77 リハビリにギターをいじって

ギターに挑戦

 五十肩のリハビリ中にギターを《いじる》と話したら、「肩の負担を減らすにはアコーステイクよりエレキのほうが良いでしょう」と言われた。《弾く》というほどの技量がなく《いじる》程度でも左手でコードを押さえるのは辛い。調子に乗ってギターをいじれば、エレキもアコーステツクも《セーハー》の絡むFコードを押えるたびにギクッと痛む。中指全体で弦を押えるのは指を立てるよりきつい。コードの簡単な『なごり雪』でさえお手上げである。

 先月から病院をかえて五十肩の治療をしている。毎週一度左肩に注謝を打ち、週二度のリハビリと鎮痛の温湿布を貼っている。肩全体の痛みはひいたが相変らず腕をひねったり、のばすとズキッと痛む。痛み始めたころの慢性的な《ズキズキ》でなく、このごろは瞬間的な《ズキッ》である。中指のしびれは薄れたが重い物を持つと《ズキーン》と痛む。先週までは触ったりなでるだけだったリハビリは、今週から肩を10分温めてから左腕を引っぱったり回す荒療治に変った。入浴時に左腕を軸にひねったり、左腕全体を横に伸ばすニつの運動も課された。

 リハビリ室の患者を眺めれば18時過ぎだから老人や子どもでなく、仕事帰りの男女ばかりである。腰のけん引や肩甲骨のマツサージのために静かに横たわるマグロというおもむきが漂う。引っ張られたり回されて悲鳴を上げるのは軟弱なわたしだけなのも恥ずかしい。「かばっているとまた再発します。できる限り動かすことも大切ですよ」と若い診療師に説教されてうなずく始末である。

 五十肩になって気づいたが腕というものはダランと伸びきっていないものだ。寝ているときでさえけっこう緊張した状態である。だから肩や首の負担が増すのだろう。歩くときにも腕はかなり振れている。腕は二本足で直立歩行するためのバランス機構のようだ。やせ型は進行方向の前後に腕を振るが肥満型は左右に振ってバランスを保っている。ともあれ腕を支える肩は重い頭部も支えるから負担の多い身体の部分にちがいない。肩は軸受であるがそれを動すための筋肉は流体でないから、摩耗や劣化するのだろう。動かす筋肉とたるみきった筋肉のアンバランスも生じるわけだ。自分の身体をクルマと比較するのも無知である。

 久しぶりにギターを弾けばコード進行を忘れている。『なごり雪』がいつの間にか『おまえだけに』に変るのも不思議である。よりによってFコードの多い苦手な曲になぜ変るのだろう。無難な『四季の歌』や『あの唄はもう唄わないのですか』にとどめるしかない。リハビリの成果を確かめるつもりが痛みを増すのもマイナスである。「すぐ調子に乗るんだから」と家族に笑われるのもしゃくである。せっかくだから苦手な右手を動かす訓練をしてやろう。2008/06/07

【補記】
 2月上旬から五十肩になってギターはもとよりクルマも動かせません。