告白

「Hさんのこと、好きです」
お酒を飲んでいてJさんに言われた。これまで僕の気持ちはJさんに伝えてあった。しかし、Jさんのほんとの気持ちはわからなかった。それとなく訊いたこともあった。だけど、「まだ自分の気持ちがよくわからない」という応えだった。
「今まではいっしょに遊んでいるから、それで楽しいのかなと思っていたんだけど、Hさんのこと好きだってわかった」とJさんは言った。

「いつくらいに自分の気持ちがわかった?」と僕は訊いた。
「もう、数ヶ月前。だけど誤魔化していた」
「何故?」
「私、ペルーに帰るかもしれないし、もし本気につきあったらペルーに帰るからバイバイっていうわけにもいかないでしょ?私、商売したいと思っている。ペルーの方がやり易いでしょ」
「それはそうかもしれない。だけど、ふたりで暮すっていうのも、いいんじゃない?」
「そう、私もそれが一番幸せなことだと思っている。だけど…、まだ、わからない」
「考えてもわからないよ。それに不安がっていても、前に進まないよ。何もしなければ失敗もないかわりに、成功もない。それと同じで不安だっていって前に進もうとしなければ、幸せにもなれないよ」

「この前、私、難しくなったね。Hさんの気持ち、変わらない?」
「変わらない」
「そう」
「いっしょに暮せば、病気になったときだって心強いし…」
「でも、私ずっと今のような暮ししたくないの。余裕を持ちたいの」
「ふたりで暮せば、収入だって倍になるんだから夜のバイトなんてしなくて済むし、土曜日だって休めるよ。旅行にだって行ける」
Jさんの顔が一気に明るくなった。
「旅行!いいね。行きたいね」
「ペルーにだって、2年に、いや3年かな…そのくらいに1度は帰れるよ」
「毎年がいい」
僕は苦笑した。
「もう、いいよ、つきあおう」とJさんは明るく言った。(2006.6.3)




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