図解編
人と人がかかわる形態
トップページに戻る 目次ページに戻る
1 当事者の呼び方
当事者は人と人のつながりの基本パターンですがさまざまな状況で使い分けられています。
|
内 容 |
当 事 者 A |
当 事 者 B |
物 権 |
占有権 |
占有者(譲渡人) |
被占有者(譲受人) |
所有権 |
所有者(権利者) |
所有者(義務者) |
|
地上権 |
所有者 |
利用者(地上権者) |
|
地役権 |
所有者 |
利用者(地役権者) |
|
永小作権 |
所有者 |
利用者(永小作人) |
|
留置権 |
債権者(留置権者) |
債務者 |
|
先取特権 |
債権者(先取特権者) |
債務者 |
|
質権 |
債権者(質権者) |
債務者(質権設定者) |
|
抵当権 |
債権者(抵当権者) |
債務者(抵当権設定者) |
|
根抵当 |
債権者(根抵当権者) |
債務者(根抵当設定者) |
|
債 権 |
契約の成立 |
申込人(売ろう) |
承諾人(買おう) |
売買契約 |
売主 |
買主 |
|
贈与契約 |
贈与者 |
受贈者 |
|
貸借契約 |
貸主 |
借主 |
|
賃貸借契約 |
賃貸人・地主・家主 |
賃借人・借地人・借家人 |
|
雇用契約(こよう) |
使用者 |
労働者 |
|
請負契約(うけおい) |
注文者 |
請負人 |
|
委任契約(いにん) |
委任者 ※委託 |
受任者 |
|
寄託契約(きたく) |
寄託者 |
受寄者 |
|
親 族 |
親子関係 |
実子(嫡出子・非嫡出子) |
親 |
養子関係 |
養子 |
養親・実父母 |
|
親権(養子を含む) |
未成年者 |
親権者・後見人 |
|
後見 |
被後見人 |
後見人・後見監督人 |
|
保佐 |
被保佐人 |
保佐人・保佐監督人 |
|
補助 |
被補助人 |
補助人・補助監督人 |
|
相 続 |
相続 |
被相続人(死亡者) |
相続人・代襲相続人 |
相続財産の分離 |
相続人 |
相続債権者・受遺者 |
|
遺贈 |
受遺者 |
遺贈義務者 |
|
特定遺贈 |
遺言者 |
特定受遺者 |
|
包括遺贈 |
遺言者 |
包括受遺者 |
2 当事者を取り巻く人(広義の第三者)
民法の第三者は当事者以外の者です。当事者の意思を知っていたか否か(悪意・善意)や対抗要件に登場する「第三者」だけではありません。図解:人と人がかかわる形態で4つのパターンを示しましたが、3の「本人に代わる者」と4の「第三者」では性格が異なります。
そこで、第三者を次のような区分をしました。条文は別に記載します。
民法の条文を読むときは、その第三者がどんな人なのかを確かめる必要があります。
1当事者を補助する人
本人の意思を知っているので、法律上は「悪意」になります(不動産登記法第5条など)。
@ 代理人・・・・本人のために意思表示を行い、相手の意思表示を受ける人。
・法定代理人・・・・親権者、後見人、保佐人、補助人、監督人、財産管理人、特別代理人
・任意代理人・・・・代理人、表見代理人、復代理人、表見代理人、無権代理人、遺言執行者
A受任者(委任契約)・・・・専門知識や経験で本人にアドバイスを行う人。
B受寄者(寄託契約)・・・・本人の物を預かる人。預金は消費寄託です。
2当事者の義務が及ぶ人
本人の意思とかかわりなく、地位や契約で義務や責任を負います。
@共有者・・・・管理・費用の負担、放棄や死亡による持分の帰属
A承継人・・・・売買や相続で権利や義務を引き継ぐ。特定承継人と包括承継人、共同相続人
B物上保証人・・質権や抵当権が設定される担保の提供と本人の債務不履行による物権の喪失
C保証人・連帯保証人・・・債務者が不履行となった場合に弁済(支払)義務を負う。
D連帯債務者・・・他の債務者が債務不履行となった場合に債務総額の弁済(支払)義務を負う
3当事者の権利を請求し、肩代わりする人
本人の意思と異なる場合があります。
@利害関係人・・・主に、本人に代わって権利を請求します
A第三者弁済・・・当事者の反対や債務の性質に反しなければ第三者が弁済(支払)できます。
B代位権者・・・・特定の人が債務者に代わって弁済(支払)し、債権者の権利を行使します
4当事者の意思に反した行為をする人
民法第177条(物権の対抗要件)で第三者とならない者。
事情を知っているので「悪意」になる。
@背信的悪意者(判例)・・・最判昭43・8・2背信的悪意者、最判平8・10・29悪意者からの転得者
A不法占拠者(判例)・・・・最判昭25・12・19不法占拠者
3 当事者を取り巻く人(民法の条文)
枝番がついた条文は( )で表示しています。【例】876条の6 → 876(6)
|
区 分 |
条 文 |
内 容 |
1 |
法定代理人 |
5、6、98(2)、124、158、724、797、804、811、832、917 |
法定代理人は親権者から代理人までいますが、条文に「法定代理人」となっているもの。未成年者、時効の停止、不法行為、養子縁組、離縁、親子間の消滅時効、相続の承認・放棄期間 |
特別代理人 |
775、826、860 |
嫡出否認の訴え、利益相反関係 |
|
親権者 |
818〜837 |
親族編の条文と総則編、(5同意・6許可) |
|
後見人 |
838〜874、9 |
親族編の条文と総則編、9取消し |
|
保佐人 |
876〜876(5)、13 |
親族編の条文と総則編、13同意 |
|
補助人 |
876(6)〜876(10) |
親族編の条文と総則編、17同意 |
|
財産管理人 |
25〜29 |
不在者の財産管理 |
|
相続財産管理人 |
918〜958 |
相続人不存在の財産管理 ※上記の準用 |
|
遺言執行者 |
1006〜1020 |
指定、欠格事由、権利義務、地位、報酬、辞任 |
|
代理人 |
99〜106、108、111 |
効果、瑕疵、行為能力、権限、選任、消滅 |
|
復代理人 |
107 |
権限 |
|
表見代理人 |
109〜110、112 |
代理権付与、権限外行為 |
|
無権代理人 |
113〜118 |
相手方、追認、責任、単独行為 |
|
受任者(委任契約) |
643〜655 |
注意義務、報告、報酬、解除 |
|
受寄者(寄託契約) |
657〜666 |
注意義務、665委任規定の準用 |
|
2 |
共有者 |
249〜261、282、284、292、398(14)、584、668、999 |
