無職の人

これ恥ずかしながら現在の私自身の状態です。昨年の9月にそれまで11年間勤めていた会社を辞めました。失業率が5%を超え、有効求人倍率が0.5〜06倍をうろうろしている中での退職はまさに自殺行為ともいえる暴挙かもしれません。

会社を辞めたくなった理由は数え上げると20くらいはありました。だけど、端的にいってしまうと会社にいるのが怖くなってしまったのです。会社を辞めるのも怖かったのですが、会社を辞めない方が怖さという点で上回っていました。どういう怖さかというと未来が決まってしまう怖さだったのです。

もし、今、会社を辞めなければ機会は失われてしまい、私はもう会社を辞めたくても辞められなくなると思ったのです。どんなことがあっても会社にしがみつく人生しかなくなってしまうという恐怖でした。

会社を辞めて当初は旅行などに行ったりして気楽に過ごしていました。お金は退職金もあり、11年間勤めた貯金もまあまああり、さらに失業保険もそのうち支給となるので差し迫ってはいなかったのですが、精神的に辛くなってきました。退職する前は今まで時間がなくてできなかったことをいろいろとやろうと思っていたのだけど、再就職への不安の方が大きくなってしまい、その意欲が失われてしまいました。一番やっかいだったのは今までに植えつけられた常識や価値観だったのです。とにかく、早く社会復帰をしないと、このまま取り残されてしまうのではないかという恐怖に襲われるようになりました。

こういう時代なのでいい仕事はなかなか見つかりませんでしたが、運良く、自分にできそうな仕事がみつかりました。そうして私は気持ちに何がしかのひっかかりを残しながら、今年の2月に再就職したのです。心配していた親・友人・知人は喜んでくれましたが、私の気持ちは複雑でした。とにかく仕事を見つけたという安堵感とこれで本当によかったのだろうかという疑問が心の中で絡まりあっていました。そして他にもいろいろと原因はありますが、その疑問の方が勝ってしまい、現在の状態にあるわけです。

ローリン・ヒルのように今までに押し付けられた常識や価値観を放棄できればもっと自由に生きられるのかもしれませんが、自分にはまだまだのようです。今は人生の中にはこういう時期があってもいいのかなと楽天的に考えています。どんなことでも経験はプラスになると思うし、そのうち、どうにかはなるものだから。(2003.5.2)


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