図解編
権利義務の成立と第三者への対抗
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権利能力は出生に始まりますが、その権利がどんなものかは総則編ではわかりません。それは他の編の条文で具体的に論じられます。権利義務は法律行為だけに限りません。法律行為は権利や義務の変動を求める意思表示ですが、意思の通知や事実の通知は「準法律的行為」とされますので権利や義務の確認だけなら法律行為になりません。ですから、権利や義務の成立を法律行為に限定し、意思表示だけとするのは無理があります。
とはいえ、法律行為は意思表示に基づきますから、無理を承知でこれから権利義務の成立と第三者への対抗に飛躍させます。財産権と身分権に共通するものは総則でまとめておこうというわたしの勝手な判断ですから民法の解説書と異なります。
権利や義務を変動させる原因となる事実をまとめて「法律要件」といいます。この要件を備えることで生じる権利関係の変動を「法律効果」といいます。要件と効果を結びつけるのが当事者の意思と行為です。一定の効果を求める当事者の意思と得られる法律効果を結びつけるのが「法律行為」です。権利や義務はそうして成立します。
法律行為は意思表示どおりの効果が得られたものといえます。つまり、互いの意思が有効な場合です。意思が望んだ法律効果として実現しない場合が無効です。
法律行為は、一人の意思表示で成立する「単独行為」、同じ方向に向けた二人以上の意思表示が一致して成立する「合同行為」、対立する2つの意思表示で成立する「契約」に区分されます。単独行為は契約の解除や取消し、合同行為は法人の設立や解散などに限られ、最も一般的な法律行為は当事者が交わす契約です。
(1)権利の発生
@原始取得・・・無主物先占、遺失物取得、取得時効
A承継取得・・・相続、遺贈、合併、贈与、売買
(2)権利の変更
@主体の変更・・・承継
A内容の変更・・・数量の変更(賃料の増額)、性質の変更
(3)権利の消滅
@絶対的消滅・・・滅失による所有権消滅、弁済による債権の消滅、消滅時効
A相対的消滅・・・権利の移転(売買・贈与)
当事者間で契約が成り立つ要件を「成立要件」といいます。互いの意思表示が基本です。
成立した契約を第三者に示すとともに権利者である主張を保つための要件を「対抗要件」といいます。これは財産の種類や性質に応じて登記・登録・引渡しなどの手続が絡みます。
いずれの場合にも時効(取得時効と消滅時効)がかかわります。
成立要件や対抗要件は財産権だけと勘違いしますが身分権にも及ぶことに注意してください。それが法律行為とかかわらせて取り上げる理由です。
民法の総則は、「民法総則に親しむヒント」で触れましたが物権や債権という財産権の総則に過ぎない面があります。ですから、親族や相続といった身分権には関係がないかのように映ります。
そこで図解:当事者と第三者.pdf を参考にしてください。
ここではあらましだけを取り上げます。
(1)当事者の成立要件
@物権・債権は当事者の意思表示で足ります。合意ですから契約書は原則として不要です。
A保証契約は必ず書面で行うことになっています。
B債権の契約には物の移転を要する契約があります。
C婚姻・離婚・縁組・離縁は書面をもって提出する義務があります
D遺言は定められた要式で作成し、裁判所の検認が必要です。
(2)第三者への対抗要件
@不動産の得喪、変更、賃貸借、夫婦の財産契約、共有財産の分割、相続した不動産は登記が必要です。
A動産の譲渡は引渡しが必要です。
B債権の譲渡は種類に応じて通知、裏書、登録が必要です。
C債権譲渡は譲渡禁止の特約がある場合は譲渡できません。
D指名債権は債務者への通知と承諾が必要です。