たかがクルマのことだけど

ユニフォームだって言うのに


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 10月21日から東京モーターショーが始まる。期間が延びて17日間というも今年の目玉のようだ。クルマは買えなくてもどんな出展がされるのか気になってガイドブックを2冊買うと家族は呆れている。

「どうせ、レースクイーン探しでしょ」
妻が痛いところを突く。
「これならおまえと一緒に乗れるクルマだ。BMWも渋くていいな」
写真を見せるとその気になる。
「いい年して甘い言葉にだまされるんだから」
娘が冷や水を浴びせる。

「ハルミでやらないんだ。むかし見に行ったよね」
ゲームいじりをして黙って聞いていた息子がつぶやく。
「あれはハムフェアー。アマチュア無線の展示会」とは言ったものの、確かに自動車ショーも昔は行なわれた。
「あの埠頭はなくなったの」
息子がネチッこく聞く。
「お台場でかすんじゃったね」
家族がみんなでうなずきあう。

 地図で確かめると晴海埠頭は残っている。外国航路の桟橋もある。でも、いまどきハルミといったら女性の名前しか思い浮かばない。各種の展示会が開催されただけでなく、アマチュア無線の国試センターもあって、そこで合格した思い出もある。

「やっぱりレースクイーン目当てだね、おとうさん」
公式ガイドブックをめくっていた息子が大声をあげる。
「それはユニフォームだ。ホンダは地味だけどシックだな」
あわてて話題を代えると、
「あらいやだ、ヘソもろ出しよ。この会社」
娘が横目で妻にページを示す。
「まさかと思うけど、お母さんに着ろなんて言わないよね」
息子がとんでもないことを言い出す。
「無理を言うんじゃない」
「どうせ、レースクイーン探しでしょ」
かばった発言で妻はおかんむりである。

 何で晴海で開催しないのだろう。お台場でもいいのに。幕張までクルマを見に行く元気はない。ユニホームのおねえさんを眺めるのは写真にとどめるしかない。


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