2008 日光旅行記


その4

 6月15日、8時30分にホテルをチェックアウトして駅に向かい、駅の構内にあるカフェで朝食を取った。トーストとコーヒーのモーニングセットを注文した。焼きたてのパンは美味しかった。それにしても旅先の喫茶店で飲むコーヒーはほんとに旅情を感じさせる。

 朝食の後、昨日の夜、決めておいた二荒山神社に行った。市の中心部にあり、石段を登って行くと、下の喧噪が嘘のような静謐な空間が現れる。境内はそれなりに広くて、社殿も趣がある。そこでお母さんが子供と遊んでいたり、日陰の置かれたベンチで老人が休んでいたりした。市街地にこのような空間があると、心が休まるものだと思った。

 二荒山神社を参拝した後、その裏手にある八幡山公園に行った。まず、公園のベンチで朝、駅構内のカフェで買ったパンを食べた。妻は僕が空腹になると、極端に不機嫌になるので、その対策としてパンを用意していたのである。その後、八幡神社に参拝した。旅先で神社を見つけると、参拝したくなる。ここの神社は訪れる人も少ないようで、参道は雑草で覆われていた。神社の斜め前には恐ろしく古びた社務所のような小屋があるのだけど、人の気配はなかった。

 この神社からいろいろな動物の飼われているコーナーに行ったが、タンチョウヅルや鶏などで特に珍しいものはいなかった。このミニ動物園を登って行くと、食事やお土産物を売っている店があり、そしてその道を少し行くと宇都宮タワーがある。初めは登ってみようと思ったのだけど、有料なので止めてしまった。

 宇都宮タワーの近くには、水色の長いつり橋が架かっていて、下には池が見えた。ヒョウタン池というらしい。このつり橋を渡るとアドベンチャーUという広場に出る、ここにはゴーカートや長い滑り台などがあり、多くの家族連れで賑わっていた。しばらく、妻とベンチに腰掛けてのんびりした。

 お昼はギョーザを思いっきり食べようということになり、駅前のギョーザ専門店に入った。メニューを見るとギョーザの種類があまりに多くて、何を頼んでいいのかよくわからない。日本人の僕でさえそんな状態なのだから、ペルー人の妻は尚更だったであろう。しかし、僕は配慮に欠けていた。

 旅の最後の想い出にギョーザを思いっきり食べようと意気込んでいたが、店に入るとギョーザばかりというのも胃がもたれるような気がして来て、僕は普通の焼きギョーザとラーメンにしてしまった。妻は初めいろいろなギョーザが効率よく食べられるギョーザセットにすると言っていたのだけど、僕と同じような気持ちになったのか、エビの入っているギョーザにしたいと言いだした。そして、「これエビ入っているかな?」と僕に訊いた。妻は‘ちぢみギョーザ’を指さしていた。ふと見ると、近くにエビの蒸しギョーザの写真があったので、「そうね」と軽く返事をした。しかし、出てきたものは全く違っていた。

 それは一口大のただ単に小さなギョーザだった。店員に文句を言おうと思ったが、これが「ちぢみ」なのだと初めてわかった。妻は急に機嫌が悪くなり、それを全く食べなかった。仕方ないので僕は1つ2つ食べてみたが、あまり美味しくなかった。このときになった初めて妻に対して配慮の欠けていたことに気づいた。

 この旅行期間中、妻は食事時、注文に時間がかかり、失敗ばかりしていた。しかし、それはただ単に妻の優柔不断と運の悪さだと僕は勝手に思っていたのである。自分はどうして優しさがないのだろうと思った。心の中では後悔していても、それが素直に現わせず、ついつい妻と口論になってしまう。このときも帰りの電車の中まで気まずい雰囲気が続いてしまった。

 家に帰ってから、近所にある中華屋に夕食を取りに行った。何回も来たことのある店である。妻はゆっくりとメニューを見ていた。幸いほとんどのメニューは写真が付いている。僕は妻が決めるまで、気長に待った。(2008.8.15)

―終わり―


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