檜原村の「数馬の湯」へ
2007年07月01日


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 西多摩郡檜原(ひのはら)村は山梨県の小菅村や上野原市と接する東京都の西の端にある山あいの村である。今は亡き瓜生卓造さんの名著『檜原村紀聞』(東京書籍)が懐かしい。そこに暮らす人々の生活と山歩きを交えた聞き書きで愛読したものだった。瓜生さんは『多摩源流を行く』や『奥多摩町異聞』で奥多摩を多面的に描いていた。それがきっかけで青梅から奥多摩町に向かい奥多摩周遊道路を使って何度も檜原村へ入り五日市へ抜けた。といっても、通過しただけで入浴した記憶がない。三頭山の尾根線で止まっても谷あいはさっと通り過ぎるだけだった。 

 箱根の日帰り温泉の不満を並べる妻をなだめるために思いついたのが先週は諦めた檜原村である。圏央道が開通して奥多摩も身近になったが、あきる野インターから五日市を経由して21kmは長い(日の出インターからは15kmという)。横浜に住んでからまったく訪れていないのが心細い。武蔵五日市駅前を過ぎると次第にカーブが増し、道幅が狭くなる。同乗している妻はJR五日市線が走っていることさえ知らない。木の香りが漂い目に痒みを感じるのも花粉症のせいだろう。背丈の高い並木に囲まれた久しぶりの山道走行に緊張した。

 数馬(かずま)は上野原あきる野線(檜原街道)から外れ、南秋川に沿っていて檜原村の中でも西の山奥である。また、「檜原温泉センター数馬の湯」は平成8年にできたからわたしがドライブをしていたころにはなかった施設である。それでも、あきる野インターから40分で着いた。温泉はそれほどクセがない。洗い場は木の桶と腰掛けでなごむ。浴場はつつましやかで内風呂3、露天風呂1、水風呂1、サウナ1である。無色透明な湯の中で肌を摩るとすべすべする。内風呂は打たせ湯になっている。適度なぬめりがあって湯上がり後もさっぱりしている。ここは喫煙所や休息室を広くとってある。周辺の温泉が19時で終るのに22時まで営業しているのも嬉しい。

 今回は思いつきで出向いたが、檜原村には滝が多い。配布されている滝めぐりマップには13の滝が掲載されている。また、マス釣り場や別の温泉もあるし、とろろ飯も美味しい。今度は奥多摩湖を経由して子どもを連れて訪れたいものである。

追記:

 瓜生さんは山やスキーを扱った著作が多いが、『横浜物語』(東京書籍・1979(昭和54)年)という開港後の横浜に関わった人物を描いた異色な作品もある。こちらは歴史をたどる面が強いが、わたしの好みは山と生きる人々を描いたルポルタージュである。1920年に東京で生まれ、1982年に亡くなった。


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