所有権第3節のほかに地役権、買戻し特約売買、組合財産、遺贈の物上代位にもあり |
特定承継人 |
200A、254、286 |
占有回収の訴えを受け、共有物の債権、承役地の修繕費用などの負担 |
|
包括承継人 |
120、148、187、380、756、759 |
取消権、時効の中断、占有の承継、抵当権消滅請求はできない、夫婦財産の対抗要件 |
|
物上保証人 |
351、372 |
質権と抵当権の求償権 |
|
共同相続人 |
898、902、904(2)、905、907、911、912、913、923 |
効力、相続分の指定、寄与分、遺産分割協議、担保責任、資力のない共同相続人 |
|
保証人 |
454〜465 |
連帯保証人には抗弁権なし、債権者から債務総額の請求を受ける場合がある。主たる債務者への請求、保証人の負担割合、連帯保証人の一人に生じた事実の影響、求償権 |
|
共同保証人 |
|||
連帯保証人 |
|||
連帯債務者 |
432〜445 |
連帯債務者は債権者に債務総額の請求を受ける場合がある。負担割合、連帯債務者の一人に生じた事実の影響、求償権 |
|
3 |
利害関係人 |
25、26、27、30、32、843、863、915、952、976、979、987、1008、1019 |
不在者の財産管理、管理人の解任・職務、失踪宣告、成年後見人の選任、後見事務の監査、相続の承認・放棄期間、相続財産管理人の選任、遺言執行者の解任、遺言確認の請求 |
利害関係を有する者 |
374、398(5) |
抵当権の順位変更、根抵当権の極度額変更の承諾 |
|
不利益をうけるべき者 |
387 |
賃貸借の対抗力の承諾 |
|
第三者弁済 |
474 |
債務の性質や当事者が反対しなければできる |
|
代位権者 |
499、500、501 |
任意代位は債権者の承諾、法定代位は当然代位 |
4 民法が規定する「第三者」の条文
条 文 |
概 要 |
備 考 |
94 |
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない |
意思表示 |
96 |
第三者が詐欺を行なった場合においては意思表示を取り消せる |
意思表示 |
99 |
第三者が代理人に対してした意思表示は、本人に対して効力を生じる |
代理人 |
107 |
復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う |
復代理人 |
109 |
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。 |
表見代理 |
110 |
代理人がその権限外の行為をした場合に、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき、代理権を与えた者は責任を負う |
表見代理 |
112 |
代理権の消滅は善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない |
表見代理 |
116 |
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 |
無権代理 |
122 |
行為能力の制限によって取り消すことのできる行為は、取消権者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない |
取消すことができる行為の追認 |
166 |
始期付権利又は停止条件付き権利の目的物を占有する第三者のために、その占有開始の時から取得時効が進行することを妨げない |
消滅時効進行 |
177 |
不動産に関する登記をしなければ第三者に対抗することができない |
不動産の変動 |
178 |
動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができない |
動産の譲渡 |
184 |
(本人の指図による占有移転)第三者は占有権を取得できる |
占有移転 |
204 |
(代理占有権の消滅事由)第三者のために占有物を所持する意思表示 |
占有権の消滅 |
335 |
一般先取特権は、登記をした第三者に対して行使することができない |
一般先取特権 |
336 |
一般先取特権の対抗は、登記をした第三者に対してはこの限りでない |
一般先取特権 |
342 |
質権者は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する |
質権の内容 |
352 |
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない |
質権の対抗力 |
365 |
(指図証券)質権の設定の裏書をしなければ第三者に対抗できない |
権利質 |
369 |
抵当権は、第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する |
抵当権の内容 |
378 |
抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の要求に応じてその代価を弁済したときは、抵当権は第三者のために消滅する |
代価弁済 |
411 |
(選択債権の)選択は、債権の発生にさかのぼって効力を生じる。ただし、第三者の権利を害することはできない |
選択の効力 |
414 |
その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる |
履行の強制 |
466A |
債権の譲渡は、当事者が反対の意思を表示した場合には適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗できない |
債権の譲渡性 |
467A |
(氏名債権の譲渡)の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債権者以外の第三者に対抗することができない |
指名債権の譲渡 |
505A |
相殺の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗できない |
相殺の要件 |
515 |
