たかがクルマのことだけど

意外な勘違い ☆ 暴行罪と傷害罪


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 「暴」という漢字から思いつくのは凶悪という感じだ。暴力、暴漢、暴徒、暴走、凶暴など並べると話が通じない悪者を思いつく。それに対して「傷(きず)」は、かすり傷を始めとしてそれほど怖さを感じない。だから、暴行罪のほうが傷害罪より重刑と思い込んでいた。ところが、刑罰は傷害罪のほうが重いのである。

 法律なんて煙たくてかかわらないようにしてきた。でも、クルマの運転をしていると反則金だけで済まないから道路交通法はたまに読み直す。故意と過失の間に「重過失」まで入ってくるとお手上げある。 しかたがないから古本屋で『面白まじめに、刑法入門』(三修社法律書編集室編、三修社、2004年)を買ってきた。総論は退屈だから各論を眺めていたら暴行罪と傷害罪のかかわりが出ていた次第である。傷害罪(刑法第204条)は10年以下の懲役、暴行罪(刑法第208条)は2年以下の懲役である。30万円以下の罰金は同じにしても懲役の期間に8年も差がある。

 暴行も傷害も「故意」に行なわれたとき問われる刑罰である。やる気(意思)と振る舞い(行為)の結果が罰っせられるこの違いは相手に「傷害」つまりケガをさせたり殺したか否かのようだ。故意の振る舞いでも「傷害に至らない」場合が暴行罪である。また、「傷害に至った」場合には傷害罪になる。そして、「人を死なせた」場合には傷害致死罪となる。

 意外な説明に驚くばかりだ。これは意思より相手に与えた外傷で判断され、結果をもとに決められるようである。ケガを与えず精神的に追いつめるほうが陰湿で悪質な気がするのだがこの本では触れていない。傷害は精神「障害」を含むのだろうか。ともあれ、けんかは口争いにとどめるしかない。傷つける意思はなくても、まわりに凶器となるものがあったり、打ちどころが悪ければいつでも傷害が生じうるからだ。あなたは知っていましたか。

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