「困ったなぁ…」
「困りました、ね…」
和明と華音は今日も食堂にいた。
あれから、すっかり一緒にお昼を食べるのが常になっている。
で、今。
2人で顔をつき合わせて何をそんなに困ってるかと言えば…
「学祭、ねぇ…」
「どうしましょうか、ね…」
そう。
春の学祭のことである。
今年は何故か有志参加の希望者が少なかったようで、
委員会単位でも何かしら出し物をしなければならなくなったのである。
生徒会からのご命令である。
実のところ、適当な言い訳をつけては、ばっくれる委員会は多数あった。
が、和明がそんなこと出来る訳もなく…。
「何か良い案ある?」
「いえ…すいません。どうも思い浮かばないんですよ。」
「だよね…。右に同じく。」
そう言う訳で、さっきから2人揃ってため息をついているという訳だった。
委員会単位、ではあるが、特に委員会の内容と結びつける必要はない。
しかし、そう言われると、ますます何をすれば良いのか分からなくなってしまう。
和明は途方に暮れていた。
彼は今まで、こういうイベントに積極的に参加したことがなかった。
クラス単位の行事は、その時々のリーダーについていけばよかったし、
これといって特技もない和明は、そう大きな役割がまわってくることもなかったのだ。
「はぁ…」
何度目かのため息をついた和明に、華音がふと尋ねた。
「先輩、何か特技とかありますか?」
「特技…?」
和明は、一瞬話が見えず、きょとんとした顔で問い返す。
「はい。例えば、何か楽器が出来るとか。」
「楽器…」
「ピアノとか、バイオリンとか、なんでもいいんですけど。」
ますます話が分からず、和明は小首を傾げた。
「特にこれといって…でも、どうして急にそんなことを?」
「いや、クラシック喫茶なんてどうかと思って。」
「クラシック喫茶?」
「はい。よくあるジャズ喫茶みたいな感じのクラシック版みたいなものですね。」
「あぁ、それで楽器…」
ようやく合点がいった、と言うように和明が相槌を取る。
「楽器が出来なくても、ウェイターをやってくださればよいですし。どうですか?」
「僕は構わないけど…ということは、秋月くんが何か楽器を?」
「えぇ。一応、幼少からバイオリンをやってますので。」
「へぇ。すごいね。」
和明の言葉に、華音が照れたように笑った。
「いや…そんなに巧い訳でもないんですけどね。」
「それでもすごいよ。僕なんて、何も出来ないんだから。」
和明は心底感心したように、もう一度そう言って、
なんとなく、ちょっと可笑しくなって笑った。
「卑下しあっててもしょうがないし、具体案、練ろうか…」
「そうですね…」
華音ももう一度笑って、頷いた。
「まずは…店で出すメニューを考えよう。それから、演奏する曲も決めないとね。」
なんだか、これから楽しくなりそうだ。
なんてことを考えながら、和明は手帳に案を書き出した。
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今回も、ちょい短め?ですかね;
ごめんなさい。
なかなか、長く書けないものですね。。
そんなこんなで、るうちんにバトンを渡したいと思います。。
頼んだぞ〜っ!
(2006/06/10 HINATA)