民法あれこれ図解編 
損害賠償の基礎知識
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 もくじ
 1損害賠償が認められる場合
  ◎債権編の損害賠償
  (1)債務不履行と損害賠償
  (2)事務管理と損害賠償
  (3)不当利得と損害賠償
  (4)不法行為と賠償責任
 2賠償の範囲
 3賠償の方法
 4損害賠償の基本用語
  @故意・過失(帰責性・帰責事由)
  A違法性
  B因果関係


 ここでは民法に限り、民法の条文を抜き出して損害賠償の基礎的な知識を整理しました。判例はいっさい触れていませんのでご注意ください(有斐閣ほかに判例を加えた六法が出版されていますので、取り上げた条文で調べてください)。
 また、民法に限っても損害賠償は債権編に限りません。そういうこだわりも加わり、一般の民法解説書と異なる部分もあります。
 基本用語である「故意・過失」(帰責事由)、違法性、因果関係については最後に整理しています。


1損害賠償が認められる場合

 損害賠償は債権編で取り上げられますが総則編や物権編にも該当する条文があります。そこで、民法をざっと眺めたときに目についた条文を並べてみました。この他にも条文があるかもしれませんが参考にしてください。
 債権編の損害賠償は、契約と契約以外に区分されて説明させますが、契約・事務管理・不当利得・不法行為に分けて別に説明しています。

 かっこ内の数字は民法の条文です。

 ・債務不履行債務の本旨に従った履行をしないとき(415) 

 ・一般不法行為故意または過失により他人の権利や利益を侵害(709)、財産以外の損害(711)、近親者の損害(712)

 ・特殊不法行為:監督義務者等責任(714)、使用者責任(715)、注文者責任(716)、工作物責任(717)、動物占有者責任(718)、共同不法行為責任(719)

 ・無権代理人の責任(117)

 ・占有者による損害賠償(191

 ・土地の所有者隣人が受けた損害(209)

 ・公道に至るための他の土地の通行権者他の土地に与える損害212

 ・連帯債務者間の求償は法定利息その他の賠償を包含する(442)

 ・寄託者による損害賠償(661)

 ・当事者間の契約  ※ 契約自由の原則公序良俗とのバランス



◎債権編の損害賠償

(1)【契約】債務不履行と損害賠償


 ★債務不履行でも損害賠償にならない場合がある

 ★債務不履行の対応には、
 @
損害賠償(415)、A強制履行の請求(414)、B解除権の行使(545)がある

 1債務の本旨に従った履行をしないことの意義

   @契約後に履行遅滞履行不能不完全履行が生じた場合
   A原始不能でないこと(初めからできない契約は無効)
   B違法性があること(同時履行の抗弁533は債務者の正当な権利行使)

 2帰責事由(債務者に帰すべき事由)があること
  
@債務者の故意または過失
   A履行補助者(従業員など)の故意または過失

 3損害が不履行と因果関係を持つこと


(2)
事務管理と損害賠償

・緊急事務管理は、悪意または過失がなければ損害賠償の責を負わない(698)

・本人のために有益な費用を支出したときは本人に償還を請求できる(702@)

・本人のために有益な債務を負担した場合は本人に償還を請求できる(702A)


(3)不当利得と損害賠償

善意の受益者は、その利益の存する限度において返還する義務を負う(703)

悪意の受益者は、利益に利息を付して返還するほか、損害賠償を負う(704)

不法な原因のために給付した者は、返還を請求できない(708)


(4)不法行為と賠償責任

・民法の一般不法行為特殊不法行為の区別に、特別法の賠償責任が関わる

・特別法には責任が軽減される不法行為がある:失火責任法は重過失に限定

・一般不法行為の要件(709712713720) 通常の損害賠償

@故意または過失、A権利または利益の侵害、B損害の発生、
C因果関係、D責任能力、E違法性の阻却理由(正当防衛など)がない

・特殊違法行為 標題が「責任」になる(714715716717718719

・一般不法行為と特殊違法行為では責任能力の立証者が異なる



2賠償の範囲

 特約がない限り、賠償は原因となった事実と相当の因果関係に立つ損害に限られる。 遅延賠償・填補賠償・因果関係

 @債務不履行は「通常生ずべき損害」を賠償することを目的(416)
 A事情を予見」または「事情を予見できた」損害も賠償(416A)
 B   金銭債務の不履行の賠償は法定利率で行い、債権者は損害の証明を要しない。また、債務者は不可抗力の抗弁ができない(419)

 ・財産的な損害のほかに、名誉など精神的な損害も賠償に含まれる(710

 ・債権者や被害者の落ち度は、裁判所が過失相殺を考慮する(418722A)

 ・損害賠償額の予定(420)  違約金は賠償額の予定と推定する(420B)

 ・他人の生命を侵害した者は、財産権が侵害されなかった場合も賠償(711



3賠償の方法

 原則

 ・損害賠償は、別段の意思表示がないときは金銭をもってその額を定める(417)

 ・不法行為の損害賠償は417条を準用する。

 例外

 ・名誉毀損の原状回復は被害者の請求により、裁判所が処分を行う(723)

 ※710条は人の身体・自由・名誉にかかわる「人格権」であり、財産権や身分権と区別される人固有の権利。

 ※回復方法には謝罪広告、記事訂正広告などがある

民法以外の被害者救済
 ●原状回復:不正競争防止法14条、特許法106条、著作権法115条、鉱業法111
 ●違法行為の差止め:不正競争防止法3条


4損害賠償の基本用語

 @故意・過失(帰責性・帰責事由)

 ・故意 @行為の結果を予測(故意)、A予測を知りながら行う(未必の故意)

 ・過失 A予見したが無視(認識ある過失)、A不注意で予見を忘失(過失)

 ・抽象的過失 経験や知識により予見できる注意義務を果たさない過失

 ・具体的過失 通常の注意義務を果たさなかった過失

 ・重過失 注意義務違反が著しい過失

 A違法性

 ・違法性 正当な事由がなく他人の権利その他の生活権利を侵害すること

 ・違法性の阻却 正当な権利行使は違法性がない
    @    正当防衛 A緊急避難 B正当行為 C被害者の承諾 D事務管理

 B因果関係

 事実的因果関係(自然的因果関係):過失ある違法行為と損害発生の結びつき

 法的因果関係:事実的因果関係を基に、損害と関係する責任に絞った関係

 ・相当因果関係説: 通説・判例
 
通常生ずべき損害を基準とし、予見または予見可能な場合に限定する

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