図解編
わたしの三つのアプローチ
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民法をどう学ぶかはあれこれ紹介されています。仕事のため、受験勉強のため、学問のためなど人それぞれに目的があるでしょう。
わたしは次の三つの関心で民法に接しています。
1 対等ゲームとしての民法
寡占や独占の経済学を学んだわたしは、ミクロ経済学の「合理的活動を行う個人」の仮定を今も均衡を得るための仮説とみなしています。
民法の基本原則にあげられたり除かれたりする「人格平等の原則」は民法の条文に現れませんが、互いが法を遵守するための基本原則だとわたしは思います。
人格平等の原則は、対等な者どうしが法を遵守し、相手と交渉して、互いの紛争を解決するために欠かせない原則です。
消費者保護、経済活動の規制、社会規範などの目的によって作られる特別法とはここに違いがあります。
民法に「保護」規定はあっても「救済」規定がないのは対等な者どうしのせめぎあいだからでしょう。
現実的ではないものの思考方法として民法は特別法よりスッキリしています。
不謹慎なたとえになりますが、対等者のせめぎあいの場、つまりゲームの展開を確かめるアプローチがあります。
そのための持ち駒が条文であり、解釈の仕方で攻守に使えるのではないでしょうか。
2 消費者から見た民法
公害や詐欺まがい商法から法律に接してきたわたしには、民法は私人間の紛争解決の基本的な法律です。
特別法の規定は民法の規定で対応できないから加えられ、それを民法が受け入れた面もあります。
民法はたびたび変更されていますが社会規範であるとともに、社会の変化に対応してきたわけです。
それを確かめるのも民法の学習ではないでしょうか。
条文をあるがままに受け入れるのでなく、どこが削除され、付け加えられたかを知って民法を理解することも無駄ではありません。
民法と商法や会社法とのちがい、民法と経済法や社会法との結びつきを知ることも多面的・多角的なアプローチではないでしょうか。
こういうアプローチは学者的で、実用的でないにしても社会の変化を知るためには欠かせません。
3 多様な価値観を調整する民法
これから改正される民法はグローバル経済への対応とともに多様な価値観が存在する社会への対応がうたわれています。
企業の海外進出や外国人の日本への流入など今までの一国経済対応から世界経済対応への変化は無視できない問題です。
また、日本に限っても世代間格差や職業間格差のほかに正社員と派遣社員の格差、就職者と未就職者で価値観が異なります。
労働者や消費者という概念でまとめきれない多様な階層分離、価値判断の多様化、男女だけでなくそのいずれの中にもちがいがあります。
それを民法はどのように取り込み、どんな規定とするかは互いの妥協で解決するしかないでしょう。
一般法としての民法がどのように対応していくかを見守る時期なのでしょうか。
すべてを取り込むことは無理でしょうが、一般法としてどのように組み立てられるのか確かめるのもひとつのアプローチだと思います。
民法改正は、何のための民法から誰のための民法かを見直す機会かもしれません。