さん、山道に下りがなければいにのにね」というのに同感する。

◎鹿がうろっくハヶ岳

 山を歩けばサルや鹿に出会うのは不思議ではない。雷鳥やクマだって見近に見かけることもある。それを動物園でしか見たことのない家族がクルマの中ではしゃいだり脅えるのも気が散るもとだ。「今年は花が少ないわりにセミが異常発生し、徘徊する鹿の姿が目につきます。坪庭の草木にも食べあとが残り、下に住んでいる鹿が上ってきてイノシシを追い出しているようです。」これはピラ夕ス蓼科ロープウエイを下るときの案内人の説明である。甲斐大泉から天女山へ向かう道端で親子ニ匹がのんびり歩き、茅野市から奥蓼科温泉へ向かう途中でも道を悠々と横切る姿を見かけた。動物の生活圏に進入しているのを忘れ、そのたびに妻や娘が騒ぎ出すのもわずらわしい。

◎温泉を二つこなす

 登山を終えて奥蓼科温泉郷にある「渋の湯」をめざし、「湯みち街道」と表示された県道191号を走ると道の狭さや行き交う車の少なさに脅えた妻子は黙りこむ。わたしが初めて天狗岳へ登ったあとに入浴した懐しい温泉をめざすが家族は関心を示さない。ガイドブックを眺めて源泉掛け流しでないとかシャンプーを置いてないと不満を並べる。「明治館」は入口が狭くてあきらめ、「渋・辰野湯」は値段が高いと言われ、ようやくたどりついた「渋御殿場」は石けんはあるがシヤンプーの用意はしていないのを確かめてすごすご引き返す始末である。
 しかたないから、山道に入って国道299号へ抜けるとすれちがい困難な場所もある。これも相模原市の藤野町へ向う県道に比べれば広い。ようやく源泉掛け流しの硫黄泉の「渋川温泉保科館」へ着けばご機嫌なのも勝手である。「お湯は満足したけどまわりはほったらかしなのが山の温泉ね」とスパ慣れした妻子の評である。
 それじゃと富士見町へ向かう。数度訪れている「ゆーとろん水神の場」に入れば先ほどの不満はさっぱり流れている。露天風呂が8種類あって、内湯だけが硫黄泉だろうとこざっぱりした温泉が好みな妻子にあっているようだ。清潔でさっぱりという評価ではわたしが山歩きに使った温泉は受け入れられないはずだ。


◎入笠山に立ち寄る

 富士見峠で、国道20号を走るたびに立ち寄るか迷っていた入笠山(にゅうがさやま)へ向う。17時過きているが片道30分でたどりつくとふんだ。頂上からは南アルプスの峰々が眺められるというが、そういうことよりハケ岳を眺める好ポイン卜へクルマで登れることがわたしをそそる。つづれおりのカーブを黙って走ると妻子は何も言わない。途中には大型車の進入禁止やすれちがい困難な林道の警告もあるが十分手入れのされた道である。
 18時過ぎた入笠高原は静まりかえっている。窓にアブが近づいて娘は大騒ぎである。このまま進めば伊那の高遠町へ行ってしまうので戻ることにした。途中で停車してハヶ岳を眺めれば、「あそこを歩いたのね」と妻子が感激するのもおかしい。北横岳からは、南アルプス千丈岳と中央アルプス空木岳に広がる入笠山が見える。そんなわたしの気も知らず、「水神の湯へ入りたいわ」と言い出す妻子がいる。

◎国道20号を戻る

 相変わらず中央道は談合坂から小仏トンネルまで17kmの渋滞である。5日前の白馬からの帰途に岡谷から相模湖まで国道20号を走ることにした。このルートは独身の頃は何度も行き来したが家族を連れて走ることはほとんどない道路だ。笹子峠から上野原に至るカーブの続く道幅の狭い道路は妻子が嫌うもののわたし好みの道である。先日は雨交じりの中央道25kmの渋滞で上野原市街がやけに混んだが今日はクルマも少なくて虚をつかれた。渋滞の回避とか高速道路代の節約と家族に説明しているが単調な高速道路の走行は今もなじまないだけである。相模湖駅前の渋滞を除けば疲れたときにいつでもクルマを停められるのも捨てがたい。いたずらに接近したり、無駄な加減速をしないドライバーが走行するのも心地よい。


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