債権者の交代による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗できない |
債権者の交替による更改 |
520 |
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は消滅する。ただし、その債権が第三者の債権の目的であるときは、この限りではない |
混同 |
572 |
売主は、担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し、又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を逃れることができない |
担保責任を負わない旨の特約 |
581 |
買い戻しの特約を登記したときは、買い戻しは、第三者に対しても、その効力を生じる |
買い戻しの特約の対抗力 |
594 |
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。借主が違反して使用・収益したときは、貸主は、契約の解除をすることができる |
使用貸借 |
612 |
賃借人が第三者に賃借物の使用・収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる |
賃借権の転貸の制限 |
625 |
@ 使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。 A 労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。 B 労働者が規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は契約解除することができる。 |
使用者の権利の譲渡制限等 |
658 |
受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用し、又は第三者にこれを保管させることはできない。 |
寄託物の使用・第三者保管 |
660 |
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない |
受寄者の通知義務 |
714 |
責任無能力者を監督する法定の義務を負うものは、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 ※未成年者や行為無能力者には責任応力がない(712、713) |
監督義務者等の責任 |
715 |
事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う |
使用者等の責任 |
716 |
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない |
注文者の責任 |
720 |
他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。 |
正当防衛又は緊急避難 |
756 |
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない |
夫婦財産契約の対抗要件 |
759 |
財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない |
共有財産分割の対抗要件 |
761 |
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯して責任を負う |
日常家事債務の連帯責任 |
859(2) |
成年後見人が複数あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる |
成年後見人が複数ある場合 |
902 @ |
被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない |
遺言による相続分の指定 |
908 |
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる |
遺産お分割の方法の指定 |
945 |
財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない |
財産分離の対抗要件 |
998 |
不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三者から追奪(ついだつ)を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保責任を負う。 ※561条:追奪担保責任 |
遺贈義務者の担保責任 |
999 |
遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する |
遺贈の物上代位 |
1000 |
遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対してその権利を消滅させるべき旨を請求することができない |
第三者の権利の目的である財産の遺贈 |
1006 |
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、その指定を第三者に委託することができる |
|
5 第三がつく法律用語(おまけ)
通常は第三者と区別されますが、こんな用語もありますので参考にしてください。
区 分 |
条 文 |
内 容 |
第三取得者 |
333、379、381、382、383、384、390、391、501 |
抵当権などが設定された財産を購入した第三者。先取特権、抵当権、弁済の順位 |
第三債務者 |
364、366B、481、511 |
債務者の債務者。 氏名債権の対抗要件、質権の取立て、弁済、総裁禁止 |
第三者のためにする契約 |
537、538 |
契約当事者の一方が支払い先に第三者を指定する契約。第三者を受取人とする生命保険契約などがある。 |
第三者の弁済 |
474 |
債務者以外の第三者が、債務を弁済すること。 ※弁済は支払いのこと |
第三者納付 |
国税通則法・地方税法 |
利害関係のない第三者が納税者に代って納税すること |
図解 人と人とがかかわる形態 | |||||||||||||||||||||||||