11 厚紙で移調器を作った

ギターに挑戦

 歌集を眺めてもなじみが欠けるコード(和音)ばかりが出てくる。せっかく弾く気になったモチベーションをこんなことで失いたくない。それならCメジャーのコードに移調すればいい。部屋をうろついて厚紙を探しハサミを持ち出すと家族はハレモノを避けるように遠のく。本やDVDが増えて目ざわりなのに工作を始めるから気が狂ったかと怯えている。

 苦手なコードを自分が弾ける(押えられる)ものに変えるのが「移調」だ。カラオケで歌うときにもキーが高すぎたり低いすぎるときに自分の音域に調整する操作と同じである。ギターの場合はカポタストを使って行なう。多少のズレは伴うがむずかしさを避けて簡単にするのも苦手の克服に欠かせない。

 作り方の手順は次のとおりである。
@大きさが異なる2つの円をコンパスで描き、分度器で円を12等分する。
AA、A♯=B♭、B、C、C♯=D♭、D、D♯=E♭、E、F、F♯=G♭、G、G♯=A♭の文字を書き込んで円を切り抜き、2つの円の中心に止めピンを通して消しゴムで受ける。

 宝くじの抽選器のように回転させられるのがミソである。昔は全音7つ(ABCDEFG)の円で済ませていたがどうせやるなら本格的にと今回は2つにした。1オクターブはABGDEFGの7つの全音とそのあいだに5つの半音があるのを応用する。半音は無視してもかまわないが7等分にするより12等分にするほうが30°ずつで簡単だ。2つの円のどちらを基本にするかは各人の自由である。何度動いたかわかるようにあえて円を2つにしている。

 一度は挫折したけれどそれなりの手抜きの知識はあるわけで使えるものは利用すればいい。大切なのはやるんだという決意とそのために頭と手を使うことだろう。とりあえず押える自信があるコード(和音)を優先し、指が慣れてきたらレパートリーを増やせば済むことではないか。

 こんなものをわざわざ工作をしなくても、パソコンに慣れている人なら文字の「置換」操作を使えば簡単にできることだ。でも、譜面を見るたびにパソコンを立ち上げるのもオックウだから持ち歩ける変換器を作ったまでである。どうでもいいものを自分で作るのは、こんなことでへこたれるものかという決意と行動に意義がある。(2006/12/31)

【追記】
 移調の方法は上のとおりですが、音階(スケール)や和音(コード)の知識のある方は「ダイアトニック・スケール・コード」があることをご存知でしょう。マイナーの場合は、C(T)・Dm(U)・Em(V)・F(W)・G(X)・Am(Y)・Bm♭5(Z)とU・V・Y・Zにマイナーが入っています。なぜマイナーが入るのかは今も納得できる説明が他書を読んでもでもわかりません。また、半音の部分は「同名異音」といわれ、「代理コード」もあります。そういう理屈はあとで触れますが、ここでは簡単な手抜きをどうやって行うかを紹介しています。難しいコードに慣れることも上達には欠かせないでしょうが、そういうものを避けて楽しむ方法も知っておいても無駄ではないと私は思います。できることを固めて前に進むことも苦手意識を払拭する秘訣ではないでしょうか。
 詳しいことが知りたい方は『超簡単!! 35分でわかるコードのしくみ(第5版)』(関口祐二監修、Kmp発行、2005年)をおすすめします。とても35分では理解できませんが懇切丁寧に説明された本です。また、ギターの板目を使っての説明は井桁学さんの『ギタリストのための楽典(第3版)』(リットーミュージック、2006年)も参考になります。こちらはギターに即した説明でなじみやすいでしょう。