10 浅川マキと長谷川きよし
フォークのことあれこれ


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目次
 ●浅川マキ
 ●ちっちゃな時から
 ●こんな風に過ぎていくのなら
 ●長谷川きよし
 ●心の中の日本
 ●卒業

(1)浅川マキ

 どういうわけもなく熱中し、たちまち飽きてしまうのが僕の節度のない所業である。あんなに夢中になったのだから1つぐらい残ってもよさそうにーそう思いつつも思い出すのをためらうものがある。LPレコードは4枚もあるというのに、それをまとめる気にならないのが浅川マキのことだ。反対にたった1枚しか持っていないのに印象が残っているのは長谷川きよしである。この2人は
フォークの歌い手ではなく、独自の世界を持っているところに共通性がある。

 浅川マキは容姿からして陰気である。そして、詩の内容はもっと湿っぽくなっている。どうして僕が気に入ったのか今では説明できない。でも、4枚も買ったくらいだから気に入っていたはずである。突っ張った唄があったからなのかもしれない。
                              
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●ちっちゃな時から

    ちっちゃな時から 浮気なお前で
    いつもはらはらするおいらはピエロさ  

      (『ちっちゃな時から』浅川マキ作詞・むつひろし作曲)

 この唄は片思いだけしかしたことのない僕にはブラックユーモアがあるように感じさせたものだ。
 浅川マキにしては珍しく元気のよい唄だったせいで気に入っていたのは、ロッド=スチワードが作曲し、彼女が日本語詩をつけた『オールド・レインコート』である。もっとも、歌い方はいつものようにヘタクソだがミュージシャンにずいぶん助けられていた。『ガソリン・アレイ』もその点では似ていた。この唄もデイブ=グルースィンの作曲だった。

    そうさ 人生 甘くはないさ
    そうさ 人生 甘くはないさ
 ♪
      (『オールド・レインコート』浅川マキ日本語詩)

    帰ろう おいらの生まれた あのガソリンアレイへ
    帰ろう 細い路地の あのガソリンアレイへ
    連れてってよ 細い路地の あのガソリンアレイへ 

      (『ガソリン・アレイ』浅川マキ日本語詩)
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こんな風に過ぎていくのなら

 だいたいにして、彼女の詩は私生活の記録めいたものばかりである。そういうことも反映しているのか、同じように繰り返すフレーズしか印象に残っていない。  
 何か自分の未来を感じつつも、それでいて気に入っていたのは『こんな風に過ぎていくのなら』(浅川マキ作詞・作曲)だった。もてない者どうしの連帯感がそうさせたのだろうか。

    こんな風に過ぎていくのなら
    いつか 又 何処かで
    なにかに出逢うだろう
    あんたは去ってしまうし
    あの娘もあっさり結婚
    今夜ほど 淋しい夜はない
    きっと今夜は世界中が雨になるだろう


 浅川マキの唄を僕が思い出せないのは、きっと今の僕がよけいみすぼらしいからではなかろうか。笑い飛ばすゆとりもなく、寄り道するほどの気力が失せたからだろう。こんな湿っぽくて突っ張った唄に近寄れたのも若かったからだといえる。
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(2)長谷川きよし

 長谷川きよしのヒット曲は『別れのサンバ』(長谷川きよし作詞・作曲)である。この詩の次のフレーズは、過ぎ去った後になって思い出し、後悔する僕につらい思いをさせてきた。そして、この唄は最後にととめをさすのである。「今は泣いている」とご丁寧にも3回繰り返すのだ! まったく念入りに逆なでする唄である。

    わかって あげれば
    別れも 知らずにすんだ 

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心の中の日本

 他人が作った唄を自分なりに歌う点で浅川マキと長谷川きよしは共通している。だが、歌の上手さではやっぱり長谷川きよしに軍配が上がる。南正人作詞・作曲の『こんなに遠くまで』は僕が気にいっていたものだ。同じように男と女の結びつきを扱い、長谷川きよしが歌ったもう1曲は『心の中の日本』(能吉利人作詞・長谷川きよし作曲)である。原題は「心中日本」だそうだ。この唄は男どうしで景気よく口ずさんだものである。

    二人で暮らせばだめになる
    別れりゃなおさらだめになる
 ♪
        (『心の中の日本』)
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卒業

 気の合う友人が、当人は僕に紹介したというものの、まったくそんな気配を感じさせずに会わせてくれた年下の女の子のイメージと結びつくのが長谷川きよしの『卒業』(能吉利人作詞・長谷川きよし作曲)である。てっきり友人の恋人と勘違いし、互いの悪行をかばいあい、悪友をいつになく持ち上げて肩が張ったのも懐かしい。こんなことはどうでもいいのだが・・・。

    お礼にバラをあげたくて 
    花屋をさがしているうちに
    春はどこかにいっちゃた
 ♪
 
 僕も友人も気位が高いばかりにいつもチャンスを失ってきた。年を取るごとに女の子に話しかける気力さえなくなってしまった。この『卒業』が次のフレーズを繰り返すのも癪だ。

    いやだなアー いやだなアー
    鉄砲1本にぎりしめ
    誰かを殺しに風の中
    バカな話さ大人になるなんて
 ♪


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