10 教則本がやけに増えた

ギターに挑戦


 毎日ギターを弾いている割に成果が上がらない。根気が欠け、不器用だからそんなものだろう。だからといって諦める気はない。リズムはさっぱりだが指の屈伸運動を続けてきたから握力もついてコードも押えられるようになった。家族の励ましもあるし、ここで挫けたらもとのもくあみだ。

 ギターを買い込んでから出費が増えた。ピック、カポタスト、弦セット、チューナーマイクなどは廉価セットならついていたが見栄を張ったばかりに追加の出費だ。できればメトロノーム、ギタースタンドなども欲しいが我慢している。そういうものとは違う出費でバカにならないのが本や雑誌、それにDVDである。人に聞けば済むのだがあいにく相談相手もいないし、そのたびに楽器店に出向くのはオックウである。

 やればやるほど分からないことが出てくる。チューナーの使い方、弦の交換の方法、弦の押さえ方、コード(和音)のパターン、リズムの取り方、楽譜の読み方などさまざまである。始めるきっかけになった挫折者救済本は手抜きで通過するという考えで気に入ったがそれで済ませられない偏屈さが邪魔する。

 下手な者ほど余計な物を買い込み、ものごとを複雑にさせるようだ。いつもならものごとをシンプルにとらえているのに、ギターに関しては複雑にさせている。手抜きをするつもりでゴルフのビデオを買い集めたのとやけに似ている。ま、それも楽しみや話題を増やしたから悔いはない。

 昨日は楽譜の基本を45年ぶりに復習した。五線譜、音符と休譜、拍とテンポ、演奏順序などである。記号の多さに改めて怯えた。そこで驚いたのが省略記号である。教則本に出ている ・/・ が小節の繰り返しと初めて知った次第である。我が家の学生に確かめたが知らないと言い張るから安堵した。

 簡単をうたう教則本はある程度の音楽知識を持った者を対象にしているようだ。1オクターブが12音だとか、コード(和音)がどいうしくみなのか触れずに技術論にはしるから挫折者を戸惑わせる。それはともかく、知らないままで過ごすより分かって先に進むことも無駄ではないだろう。(2006/12/30)


   
【これからギター教本を読む人に】

 買い集めたアコースティック(フォーク)ギター教本を並べてみた。CDやDVDのほかに10冊以上あるがどれもこれも中途半端で終わり、すべてを読み切っていない。似ているようで著者のポリシーが漂うのもおもしろい。音階はハ長調のドレミファソラシドで入り、音程はドミソの3和音、コードは0〜3フレットのローコードから始まるのは共通している。長短をメジャーとマイナーというのはともかく、定義もなく音階を「スケール」、音程を「コード」で始められてとまどったこともある。わたしの好みはなじんだ曲が練習曲にとり上げられていることだが、最近の流行歌は小難しいコードが多いからとまどって古本店で手に入れた本もある。

●前提は本を読んで弾き方を身につけること

 はじめにお断りしておくのは、世間体を気にして音楽教室に通えず、楽器の演奏など興味がない家族に囲まれ、定年後に社会から孤立しないように本やDVDでギターを弾こうという親父の判断である。楽譜にアレルギーを持ち、手先が不器用で楽器の演奏をあきらめてきたからピアノも家にない環境である。パソコンのキーボードぐらいはたたけ、インターネットで見聞きできる程度だ。

●ギターの板目で説明をしてほしい

 ギターの構造とか音合わせ(チューニング)を持ち出されても素人はとまどうだけだ。チューナーの使い方で充分だろう。ピアノの鍵盤を持ち出して12音階を説明しても、ギターの弦やフレットでそれがどういう位置なのかに触れない教本も多い。ピアノを持っていない読者がいるのも忘れているのだろう。音合わせが大切なことは分かるが、それを初心者に求めても混乱させるだけである。

●楽譜の読み方は巻末で充分

 将来を見越して親切に楽譜の読み方を最初に触れる教本もある。音符や休符だけでなく繰返し記号までに触れる。でも、おたまじゃくしアレルギーには腰砕けにさせるもとだ。こういうのは弾くのに慣れてから知ればいいので巻末に置けば済むのではないか。だからといって楽譜は無駄な知識ではない。コードを覚えても楽譜を読めなければひとりよがりで単調な演奏に終るだろう。

●押さえ方とリズムのとり方を詳しく

 和音(コード)の押さえ方をやたらと詳しく説明するわりにリズムやメロディーは申し訳程度の教本も多い。コードはリズムがついてなじむものだろう。4拍子、8拍子、16拍子のパターンと奏法を列挙されても素人はとまどうだけだ。これは弾き慣れてから身につけるしかない。むしろ、強弱の付け方や連符の扱い、あるいはタイやスラーの弾き方に触れてほしい。

●コードの移動法の図解がほしい

 そして、忘れられているのがコードの動かし方である。演奏はひとつのコードだけ押えれば済むものではない。ゴルフでいえばグリップ(握り)のほかに軸(じく)や壁(かべ)の作り方だ。しっかり押える指と動かす指の図解はほとんどない。押える指に多様性があるから難しいのだろう。経験から身につけろというのも不親切だ。

●コードの基本構成や進行パターンを詳し

 これはレベルアップしてから身につけることと割り切って初級レベルの教本ではなぜか触れていない。コードのパターンがどういう組み合わせか知らずに覚えるだけでは素人だって退屈する。3和音・4和音・7・9・dim・add・susなどの構成や役割、あるいはトニック・サブドミネント・ドミネントなどは簡単でいいから触れてほしい。(2007/03/25)