1 ギターをいじって小指がひきつる

ギターに挑戦


 きりばやしひろき著『楽器挫折者救済合宿 ギタージャカジャカ』(K&Gパブリシャーズ、2005年)を読み進むうちに、ギターをいじらないとわからないことに気づいた。小遣いを節約して昨日ギターを買い込んだら妻の目がひきつり、子どもにへそくりの詮索までされる始末だ。

 エレキギターが並べられた楽器店に入るだけでドキマキする小心者である。店の奥にあるアコースティックギターにたどり着くまでがやけに長かった。何にするか迷ったが、どうせ直に挫折するから入門程度の格安品にとどめた。何もかもセットになった廉価品を買おうとしたら、ネックの握りやすさや弦の固さをあれこれ指摘されて思い直し、本体・ケース・チューナーだけにとどめた。チューニングしてもらう間がやけに長く感じた。

 ギターをかき鳴らすと子どもが「いい音がするね」とおだてる。
「ギターってこんな大きな音が出るんだ」と言い出すに呆れた。
「昔やってたんでしょ、一曲弾いてみてよ」と言い出されて冷汗が吹き出した。それができなくて子どもが生まれる前に証拠隠滅を図って捨てたのである。
「コードを忘れたから・・・」とその場をしのいだがまた言い出されたらどうしよう。

 コードを思い出しながら左指を押えたが握力がないから押えきれない。ペンより思いものは握ったことがないからギターになじめなかったのだ。苦手なコードはカポタストを使って転調してきたが持ち金がなくて買いそびれた。同じフレットに指を二本入れるコードはお手上げである。

 それにしても娘や息子がギターに関心を持つのが意外である。音楽を録音して持ち歩いても楽器を弾く気が欠けるヤツラがいじり始めるのにびっくりした。そして「ドレミファはどう弾く」と言い出されて慌てた。そんなことは考えてもみなかった。本で確かめると開放弦にはC(ド)とF(ファ)がない。だいたい一音ずつ弾くつもりはないし、そのために和音で弾くのがコードだろう。子どもは親父の居直りに呆れている。

 子どもがいじるほど自分の知識不足に気づき、ボロが出ている。弦の押さえかたばかり気にして、リズムのとりかたや右手の弾き方にいかに無知であるかをさらす始末である。ムキになって押えて小指がひきつるのも腹立たしい。カポタストを買ってくるしかなさそうである。【2006/12/24】



       【音楽に手を出して読書量が減った】

 音楽では、内外の歴史を踏まえた幅広い内容に驚かされた北中正和さんの『ギターは日本の歌をどう変えたか』(平凡社新書、2002年)、大正時代の映画から始めて音楽とタイアップの結びつきを論じる速水健朗さんの『タイアップの歌謡史』(洋泉社、2007年)もおもしろい。そして、島森路子さんの『広告のヒロインたち』(岩波新書、1998年)も懐かしい写真が多い。何かに夢中になると読書録が書けないのはギターに限らない。やればやるほどわからないことが増えて調べることが増すのも皮肉である。音楽に関わる本はホームページの「ギターに挑戦」へ組み込んでいるので立ち寄っていただければ幸いです。このコーナーはギターの技術論でなく、楽器をいじる中で家族とどんなやりとりをし、何に戸惑ったかの進行中の記録です。